EDBeta

EDベータ (Extended Definition Beta) とは

EDベータは、ソニーがベータマックスの画質を向上させるために開発した規格です。正式名称は「Extended Definition Beta」で、当時開発が進められていたEDTV（Enhanced Definition Television）の技術が応用されています。ベータマックスの更なる高画質化を目指し、ハイバンドベータ、SHBベータに続く規格として登場しました。

開発の背景

1987年1月、日本ビクター（現JVCケンウッド）がS-VHSを発表したことが、EDベータ開発の大きな要因となりました。それまで画質面で優位だったベータマックスの立場が揺らぎ、その対抗策として、ソニーはわずか2ヶ月という短期間でEDベータを発表しました。

規格の特徴

EDベータは、水平解像度500本を実現し、S-VHSの400本を上回る高画質を誇りました。また、専用のメタルテープを採用し、FM輝度信号の記録周波数もS-VHSより高く設定されました。しかし、このメタルテープは従来のベータテープとの互換性がなく、EDベータ専用機でしか録画・再生ができませんでした。S-VHSテープはVHSデッキで録画可能だったため、この点が大きな違いとなりました。

発表時の反響

1987年3月に規格が発表され、その際に水平解像度500本のテストパターンや風景映像が公開されました。発表に使われた再生機は、テープを挿入するデッキ部分と信号を処理する部分に分かれており、前面が透明なアクリルで覆われたデザインでした。このデザインは好評で、後のEDベータ家庭用デッキにも採用されました。

商品化とラインナップ

民生機として、ビデオデッキ5機種、カムコーダ1機種、専用メタルテープ4種が発売されました。ビデオデッキは、全てBSチューナーを搭載せず、アナログ地上波チューナーのみでした。また、EDベータだけでなく、従来のベータやハイバンドベータも再生可能でした。ただし、βⅠsおよびSHBでの録画機能は搭載されていませんでした。

ビデオデッキの主な機種

EDV-9000：編集機能を充実させたフラッグシップモデル。ジョグダイヤルやシャトルリンクを搭載。
EDV-5000：ベーシックモデル。ローディングメカニズムが新規に採用された。
EDV-7000：外部BSチューナーとの連携機能を搭載。
EDV-8000：操作ボタンを内蓋に収納し、シャトルエディットダイヤルを搭載。
EDV-6000：最後に発売されたEDベータデッキ。シャトルエディットはリモコンのみとなった。

カムコーダー

EDC-50：EDベータ専用ビデオカメラ。2CCD方式を採用し、レンズ交換が可能なセパレート式。

専用テープ

EDベータは、塗布型メタルテープを使用し、従来のベータテープとは互換性がありませんでした。専用テープには、検出孔や誤消去防止スライドがあり、従来のベータデッキでの録画ができないように設計されていました。

ビデオソフト

EDベータの画質を生かしたソフトも発売されましたが、他のフォーマットに比べて少なく、入手も困難でした。主に音楽や環境映像、映画などがリリースされました。

業務用機器

放送業務用として、EDV-9000をベースとしたEDW-95や、EDC-50をベースとしたEDW-150が発売されました。これらの機種は、業務用に必要な機能が追加されました。

海外展開

EDベータは、北米にも展開され、EDV-9500、EDV-7500、EDC-55などの機種が発売されました。

発売後の状況と終焉

EDベータは、発売当初からベータとVHSのフォーマット戦争が終結していたことや、S-VHSも普及しきれなかったことから、マニア向けの規格という印象が強く、普及には至りませんでした。水平解像度は優れていたものの、カラー解像度が低く、総合的な画質バランスが課題となり、マニアからの評判も高くありませんでした。1995年以降、DV方式が登場すると、アナログビデオは衰退し、2002年にEDベータは生産終了となりました。

まとめ

EDベータは、ベータマックスの可能性を追求した高画質規格でしたが、専用テープの必要性やカラー解像度の課題、市場の動向などから、普及には至りませんでした。しかし、家庭用ビデオフォーマットの歴史において、高画質化への挑戦の足跡として記憶されています。

もう一度検索