F-22 76mm野砲

76mm師団砲M1936(F-22)

76mm師団砲M1936(F-22)は、ソビエト連邦が第二次世界大戦前の1936年に設計した野砲で、独特の運用歴と技術が特徴です。この砲は、赤軍の需要に応じて開発されたもので、主に対地および対空戦闘用として使用されました。

開発の背景

1930年代初頭、赤軍はアメリカとイギリスが両用能力を持つ野砲の開発に注力しているとの誤った認識を持っていました。この誤解に基づき、赤軍兵器局長であったミハイル・トゥハチェフスキーは、新型の76mm師団砲の開発を推進することに決定。しかし、実際にはその設計は既存のM1902/30野砲の技術がベースとなっており、改良を加えた形での製造が進められました。

初のプロトタイプは1935年に完成し、運用試験を経て、特にヨシフ・スターリンの目に留まり、1936年5月に正式に採用されました。しかし、前モデルと比べて300kg以上も重いことから、実戦での運用にあたっては不評を買うことになります。そのため、軽量化を図ったF-22 USV野砲の開発が進められることとなり、1939年にはF-22の生産は打ち切られました。

技術的特徴

F-22は、開発当初は新型弾薬の使用を想定していましたが、実際にはM1902/30と互換性のある砲弾を使用するよう設計されました。射撃時と装填時に自動開閉する尾栓を採用し、装填速度の向上を実現しています。これにより、一時的な運用でも高い戦闘能力を発揮することが可能となりました。

実戦での運用

F-22は1938年の張鼓峰事件で実戦デビューを果たし、その後ノモンハン事件でも投入されました。さらに、冬戦争や大祖国戦争においても使用されましたが、その多くは序盤で枢軸軍によって破壊されるか、鹵獲されました。鹵獲されたF-22は逆にソ連軍に向けて砲火を放つ事態となりました。1942年になると、より性能の高いZiS-3が開発され、急速にF-22シリーズの供給が停止されたものの、残存砲はクルスクの戦いまで使用が続けられました。

他国における運用

ドイツ軍は独ソ戦の初期にF-22を多数鹵獲し、7.62cm FK 296(r)として採用しました。ソ連軍のT-34やKV-1に対抗するため、旧型の対戦車砲に代わってF-22を利用するための改造が行われました。また、フィンランドも独自にこの砲を使用し、76 K 36として制式採用し、戦後も1990年代まで保管され続けました。ルーマニアでは、鹵獲したF-22をT-60軽戦車の車体に搭載し、対戦車自走砲を制作しました。

結論

76mm師団砲M1936(F-22)は、その開発背景から実戦での運用に至るまで多くの歴史を持つ兵器です。特に、他国での運用形態や戦争中での運用実績は、戦車戦における重要な要素となりました。F-22は、当時の技術と戦術を象徴する文化的遺産の一部とも言える存在です。

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