F級駆逐艦 (初代)

F級駆逐艦：イギリス海軍の革新的な駆逐艦

F級駆逐艦は、イギリス海軍が建造した駆逐艦の艦級です。当初は艦名に部族名が用いられていたことからトライバル級と呼ばれていましたが、1913年に再種別されました。

来歴

駆逐艦の役割の変化

初期の水雷艇駆逐艦（TBD）は、欧州大陸沿岸部での運用を想定し、主力艦の護衛や敵水雷艇の撃攘、敵主力艦への雷撃を任務としていました。しかし、ドイツ帝国の台頭と英仏関係の改善に伴い、イギリス海軍は戦場を北海に移し、駆逐艦の設計を大幅に見直しました。

フィッシャー提督の構想

1904年にジョン・アーバスノット・フィッシャー提督が第一海軍卿に就任すると、この方針はより明確になりました。フィッシャー提督は、ドレッドノート級戦艦と高速駆逐艦による艦隊編成を構想し、駆逐艦にも戦艦に随伴できる航洋性が求められるようになりました。この要求に応えるため、1905年度計画で建造が開始されたのがF級駆逐艦です。

設計

多様化する艦型

F級駆逐艦では、詳細設計が個々の造船所に委ねられたため、艦型は多岐にわたりました。しかし、設計面では多くの新機軸が導入されており、特に蒸気タービン機関と重油専焼水管ボイラーの採用は、大きな特徴です。

タービン機関の導入

従来の駆逐艦はレシプロ蒸気機関と石炭専焼水管ボイラーを搭載していましたが、技術的な限界に達しつつありました。そこで、F級ではパーソンズ式の直結蒸気タービンが採用されました。これは、両舷軸に低圧タービン、中央軸に高圧タービンを結合した3軸推進方式であり、高速性と信頼性を両立させました。

重油専焼ボイラーの採用

また、航続距離を延伸するため、重油専焼式ボイラーが本格的に導入されました。これにより、従来の石炭焚きボイラーに比べて、燃料補給の手間が減り、航続距離も大幅に伸びました。

その他の設計

この他、6時間の連続運転による実用的な性能公試や、4日間の連続行動に耐える居住性といった要求事項も盛り込まれ、後の駆逐艦設計に大きな影響を与えました。ただし、これらの新技術導入のため、建造費は高騰し、1隻あたり14万ポンドに達しました。

装備

艦砲の強化

F級駆逐艦では、艦砲の装備も強化されました。日露戦争の戦訓から、従来の5.7cm砲では威力不足と判断され、7.6cm砲への換装と増備が行われました。また、後の計画では、10.2cm砲も搭載されるようになりました。

大口径砲の試み

1916年には、ドイツ帝国海軍の大型水雷艇が12.7cm砲を搭載するという情報を受け、15.2cm砲を試験的に搭載しましたが、取り扱いが困難であったため、まもなく撤去されました。一方で、対空兵器として40mm高角機銃が追加装備されました。

魚雷発射管

水雷艇撃攘任務と同時に、雷撃任務も担っていたため、18インチ魚雷発射管2基が搭載されました。1909年には新型の熱走魚雷に対応し、1918年には近距離での対水上戦に備えて14インチ魚雷発射管が追加されました。

同型艦一覧

（同型艦の具体的なリストや情報は、この文章では省略します）

2隻の結合と「ズビアン」

第一次世界大戦中に、大破した2隻の駆逐艦の無事な部分を接合して1隻の駆逐艦として再生する計画が実行されました。「ズールー」の艦首部と「ヌビアン」の艦後部を接合した艦は「ズビアン」と命名され、就役しましたが、大戦終結後に解体されました。

まとめ

F級駆逐艦は、イギリス海軍の駆逐艦史において重要な転換点となる艦級でした。蒸気タービン機関や重油専焼ボイラーの採用、砲熕兵装の強化など、多くの革新的な技術が導入され、その後の駆逐艦の設計に大きな影響を与えました。また、その歴史の中で、2隻の駆逐艦を接合して再生するというユニークな事例も残しました。

参考文献

（具体的な参考文献リストは省略します）

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