EU域内乗り入れ禁止航空会社の一覧

EU域内乗り入れ禁止航空会社について

欧州連合（EU）は、航空会社の安全管理体制に問題があると判断した場合、その航空会社に対してEU域内での離着陸や領空通過を禁止する措置を講じます。これは、EU加盟国だけでなく、周辺のEU非加盟国にも影響を及ぼすため、航空安全において重要な意味を持ちます。

乗り入れ禁止措置の種類

乗り入れ禁止措置には、大きく分けて2つの種類があります。

ANNEX-A: 特定の国や航空会社全体を対象とし、安全上の懸念から一律でEU域内への乗り入れを禁止する措置です。
ANNEX-B: 航空会社自体ではなく、特定の機種や機体を対象とし、安全が確認された一部の機種以外はEU域内への乗り入れを禁止する措置です。

乗り入れ禁止措置の理由

EUが乗り入れを禁止する理由は多岐にわたります。

対象国全体の管理体制の問題: 国が航空会社や航空事故の調査を適切に管理できていない場合。
整備不良: 航空会社や国が規定を満たさない整備を行っている、あるいは整備を全く実施していない場合。
老朽化した機材: 保有機材が老朽化しており、EUの安全基準を満たしていない場合。特に、機齢30年を超えるような機材を、アビオニクスの更新や騒音対策を施さずに使用している場合。
保安上の懸念: ハイジャック防止などの保安面で強い懸念がある場合。
政治的な理由: 特定の国が関与する政治的騒乱に対する制裁措置として、その国の航空会社が禁止対象となる場合（例：2022年以降のロシアやベラルーシ）。

ただし、リストに掲載されている航空会社でも、安全基準を満たすことを条件に、禁止対象外の会社からウェットリースを受けることでEU域内への乗り入れが可能な場合があります。

リスト作成の背景

EUが乗り入れ禁止航空会社のリストを作成するようになった背景には、2004年にエジプトで発生したフラッシュ航空604便の墜落事故があります。この事故で多くのフランス人観光客が犠牲になったことを受け、EUは域内での航空安全対策を強化する必要性を痛感しました。2006年3月22日、EU全体で統一された航空会社ブラックリストが作成され、3ヶ月ごとに更新されるようになりました。

このリストは、事故を起こした航空会社や、安全管理体制に問題があると判断された航空会社が追加されることがあります。過去には、インドネシアの航空会社やパキスタン国際航空などがリストに掲載されたことがあります。一方で、TAAGアンゴラ航空のように、安全基準を満たしたと判断され、リストから除外された航空会社もあります。

ロシア・ベラルーシへの制裁

2022年以降、ロシアによるウクライナ侵攻に伴い、EUはロシアの航空会社をEU域内への乗り入れ禁止としました。さらに、ロシア籍として登録された西側諸国メーカーの航空機を運用する会社もリストに含めています。また、公式リストにはないものの、ベラルーシの航空会社や、ロシアと関係のあるトルコの航空会社も事実上の出入り禁止となっています。

2024年5月30日現在のリスト

以下は、2024年5月30日現在で、EUが公式に乗り入れ禁止としている航空会社の一覧です。

ANNEX A (国籍、航空会社に対する制限)

アフガニスタン：全社
アンゴラ：全社（TAAGアンゴラ航空、ヘリ・マロンゴ航空を除く）
アルメニア：全社
コンゴ民主共和国：全社
コンゴ共和国：全社
ジブチ：全社
赤道ギニア：全社
エリトリア：全社
イラク：イラク航空、フライ・バグダッド
イラン：イラン・アーセマーン航空
キルギス：全社
リベリア：全社
リビア：全社
ネパール：全社
ロシア：アエロフロート・ロシア航空、アヴィアスタル-TU、アルロサ航空、イカル、イザヴィア、イル・アエロ、ウラル航空、オーロラ、スマータヴィア、ノルドスター航空、ポベーダ、ヤクーツク航空、ヤマル航空、ラスライン、ロシア航空、I-Fly、RusJet、S7航空、SKOL、UTエアー、UVTアエロ
サントメ・プリンシペ：全社
シエラレオネ：全社
スーダン：全社
スリナム：ブルー・ウィング航空
ベネズエラ：アビオール・エアラインズ
ジンバブエ：エア・ジンバブエ

ANNEX B (機種による制限)

イラン：イラン航空 (ボーイング747・フォッカー 100)
北朝鮮：高麗航空 (2機のツポレフ Tu-204（P-632 / P-633）を除く全機)

注意事項

上記のリストは、EUが公式に発表しているものですが、これ以外にも事実上の出入り禁止となっている航空会社が存在します。最新の情報は、EUの公式サイトで確認するようにしてください。