DSEE

DSEE (Digital Sound Enhancement Engine)とは

DSEE（Digital Sound Enhancement Engine）は、ソニーが開発した非可逆圧縮音源の音質を向上させるための独自技術です。MP3、ATRAC3、AAC、WMAなどの圧縮によって失われた高音域を、独自のアルゴリズムで予測し、補完することで、より原音に近いサウンド体験を提供します。

DSEEの概要

この技術は、ソニーのウォークマン、SonicStage CP（Ver.4.2以上）、x-アプリ、Music Center for PCに搭載されています。DSEEは、圧縮音源を解析し、失われた高音域を補完することで音質を向上させますが、低ビットレートのHE-AACでは基本的に機能しません。また、ウォークマンでは、一定以上の高音質楽曲や、逆に低すぎる音質の楽曲ではバッテリー節約のため、一時的に無効化される場合があります。

DSEE HX

2013年9月以降に登場したDSEE HXは、従来のDSEEを大幅に進化させたバージョンです。ウォークマンのF880シリーズやZX1などのハイレゾ対応機器、Xperia、Music Center for PC (Ver.2.x)に搭載されています。DSEE HXは、非可逆圧縮音源だけでなく、WAVの非圧縮音源、FLACやALACなどの可逆圧縮音源も、最大192kHz/24bitのハイレゾ相当にアップスケーリングします。これにより、CD音源だけでなく、様々な音源をより高音質で楽しむことが可能になりました。

2016年以降のモデルでは、最大192kHz/32bitまで拡張され、上位機種では楽曲に合わせて5つのモードから選択できるようになりました。さらに、2018年からはAI技術を導入し、再生中の楽曲のタイプを自動で判別し、高音域の補正精度を向上させています。ただし、Music Center for PC (Ver.2.x)のDSEE HXがAI版かどうかは明確にはされていません。

2020年からは、一部のワイヤレスヘッドホンでDSEE HXとイコライザーの併用も可能になり、より自由な音作りができるようになりました。

DSEE Extreme

2020年8月7日に発表されたDSEE Extremeは、AI技術をさらに進化させたバージョンです。ノイズキャンセリング機能搭載のワイヤレスヘッドホンWH-1000XM4や、ホームシアターシステム、サウンドバーなどに搭載されています。DSEE Extremeは、リアルタイムで楽曲のタイプを分析し、最適なアップスケーリングを行うことで、さらなる高音質化を実現しました。LDACコーデック接続時でもDSEE Extremeとイコライザーを併用でき、より多様な音楽体験を提供します。ただし、周波数帯域処理は96kHzまで、ビット深度の拡張は24bitまでとなっています。

DSEE Ultimate

2020年2月24日に発表されたDSEE Ultimateは、Xperia 1 II以降のスマートフォンに搭載されています。AI技術を192kHzまでの周波数帯域処理と24bit深度の拡張にも適用し、ストリーミングサービス、動画、ゲームなど、様々なコンテンツに対応しました。また、有線ヘッドホンだけでなく、LDACコーデックを使用したワイヤレス接続時にもDSEE Ultimateが利用可能です。

2020年10月には、ウォークマンの一部モデルにもDSEE Ultimateが搭載されました。ただし、W.ミュージックアプリと有線接続時に限定されていましたが、後のアップデートで全てのアプリと接続方式に対応するようになりました。ウォークマンでは、Xperiaと同じ192kHzの周波数帯域処理に加え、32bit深度の拡張が可能です。これにより、より高解像度で音楽を楽しめるようになりました。

DSEE Ultimateは、DSEEシリーズの最上位バージョンとして、より広範な音源と用途に対応し、その音質向上技術は、常に進化を続けています。

まとめ

DSEEは、圧縮音源の音質を向上させるためのソニー独自の技術として、長年にわたり進化を続けています。DSEE、DSEE HX、DSEE Extreme、DSEE Ultimateと、その進化の過程で、AI技術を取り入れ、アップスケーリングの精度を高め、対応する音源や用途を拡大してきました。これらの技術は、より多くの人々が手軽に高音質の音楽体験を楽しめるようにすることを目指しています。

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