FCクロトーネ

イタリア南部のカラブリア州、美しい海岸線を望む都市クロトーネに拠点を置くプロサッカークラブ、フットボール・クラブ・クロトーネ（Football Club Crotone S.r.l.）は、波乱に満ちた歴史を持ちながらも、幾度となく困難を乗り越えてきた粘り強さで知られています。チームのエンブレムに描かれたサメにちなみ、「Gli Squali」（サメたち）の愛称で親しまれています。

クラブの黎明期からセリエAへの道のり

クラブの歴史は1920年代に「SSクロトーネ」として始まったとされています。第二次世界大戦を経て「USクロトーネ」と名を改めた後、長年にわたりイタリアサッカーの3部リーグにあたるセリエCを主戦場として活動を続けました。しかし、1979年には財政的な問題から破産に見舞われ、「ASクロトーネ」としてアマチュアリーグからの再出発を余儀なくされます。さらに1990年代にも再び経営難に直面するなど、クラブの存続が危ぶまれる事態が繰り返されました。その度に地元の情熱と支援に支えられ、既存のクラブの歴史を引き継ぐ形で「FCクロトーネ・カルチョ」として生まれ変わり、不屈の精神で再建の道を歩み始めました。

アマチュアリーグの地域部門からの再スタートでしたが、クラブは着実にカテゴリーを駆け上がり、2000-01シーズンには待望のセリエBへの初昇格を果たします。このセリエBでの戦いの中で、特に注目すべき時期として挙げられるのが、後にイタリア屈指の戦術家となるジャン・ピエロ・ガスペリーニが指揮を執った時代（2003-2006年の一部期間）です。この頃のクロトーネは、イタリアのビッグクラブであるユヴェントスFCと良好な関係を築き、ユヴェントスの有望な若手選手を数多くレンタルで受け入れることでチーム力を高めました。これは、当時のクロトーネが若手育成の場としても機能していたことを示しています。後にイタリア代表で活躍するアントニオ・ミランテやアレッサンドロ・フロレンツィ、フェデリコ・ベルナルデスキらが、クロトーネでプロキャリアの一歩を踏み出し、あるいは成長の糧を得ました。

輝かしい頂点と「クロトーネの奇跡」

クラブ史上最大のハイライトは、2015-16シーズンに訪れます。過去に選手としてもクロトーネに在籍したイヴァン・ユリッチを監督に迎えたこのシーズン、チームは圧倒的な強さを見せ、セリエBで堂々の2位フィニッシュ。ついにクラブ創設以来となるセリエA昇格という歴史的快挙を達成したのです。これは、人口わずか約6万人の小都市にあるクラブが、イタリアサッカーの最高峰に到達したことを意味し、地元クロトーネ、そしてカラブリア州全体に大きな熱狂と誇りをもたらしました。

セリエAでの戦いは予想以上に厳しく、初挑戦となった2016-17シーズン、チームは残留争いの真っただ中に置かれました。シーズンの終盤、2017年3月末の時点で勝ち点わずか14と、セリエB降格がほぼ避けられないと誰もが悲観しました。しかし、ここからFCクロトーネは驚異的な巻き返しを見せます。ダヴィデ・ニコーラ監督の下、チームは驚異的な粘り強さを発揮。特に4月以降、快進撃を続け、わずか2ヶ月で勝ち点18を積み上げるという、まさに不可能とも思えるペースで勝ち点を積み上げました。そして迎えたリーグ最終節、ライバルチームの戦況と自らの勝利が重なり、劇的な逆転でのセリエA残留を決めました。この奇跡的な生還は、「クロトーネの奇跡」としてイタリアサッカー史に語り継がれることとなります。

タイトルとクラブを彩った顔ぶれ

FCクロトーネは国際タイトルこそありませんが、国内の下部リーグにおいては複数の優勝経験を持っています。特に、1999-00シーズンのセリエC1（ジローネB）での優勝は、セリエB昇格への大きな足がかりとなりました。他にもIVセリエ、カンピオナート・インテッレジョナーレ、セリエD、カンピオナート・ナツィオナーレ・ディレッタンティ、エッチェッレンツァ、プロモツィオーネ、プリマ・カテゴーリアといった、クラブが歩んできた各カテゴリーで栄冠を手にしています。これらのタイトルは、クラブが長い歴史の中で経験した浮き沈みの中で培われた強さと、上位リーグへの復帰を目指す意欲の証と言えるでしょう。

クラブの歴史には、多くの名監督や選手たちがその名を刻んでいます。監督としては、セリエB昇格に導いたガスペリーニ氏、セリエA初昇格を実現させたイヴァン・ユリッチ氏（彼は選手としてもクラブに貢献）、そして奇跡のセリエA残留を成し遂げたダヴィデ・ニコーラ氏が特筆されます。選手では、ユヴェントスからのレンタル組であったアレッサンドロ・フロレンツィ、フェデリコ・ベルナルデスキをはじめ、長きにわたりゴールマウスを守ったアレックス・コルダツ、セリエAで多くの得点を挙げたシミー、セリエA残留時の攻撃陣を牽引したアンテ・ブディミルやディエゴ・ファルチネッリなどが、クラブの歴史に忘れられない足跡を残しています。

セリエAでの挑戦とその後のセリエCへの降格を経て、FCクロトーネは現在、再び上位リーグ復帰を目指して日々奮闘しています。度重なる困難にも屈しない不屈の精神と、情熱的なプレースタイルは、クラブの揺るぎないアイデンティティとなっています。

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