FL Studio

FL Studio（エフエルスタジオ）とは

FL Studioは、ベルギーのImage-Line社が開発した音楽制作ソフトウェア（DAW）です。ステップシーケンサーを主軸としたユーザーインターフェースを持ち、直感的な操作で楽曲制作が可能です。一度購入すると、生涯にわたって無償でアップデートを受けられる「Lifetime Free Updates」というシステムが採用されています。Image-Line社は、iOSやAndroid、Windowsで動作するモバイル版のFL Studio Mobileも提供しており、場所を選ばずに音楽制作を楽しめます。

概要

FL Studioは、WindowsとmacOSを主なプラットフォームとしています。VSTやAUプラグインに対応しており、外部のソフトウェアシンセサイザーを使用したシーケンス制作や、オーディオ編集、エフェクト、ミキシングなど、楽曲制作に必要な作業を一つのアプリケーション内で完結できます。完成したプロジェクトは、WAV、FLAC、WavePackといった可逆圧縮形式だけでなく、MP3、Oggなどの非可逆圧縮形式でのエクスポートも可能です。

また、FL StudioはReWireのホストとクライアントの両方に対応しており、他のDAWとの連携も容易に行えます。さらに、FL Studio VSTiというプラグイン版も同梱されており、他のDAW内でFL Studioをプラグインとして使用することも可能です。これにより、他のDAWで制作中にFL Studio独自のシンセサイザーを使用するといった応用的な使い方もできます。ただし、ReWireプロトコルは2020年に廃止されたため、現在はVSTi版の使用が推奨されています。

オーディオ処理は32ビット浮動小数点エンジンで行われ、最大192kHzまでのサンプリングレートに対応しています。マルチスレッド、マルチコア CPUに対応しており、ミキサーやチャンネルラックに存在するプラグインの処理は、FL Studio内部で最適なコアに自動的に割り当てられます。これにより、効率的な動作が期待できます。

オーディオドライバーは、Windowsの場合、ASIOまたはWASAPIを選択します。WASAPIは、FL Studioと同時にインストールされるFL Studio ASIO経由で使用できます。これらのドライバーがない場合は、Windows標準のWDMも使用可能です。macOSの場合は、Core Audioが自動的に選択されます。

特徴的な機能

FL Studioには、Control SurfaceとPatcherという特徴的な機能があります。Control Surfaceは、ユーザーインターフェースを自由に作成できるプラグインです。スライダーやボタンを配置し、シンセサイザーやエフェクターのパラメーター、MIDI CCなどを割り当てることで、独自のコントローラーを作成できます。Patcherは、プラグインの入出力を自由に組み合わせて、一つのセットとして管理できるプラグインです。これにより、既存のプラグインやサードパーティ製プラグインを組み合わせて、オリジナルのプラグインを作成するような使い方も可能です。

開発の中心人物であったDidier Dambrin氏はFL Studio 12の大規模アップデート後に開発から退きましたが、開発チームの人数は増強されているとのことです。2022年現在、現行バージョンのFL Studio 20は、発売20周年を記念してリリースされました。このバージョンからmacOSに対応し、バージョンのナンバリングも12から20へと大きく変更されました。

ユーザーインターフェース

FL Studioでは、以下のウィンドウを使い分けて楽曲を制作します。

チャンネルラック (Channel Rack)
楽器プラグイン（ジェネレーター）、オートメーション、オーディオクリップをチャンネルとして扱います。ミキサートラックの割り当てやピアノロールへのアクセスもここから行います。作成したものはパターンとして管理します。
ピアノロール (Piano Roll)
MIDIシーケンスの作成を行います。縦軸に音程、横軸に演奏時間を配置し、音符に相当するデータを入力します。ノートのベロシティ設定や、その他の演奏情報も記録できます。
プレイリスト (Playlist)
パターンやオーディオクリップを配置して、楽曲全体の構成を作成します。パフォーマンスモードでは、クリップのトリガーも可能です。近年のアップデートでは、他DAWのタイムラインのような機能が強化されており、FL Studio 20では、各トラックに楽器トラックとオーディオトラックを割り当てることができ、より直感的な打ち込みが可能になりました。
ミキサー (Mixer)
各トラックのオーディオレベルの調整や、プラグインによるエフェクト処理を行います。センドトラックやサイドチェインの設定もここから行います。
ブラウザー (Browser)
イベント管理、サンプル、フォルダなど、すべてのデータを表示します。ここからプラグインやサンプルをドラッグ&ドロップで読み込むことが一般的です。

ラインナップ

FL Studioは、ダウンロード版とパッケージ版の両方で入手可能です。日本国内の代理店は株式会社フックアップです。2022年現在、Image Line社からは、Fruity Edition、Producer Edition、Signature Edition、All Plugins Editionの4つのラインナップが販売されています。

Fruity Edition：ステップシーケンサー、ピアノロールエディタ、VSTホストプラグインを搭載したエントリー版です。公式チュートリアル動画も公開されています。
Producer Edition：最もポピュラーなバージョンで、Fruity Editionの機能に加え、全てのオーディオ編集・作成機能を利用できます。
Signature Edition：Producer Editionの機能に加え、Pitcher、Vintage Chorus、Harmless、DirectWave（フルバージョン）、Vocodex、Fruity Video Playerなどのプラグインが追加されています。
All Plugins Edition：Signature Editionの機能に加え、Harmorなどの追加プラグインをすべて使用できる最上位版です。

以前は、これらのVSTプラグイン版も販売されていましたが、現在はFL Studio内でのみ使用可能なプラグインとして提供されています。

販売終了済みのラインナップ

過去には、Express EditionやXXL Editionといったエディションも販売されていましたが、現在は販売終了しています。Express Editionは、ステップシーケンサーのみの基本機能に限定されたバージョンでした。XXL Editionは、Signature BundleからMaximusとHardcoreプラグインを除いた旧製品でした。

公式マスコット「FL chan」

FL Studio 7 (7.4β2)で、「FL chan」という公式マスコットが誕生しました。アニメーションプラグイン「Fruity Dance」のデフォルト画像として使用できます。開発者の一人であるDidier Dambrin氏が初音ミクに影響を受け、フォーラムで提案したことがきっかけです。フォーラムに参加していたUruido氏がラフ画を作成し、Dambrin氏が完成画を発注して、公式マスコットとなりました。

DTM magazineでは、FL Studioの専門コーナーで、イラストレーターによるFL chanのイラストが掲載されました。また、Image-Line社の製品をキャラクター化したイラストも掲載されています。Uruido氏は、Deckadanceのイメージキャラクターも担当しました。

2012年8月には、漫画『ちびミクさん』の2巻に、FL chanを元にしたキャラクター「FLちゃん」がファンシーショップの店主として登場しました。

脚注

[1] Image-Line社公式サイト
[2] 株式会社フックアップ公式サイト

外部リンク

Image-Line社
株式会社フックアップ

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