D-ダイマー

D-ダイマーについて

D-ダイマーは、体内での血栓の形成と分解に関連する重要なバイオマーカーです。この物質は、フィブリンというタンパク質がプラスミンによって分解される過程で生じる小さなタンパク質断片の一部です。1990年代に臨床応用が始まり、特に静脈血栓塞栓症や他の血栓性疾患の診断に役立つ検査として広く用いられるようになりました。

生成と構造

D-ダイマーは、フィブリンの二つのDフラグメントが結合して形成されるため、その名が付けられました。フィブリンは初めにフィブリノゲンという可溶性のタンパク質から生成され、凝固カスケードによって不溶性のフィブリンに変わります。このフィブリンは、血栓の形成を助ける重要な役割を果たしますが、やがてプラスミンによって分解され、最終的にD-ダイマーとして血液中に現れるのです。このプロセスにおいて、プラスミンはフィブリンのD-E間やD-D間の結合を切断し、D-ダイマーを生成します。

意義と使用法

D-ダイマーの測定は、特に血栓症の診断において非常に重要です。播種性血管内凝固症候群の診断や、COVID-19患者における凝固障害の予測に役立つとされています。具体的には、D-ダイマー値の上昇は、病態の悪化や予後不良の指標になることがあります。

肺血栓塞栓症や心房細動に伴う血栓，大動脈解離、深部静脈血栓症など、さまざまな疾患の診断でもD-ダイマーが有用であるとされています。特に深部静脈血栓症においては、リスク評価を行った上でのD-ダイマー検査が効率的だと報告されており、そのカットオフ値を年齢によって調整することで診断精度が向上するとされています。

診断アルゴリズム

診断を行う際には、D-ダイマー値と共に臨床検査前の確率を考慮する必要があります。たとえば、YEARSアルゴリズムを用いて低い確率が示された場合、D-ダイマー値が特定の基準を下回ることで肺塞栓症のリスクを的確に評価できます。また、急性大動脈解離の診断にもD-ダイマーが利用され、その感度や特異度はカットオフ値によって変動します。

迅速診断の進展

近年では、臨床現場においてD-ダイマーを迅速に測定できる機器や試薬が開発されています。日本国内では、ラピッドピアやラピッドチップDダイマー（積水メディカル製造販売）、やcobas h232 plusなどが市販されており、迅速な診断が可能です。

結論

D-ダイマーは、血液中に常に存在し、凝固と線溶のバランスを反映する重要なマーカーです。その測定は、血栓性疾患の診断や管理において欠かせない要素となっています。D-ダイマー検査を通じて、疾患の早期発見や治療方針の決定が可能となり、患者の予後向上につながります。

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