Be (カシオペアのアルバム)

『Be』は、日本の代表的なフュージョンバンド、CASIOPEAが1998年に発表した通算31枚目のオリジナルアルバムです。バンドが結成20周年という記念すべき節目を迎えるにあたって制作された、彼らのキャリアにおける重要な作品の一つとして位置づけられています。

本作の大きな特徴は、レギュラーメンバーに加えて、多様なジャンルで活躍するゲストミュージシャンを積極的に迎え入れている点です。特に注目されるのは、ゴスペルコーラスグループR.P.M. (David K. Lawson, Wanda D. P. Lawson, Elaine Entzminger, Kenneth F. Stewart)の参加です。彼らのソウルフルでパワフルなコーラスワークは、CASIOPEAの持ち味であるタイトかつメロディアスなフュージョンサウンドに、これまでとは異なる暖かみと深みを与えています。フュージョンとゴスペルという異質な要素の融合は、『Be』に独自の魅力を加えており、バンドの音楽的探求心を示す好例と言えるでしょう。

R.P.M.以外にも、多彩なゲストがアルバムに彩りを添えています。オルケスタ・デ・ラ・ルスで知られるパーカッショニストの大儀見元が数曲に参加し、ラテンフレイバー豊かなリズムで楽曲に躍動感をもたらしています。また、フルート奏者の赤木りえも参加しており、その美しい音色で楽曲に繊細な表情を加えています。これらのゲストミュージシャンたちの貢献により、『Be』はCASIOPEA単独の演奏では生まれ得なかった、より豊かで多層的なサウンドを実現しています。

本作制作時におけるCASIOPEAのレギュラーメンバーは、不動のギタリストであるリーダーの野呂一生、卓越したキーボードプレイを聴かせる向谷実、グルーヴィーなベースラインを支える鳴瀬喜博、そして革新的なドラミングで知られる神保彰という強力な布陣でした。彼ら4人の緊密なアンサンブルが、ゲストとの共演においても確固たる土台となり、アルバム全体の音楽性を支えています。

アルバムのサウンドメイキングに関しても、多数のプロフェッショナルがクレジットされています。サウンド・プロデューサーはバンド自身であるCASIOPEAが担当し、彼らの音楽的ヴィジョンを追求しました。エグゼクティブ・プロデューサーはTakashi Tsubonoです。レコーディングおよびミキシングは志村広行 (Hiroyuki Shimura)が手掛け、CASIOPEA特有のクリアで洗練されたサウンドを捉えています。アシスタント・エンジニアとして柳沢真史 (Masashi Yanagisawa)、Genta Tamai、山口忠（Tadashi Yamaguchi）が参加しています。マスタリングは原田光晴 (Mitsuharu Harada)が行い、最終的なサウンドバランスを調整しました。また、楽器テクニシャンとして堀内靖 (Yasushi Horiuchi)、佐々木英輔 (Eisuke Sasaki)、Satoshi Tsuchiyaが、A&Rには野城俊幸 (Toshiyuki Yashiro)が携わるなど、多くのスタッフが作品の完成を支えました。

アートワーク面では、アートディレクション、デザイン、写真を柳沢智 (Satoshi Yanagisawa)が担当し、アルバムの音楽世界を視覚的に表現しています。さらに、Nobuyuki Kougoがヘアー・メイクアップを、Sono Terasawaがスタイリングを担当し、アーティストイメージを創り上げています。

『Be』は、CASIOPEAが20年という長い歴史の中で培ってきたフュージョンのスタイルに、新たな音楽的要素を取り込むことで、バンドサウンドの可能性を広げた意欲的な作品です。フュージョンを核としながらも、ゴスペル、ラテン、そしてクラシック的な要素も感じさせるこのアルバムは、常に進化を求めるCASIOPEAの探求心と、熟練のミュージシャンとしての彼らの柔軟性を示しています。長年のファンにとっても、そして初めて彼らの音楽に触れるリスナーにとっても、『Be』はバンドの豊かな音楽性と、ゲストとの素晴らしいコラボレーションが織りなす感動的な体験を提供してくれるでしょう。リイッシュー盤もリリースされており、現在も多くの音楽ファンに聴かれています。

もう一度検索