EMD SD70シリーズディーゼル機関車

EMD SD70機関車シリーズ：北米鉄道の主力ディーゼル機関車

EMD SD70は、ゼネラルモーターズ傘下のEMD社が1992年から製造を開始した、アメリカ合衆国を代表する6軸電気式ディーゼル機関車です。特徴的なフードユニット型の車体と、C-C式の軸配置を持ち、その派生型を含めると4000両を超える生産数を誇ります。本シリーズは、北米の鉄道輸送において長年にわたり、主力機関車として活躍を続けています。

SD70シリーズの進化：主要な改良点とバリエーション

SD70シリーズは、登場以降、様々な改良を加えられ、複数のバリエーションが展開されました。初期のSD70はHT-C型台車を使用していましたが、後継機種であるSD70ACeやSD70M-2では、自己操舵式のHTCR型台車（現在ではHTCR-4型）へと進化しています。コストを抑えたHTSC型ボルスタレス台車もオプションとして用意されていました。

搭載エンジンは、全車共通でV型16気筒の710-G3型ディーゼルエンジンと交流発電機を使用しています。しかし、駆動モーターは機種によって異なります。SD70、SD70I、SD70M、SD70M-2は直流モーター、SD70MACとSD70ACeは交流モーターを採用しています。また、納入先によって仕様に若干の違いがある場合もあります。

SD70シリーズの大きな特徴の一つに、運転室の設計があります。従来のSD60などでは幅の狭いスタンダードキャブまたはスパルタンキャブが採用されていましたが、SD70からは運転室の幅が広いコンフォートキャブ（公式には北米セーフティキャブ）が標準となりました。これは運転士の作業環境を大幅に向上させるものでした。

各バリエーションの詳細

SD70: 初期モデル。直流モーターを使用し、インバーター制御を採用。120両が製造され、ノーフォーク・サザン鉄道（NS）、コンレール、イリノイ・セントラル鉄道（IC）、サザン・ペルー・カッパー（SPC）に納入されました。コンレールの車両は、1999年の分割後、NSに承継されました。

SD70M: 出力4000馬力（2980kW）のモデル。SD70と同様に直流モーターを使用。ユナイテッド・パシフィック鉄道（UP）、サザン・パシフィック鉄道（現UP）、CSX輸送など多くの鉄道会社に納入されました。運転室はコンフォートキャブで、デザインにフェーズ1とフェーズ2の2種類が存在します。環境規制に対応するため、2000年代半ばからは大型ラジエターを採用しました。2004年までに1646両が製造されました。

SD70I: SD70Mの運転室をウイスパーキャブタイプに変更したモデル。ウイスパーキャブは運転室の振動と騒音を低減する構造です。26両がカナディアン・ナショナル鉄道（CR）に納入されました。

SD70MAC: 交流モーターを採用したモデル。SD70MやSD70Iと似た外観を持ち、ウイスパーキャブもオプションで用意されていました。信頼性が高い交流モーターを採用したことで、高い評価を得ました。出力は4000馬力と4300馬力の2種類があります。バーリントン・ノーザン鉄道（現BNSF鉄道）、コンレール（後にCSXが承継）、CSX、KCS、KCSM、アラスカ鉄道など、幅広い鉄道会社で運用されました。

SD70ACe: SD70MACを環境規制に対応させたモデル。出力は4300馬力。ラジエターの拡大、運転室前部の形状変更、メンテナンス性の向上などが図られています。BNSF、CSX、フェロメックス、KCS、モンタナ・レール・リンク、UPなどに納入された他、オーストラリアのBHPビリトンにも輸出されました。

SD70M-2: SD70ACeの駆動モーターを直流モーターに変更したモデル。出力は4300馬力。NS、CR、FECなどに納入されました。

まとめ

EMD SD70シリーズは、その多様なバリエーションと高い信頼性から、北米の鉄道輸送において不可欠な存在となっています。環境規制への対応や性能向上を図りながら、今後も進化を続けることが期待されます。それぞれのバリエーションの車両番号は、本文中で個別に記載されています。

もう一度検索