BOLERO (Mr.Childrenのアルバム)

Mr.Childrenの代表作『BOLERO』：デジタルサウンドと深いメッセージが融合した傑作

1997年3月5日、Mr.Childrenの6枚目のオリジナルアルバム『BOLERO』がリリースされました。前作『深海』から約8ヶ月ぶりとなる本作は、通常版のみで発売され、ジャケットには向日葵畑の中でスネアを叩く少女が写し出されています。メンバー以外の人物がジャケットを飾ったのはこれが初めてで、ウクライナでの撮影、信藤三雄氏によるアートディレクションが話題を呼びました。

『深海』がアナログサウンドを基調とした作品であったのに対し、『BOLERO』ではデジタルサウンドを意識した制作が行われています。一部楽曲はロンドン、アビーロード・スタジオでレコーディングされ、そのサウンドは前作とは異なる新たな魅力を放っています。

アルバムには『名もなき詩』と『花-Mémento-Mori-』の2曲を除く、4thアルバム『Atomic Heart』以降にリリースされたシングル曲が全て収録されています。これは、ファンの高い期待に応えるとともに、Mr.Childrenの充実した創作活動を反映していると言えるでしょう。『Tomorrow never knows』『everybody goes -秩序のない現代にドロップキック-』『【es】 〜Theme of es〜』『シーソーゲーム 〜勇敢な恋の歌〜』『Everything (It's you)』といった人気曲がずらりと並びます。

さらに、『BOLERO』は12曲中8曲にミュージックビデオが制作されており、これはMr.Childrenのアルバムとしては最多です。楽曲ごとに異なる世界観が表現されており、その映像作品も高い評価を得ています。

『BOLERO』は『深海』と同時期に制作された作品ですが、両作品はテーマやサウンドにおいて対照的な関係にあります。桜井和寿氏はインタビューで、「『深海』と『BOLERO』は3Dメガネの青と赤のようなもの。両方揃って初めて立体に見える」と表現しており、楽曲制作における相反する要素の融合が窺えます。多くのヒットシングルが収録されたことについては、「ファンへの感謝の気持ち」と語られており、その心意気も伝わってきます。

しかし、メンバー全員が本作を好意的に捉えていたわけではありません。小林武史氏はアルバムについて「（ベスト盤的な要素のある）このアルバムは、いいものなのかどうか解らない…」とコメントを残しており、制作過程における葛藤や複雑な感情が伺えます。桜井和寿氏自身も、「当初は、ヘヴィな『深海』を作ったあと、今度はポップにスコーンと抜けた『BOLERO』を作る予定だったのが、当時の心境と『深海』の音楽性がリンクし過ぎて、思った以上に深いところへ行ってしまい、いざ『BOLERO』を作り始めても、『深海』を引きずったところがあった」と振り返っています。

『BOLERO』は活動休止直前にリリースされたため、アルバムを引っ提げたツアーは行われず、収録曲は『Mr.Children TOUR "REGRESS OR PROGRESS" '96〜'97 FINAL』のドーム公演で演奏されました。

チャート成績は驚異的でした。初週173.5万枚を売り上げ、シングル、アルバムを通して自己最高の記録を更新しました。累計売上は328.3万枚（オリコン調べ）に達し、4thアルバム『Atomic Heart』に次いで2番目に高い売上を記録。オリコン集計において、アルバム2作品で300万枚を達成したのはMr.Childrenが初めてでした。

収録されている楽曲は多様な魅力にあふれています。インストゥルメンタルの「prologue」から始まり、「Everything (It's you)」などのシングル曲、「タイムマシーンに乗って」「Brandnew my lover」「ALIVE」といったロックナンバー、「傘の下の君に告ぐ」「幸せのカテゴリー」といったバラードなど、様々な楽曲が収録されています。それぞれの楽曲には社会風刺や、桜井和寿氏のプライベートな心情、様々な影響を受けた要素などが込められており、聴き応えのある内容となっています。

『BOLERO』は、Mr.Childrenの音楽性、そしてアーティストとしての成長を象徴する、まさに名盤と言えるでしょう。デジタルサウンドと深みのある歌詞、そして高い音楽性が融合したこのアルバムは、長年にわたって多くのファンを魅了し続けています。

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