Be-200 (航空機)

Be-200

Be-200は、ロシアのベリエフ設計局が手掛けたジェット双発式の多目的水陸両用機、いわゆる飛行艇です。1998年に初飛行を達成しました。この機体は、旅客輸送だけでなく、森林火災など大規模な消火活動、さらには捜索・救難や対潜哨戒といった多様な任務への活用を想定して、1980年代末から開発構想が進められていました。

開発背景と設計

ベリエフ設計局は、Be-200の開発に先立ち、大型ジェット飛行艇A-40を1986年に初飛行させており、Be-200の設計はそのA-40を基礎としつつ、大幅な小型化が図られました。A-40が機体重量約44トンであったのに対し、Be-200は約27.6トンと軽量化されています。しかし、高翼配置の主翼や、胴体後方上部に突き出して設置されたエンジン、ドーサルフィン付きのT字尾翼など、特徴的な機体レイアウトはA-40の設計思想を受け継いでいます。この機体の模型は、1991年のパリ航空ショーで展示され、国際的な注目を集めました。

開発は、ソ連経済の崩壊といった社会情勢の影響もあり、当初は困難を伴いましたが、1996年にようやく初号機が完成。そして、1998年9月24日に記念すべき初飛行を迎えました。商業的な展開としては、1997年にロシア非常事態省からの受注を獲得したのを皮切りに、西ヨーロッパやアジア市場への積極的な売り込みが行われました。量産初号機は2003年に初飛行し、その後の引き渡しが開始されました。

エンジン換装を巡る動き

Be-200は当初、ウクライナ製のD-436TPターボファンエンジンを搭載していましたが、ウクライナ情勢（尊厳の革命以降）の緊迫化により、このエンジンの供給に影響が出る可能性が高まりました。2016年の時点では、D-436TPが民生用に輸出可能であったため、代替エンジンとしてフランスとロシアの合弁会社パワージェットが製造するSaM146エンジンとの並行検討が進められていました。

しかし、2018年2月にはウクライナが民間向け輸出も禁止したことを受け、SaM146への換装がより現実的な選択肢となりました。パワージェットとの技術協力の結果、SaM146への換装が技術的に実現可能であることが確認されました。同年、国際フォーラムエンジン（MFD 2018）では、ロシアの統一エンジン製造会社の代表者が、2020年後半に新しいナセルと共にSaM146を搭載する計画を発表しました。さらに、サンクトペテルブルク国際経済フォーラム（SPIEF-2018）では、ロシアのサトゥールン社とフランスのサフラン・エアクラフト・エンジンズ社が、Be-200向けのSaM146派生型開発に関する枠組み合意に調印。エンジンと機体のシステム統合や型式認証に向けた近代化作業に合意し、試験・認証用のプロトタイプ3機を製造するための3年間のロードマップも策定中とされていました。ところが、このSaM146換装計画は、2019年4月にロシア連邦検察局によって取り消されるという予期せぬ展開を迎えました。

これを受けて、ロシアは国産エンジンへの依存度を高める方針へと転換。2022年2月、当時のロシア首相ミハイル・ミシュスチン氏は、国営企業ロステックに対し、PD-14エンジンの派生型であるPD-8の開発作業を加速し、Be-200に搭載するよう指示しました。PD-8エンジンは、自動制御システム（FADECなど）を含め、全ての部品を国産で製造することを想定しており、これにより西側諸国の制裁や禁輸措置による影響を回避できるとされています。PD-8の型式認証は2023年に予定されていました。

運用と事故

Be-200は主にロシア非常事態省によって運用されており、特に大規模な森林火災に対する消火能力が高く評価されています。水面や滑走路から離着陸できる水陸両用機としての特性を活かし、アクセスが困難な地域での消火活動などに投入されています。その能力は、海外の火災現場に派遣されることもあります。

しかし、運用中に事故も発生しています。2021年8月14日、トルコのカフラマンマラシュで発生した山火事の消火任務にあたっていたロシア海軍向けのBe-200ES（2020年に納入された機体）が墜落し、搭乗していたロシア人乗組員5名と、消火活動を調整するために同乗していたトルコ人3名の計8名が犠牲となる痛ましい事故が起こりました。

各型式

Be-200には、その多用途性に対応するためにいくつかの派生型が存在します。

Be-200: 開発時の原型機。
Be-200ES: ロシア非常事態省向けの主要モデルで、消火、捜索、救難など多目的に使用されます。
Be-200E: Be-200ESのコックピット計器を英語表記にした輸出向けモデルです。
Be-200RR: イギリスのロールス・ロイス社製BR715エンジンへの換装を想定した計画型です。
Be-210: 純粋な旅客輸送機型として計画されましたが、実現には至っていません。
Be-220: 対潜哨戒機型として計画されましたが、こちらも計画段階に留まっています。

性能要目

以下にBe-200の主要な性能諸元を示します。


Be-200は、その独特な水陸両用能力と多目的性から、特にロシア国内や国際的な緊急事態対応において重要な役割を担っています。エンジン問題の解決や安全な運用に向けた取り組みが、今後の機体の発展と普及の鍵となるでしょう。

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