C-160 (航空機)

トランザールC-160：欧州共同開発の戦術輸送機

トランザールC-160は、冷戦時代の1950年代後半、フランスと西ドイツ（当時）の共同開発によって生まれた双発の戦術輸送機です。その名称は、両国の企業が共同出資した「トランスポルト・アリアンツ社」に由来しています。本機は、両国空軍が運用していた旧式の輸送機の代替として開発され、アメリカ合衆国のロッキードC-130を参考にしながらも、ヨーロッパ特有の事情を反映した独自の設計が施されました。

開発と生産

1957年に共同開発が合意され、1959年には開発・生産を行う合弁会社が設立されました。設計においてはC-130の影響が見て取れ、高翼配置の主翼や胴体後部のローディングランプを備える基本構造は類似しています。しかし、強力なロールス・ロイス・タイン・ターボプロップエンジンを採用したことで双発機となり、ヨーロッパの鉄道貨物規格に合わせた大型の貨物室、そして滑走路への負担を軽減する設計も特徴です。1963年の初飛行を経て、複数の企業が分担して生産が行われ、1972年までに169機が製造されました。その後、フランスからの追加発注を受け、生産は1977年に再開され、最終的に214機が生産されました。

運用実績

トランザールC-160は、フランス、西ドイツ（後のドイツ）、南アフリカ共和国、トルコ、インドネシアなどで軍用機として運用されました。フランス空軍では空中給油や情報収集任務にも使用され、湾岸戦争にも参加しました。南アフリカ共和国では1997年に退役しましたが、ドイツ空軍ではエアバスA400Mアトラスへの更新計画が遅れたため、2021年まで運用が延長されました。民間航空においても、エールフランスやベルエア、インドネシアの航空会社などで使用されましたが、現在ではほとんどが退役しています。

派生型

トランザールC-160は、基本型に加え、様々な派生型が存在します。航続距離を伸ばしたC-160NG、早期警戒機型、対潜哨戒機型、電子情報収集機型などが計画されましたが、多くの派生型は計画のみに留まりました。一方、通信中継機型やECM訓練機型などは実際に運用されています。また、既存機への延命改修プログラムも実施されています。

性能・諸元

トランザールC-160の性能は、搭載エンジンや改修状況によって変動しますが、基本的な諸元は以下の通りです。乗員は3名、兵員輸送能力は90名程度、最大搭載重量は16トンを超え、航続距離は1800キロメートル以上を誇ります。最大速度は590キロメートルを超え、運用高度も8000メートルを超える高性能な輸送機でした。離着陸性能も良好で、短距離滑走路での運用も可能です。

登場作品

トランザールC-160は、映画やゲームなどにも登場しています。映画『TAXi2』では、主人公たちが乗るタクシーをパリ上空から降下させるシーンで登場し、ゲーム『Just Cause』では大統領専用機として登場するなど、その存在感を示しています。

まとめ

トランザールC-160は、冷戦時代の技術協調と、ヨーロッパにおける独自のニーズを反映した戦術輸送機として、長年にわたって活躍しました。その歴史は、航空技術の進歩、国際協力、そして冷戦終結後の軍備変革といった、様々な要素が絡み合ったものです。様々な国で運用され、多様な任務に用いられたトランザールC-160は、航空史にその名を刻む、重要な航空機の一つと言えるでしょう。

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