Elfin

歌手、今井美樹にとって通算2枚目となるオリジナルアルバム、『elfin』（エルフィン）は、1987年9月21日にフォーライフ・レコード（現：フォーライフミュージックエンタテイメント）から世に送り出されました。

アルバムタイトルである『elfin』には、「小妖精のような」という意味合いに加え、「いたずらな」「お茶目な」といったニュアンスも含まれています。このタイトルは、当時の彼女自身のイメージや、アルバムに込められた世界観を反映していると言えるでしょう。

本作の制作は、今井美樹のキャリアにおいて重要な転換点となりました。彼女自身、この時期を振り返り、それまでの受動的な姿勢から変化し、プロデューサーをはじめとするレコーディングスタッフに対し、自身の意見や要望を積極的に伝えられるようになった時期だと述べています。自分が歌いたい歌詞の世界観を明確に作詞家に伝え、それを具現化してもらうために、多少無理を承知で依頼していたエピソードも披露しており、本作が自己表現の始まりとなったことを示唆しています。

特に有名なエピソードとして、アルバムの表題曲である『elfin』の歌詞が、発売当時の歌詞カードに掲載されていなかった点が挙げられます。今井本人は当時、プロモーションの場で「この曲はあえて小声で歌っていたため、歌詞を載せなかった」と説明していましたが、後年になってその真相を明かしました。実際には、レコーディング中に風邪をひいてしまい制作スケジュールがタイトになった結果、ジャケット印刷の締め切りまでに作詞が間に合わなかったためだったと語っています。

収録曲は全10曲。先行シングルとして発表された『野性の風』は、このアルバムのために新たにリミックスされたバージョンとして収められています。また、『SAYONARAの行方』は、当時日本テレビ系で放送されていたクイズ番組『ワールドクイズ ザ・びっくり地球人!』のエンディングテーマとして使用され、リスナーに親しまれました。表題曲である『elfin』は、このアルバムから後にシングルカットされ、サードシングル『静かにきたソリチュード』のカップリング曲として改めてリリースされています。アルバム収録曲のうち、『ふたりでスプラッシュ』は、1996年にリリースされたライブアルバム『Thank you』のDISC.3に、菅野よう子の編曲による新たなアレンジで再録音されたバージョンが収められています。アナログ盤では、A面にあたる1曲目から5曲目が「First Side…」、B面にあたる6曲目から10曲目が「Second Side…」と表記されていました。

商業的な成功も収めており、本作はオリコン週間アルバムチャートで最高位5位を記録しました。これは、彼女のキャリアにおいて、シングルよりも先にアルバムが初めてオリコンチャートのベストテン入りを果たした記念すべき記録となりました。

さらに、同年開催された第29回日本レコード大賞では、『優秀アルバム賞』を受賞するという高い評価も得ています。この受賞は大きな意味を持ち、翌1988年の追加プレス盤や、後に発売された完全限定盤のGOLD CD、さらには1996年の再発売盤など、多くのCDジャケットの帯にその受賞歴が誇らしげに記載されることとなりました。

『elfin』は、単なる2枚目のアルバムというだけでなく、アーティスト今井美樹が自身の音楽性や表現方法を確立し始め、商業的な成功と音楽的な評価の両方を手にした、キャリアにおける重要なターニングポイントとなった作品と言えるでしょう。

もう一度検索