BMG Music

BMG Music（ビーエムジー・ミュージック）は、ドイツの巨大メディア企業であるベルテルスマンによって創設された、音楽および映像コンテンツを取り扱う企業グループです。その名称は「Bertelsmann Music Group」の頭文字に由来し、1987年にベルテルスマンの音楽事業を総合的に統括する部門として発足しました。かつての本社はアメリカ合衆国ニューヨークに置かれていました。

概要と活動

BMG Musicは設立後、急速に事業を拡大しました。傘下には、アリスタ・レコード（アリオラを含む）、J-Records、RCAミュージックグループ（ウィンダムヒルを含む）、ゾンバ・ミュージック・グループ（ジャイヴを含む）など、200を超える多岐にわたるレコードレーベルを有していました。これにより、BMG Musicは当時の世界のレコード業界における主要プレイヤー「ビッグ・ファイヴ」の一つとして、その存在感を確立しました。クラシックからポップス、ロック、ヒップホップまで、幅広いジャンルの音楽作品を手掛け、世界中のアーティストの成功に貢献しました。

日本における展開

日本市場においても、BMG Musicは重要な役割を果たしました。その歴史は、RCAレコードの実質的な日本法人であったアール・ブイ・シー株式会社（RVC）に遡ります。元々は日本ビクターがRCAの輸入盤を取り扱っていましたが、そこからスピンアウトする形でRVCが設立され、邦楽制作にも乗り出しました。しかし、1986年に親会社のRCAが経営難に陥り、そのレコード部門がベルテルスマンに買収されたことでBMG Musicが誕生します。これに伴い、日本国内ではRVCが解散し、日本ビクターやビクター音楽産業との合弁による新たな会社「BMGビクター」が設立されました。BMGビクターはRVCの事業を引き継ぎ、また日本フォノグラムが扱っていたアリスタ・レコードの国内販売権も獲得しました。

1996年には日本ビクターおよびビクターエンタテインメントとの資本提携を解消し、翌1997年に社名をBMGジャパンに変更。さらに1999年には、かつて東芝EMIやポリグラム（現在のユニバーサルミュージック）と関わりがあったファンハウスと合併し、「BMGファンハウス」となりました。

ソニーとの経営統合とその後

2004年 8月、大きな転換期を迎えます。日本のソニー株式会社（当時の代表執行役会長兼CEOはハワード・ストリンガー氏）は、BMG Musicと友好的に経営統合することを発表しました。これは、ソニー傘下のアメリカ法人であるSony Music Entertainment Inc.（SMEI）とBMG Musicが、株式移転を通じて新たな合弁会社「Sony BMG Music Entertainment Inc.（米国ソニーBMG）」を設立するという形で行われました。日本においては、BMGファンハウスが米国ソニーBMGの日本法人となりました。ただし、日本の株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント（SMEJ）は、ソニー株式会社の完全子会社として独立した経営を行っていたため、この再編の対象外でした。

その後、2005年 10月には日本法人もBMGファンハウスから「BMG JAPAN」へと社名が変更されました（現在のソニー・ミュージックレーベルズの一部となっています）。

2008年、ソニー株式会社はさらなる一歩を進めます。ソニーの米国法人を通じて、ベルテルスマンが保有していたソニーBMGの全株式を取得し、完全子会社化しました。これにより、社名は再びSony Music Entertainment Inc.（SMEI）となり、名実ともにソニーグループの一員となりました。この買収をもって、ベルテルスマンが設立した本来のBMG Musicという音楽・映像グループは解散することになります。

この買収劇と並行して、BMG JAPANも日本のSMEJの完全子会社となりました。そして2009年 10月、BMG JAPANはSMEJに吸収合併され解散。その制作部門はSMEJ傘下で再編成され、現在のアリオラジャパンやRCA/JIVEグループなどに引き継がれています。旧BMG Musicの音楽作品は、ソニー・ミュージックジャパンインターナショナルやRCA/JIVEグループを経て、現在はソニー・ミュージックレーベルズからリリースされています。

新生BMGと音楽出版部門

ソニーへの事業売却後、ベルテルスマンは音楽業界への関与を完全に手放したわけではありません。2008年10月には、ソニーBMGが保有していた一部の録音音楽の権利（約200名のアーティスト分）と「BMG」の商標権を基盤として、投資会社コールバーグ・クラビス・ロバーツとの共同出資により、「BMG Rights Management」（いわゆる「新生BMG」）を設立しました。この新生BMGは、主に音楽出版権や原盤権の管理・取得を事業としており、2013年にはベルテルスマンの完全子会社となっています。

また、BMG Musicがかつて保有していた音楽出版部門であるBMGミュージックパブリッシングは、ソニーとの統合に先立つ2007年に、ユニバーサルミュージックグループに売却され、その後ユニバーサル・ミュージック・パブリッシング・グループに統合されています。これは、ソニーBMGの設立時に音楽出版部門は統合対象から外されたことによる措置でした。

このように、BMG Musicはその誕生から世界の音楽シーンで大きな存在感を放ち、「ビッグ・ファイヴ」の一角として多くのアーティストを輩出しましたが、ソニーへの事業譲渡を経てその姿を変え、現在はベルテルスマンの「新生BMG」やソニーミュージックグループの一部として、その遺産が受け継がれています。

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