FMA I.Ae. 33 プルキー II

I.Ae. 33 プルキー II

I.Ae. 33 プルキー IIは、1940年代の終わりにアルゼンチンで開発されたジェット戦闘機です。この機体は、著名な航空技術者クルト・タンクによって設計され、航空工廠（FMA）で製作されました。プルキー IIの名称は、先住民族のマプチェ語で「矢」を意味します。これは当時のアルゼンチン空軍が、多くの期待を寄せていた次世代戦闘機であり、グロスター ミーティア F4の後継機として位置づけられていました。

開発の背景

アルゼンチンは、ナチス体制崩壊後に多くの有能なドイツ人航空科学者を受け入れることで、航空工業の発展を促進しました。中でも、エミール・ドボアチンやフアン・イグナシオ・サン・マルティンなどの技術者が結集し、初期の試作機であるI.Ae. 27 プルキー Iを開発しました。このジェット機はラテンアメリカで初めて設計されたものでしたが、性能が期待を下回り、開発は中止されました。

その後、航空技術研究所は新たな戦闘機の開発を目指し、タンクが率いるチームが参画することとなります。タンクは以前、フォッケウルフ社で航空機設計に従事していましたが、アルゼンチンでのプロジェクトに転身し、自らの設計を進めました。

プルキー IIの設計

タンクは、前のF-183戦闘機の設計要素を取り込んだ新しい戦闘機を作ることを決断し、ロールス・ロイス ニーン IIターボジェットエンジンを搭載したプルキー IIを設計しました。主翼の設計や尾翼の配置は、戦闘機に求められる性能を発揮するために重点が置かれ、特に美しいT字尾翼が特徴的でした。さらに、武装としては20mm機関砲を各側面に設置する計画が立てられました。

テストと評価

初飛行は1950年6月26日に行われ、様々なテストを経て、飛行特性や安定性の問題が明らかになりました。特に横方向の安定性が問題視され、さまざまな改良が施されることとなります。タンク自身がテストを引き継ぎ、機体の失速特性を探求しながら、着陸特性の改善が試みられました。しかし、その後のテスト中には構造的な問題が発生し、悲劇的な墜落事故が起こることとなります。このことは、航空機の量産化をさらに遠のかせる結果となりました。

開発の終焉

1955年、プルキー IIのプロジェクトは政治的な混乱に突入します。ペロン体制が崩壊し、軍事政府が権力を握るとともに、タンクや多くの技術者がアルゼンチンを離れる事態となりました。この状況は、航空機開発計画に深刻な打撃を与えました。1956年には、空軍が仮想的に目指していた60機のプルキー IIの量産計画も撤回されてしまいます。

結論と遺産

プルキー IIは、量産には至りませんでしたが、速やかに失われた技術と挑戦を象徴しています。アルゼンチンの航空産業における進展に寄与したこの機体は、後に航空工業の発展への基礎を築くこととなります。現在もI.Ae. 33の唯一の現存機体は、国立航空博物館に展示され、その歴史を物語っています。プルキー IIのプロジェクトは、技術革新と政治的変動の中でのアルゼンチンの航空歴史において重要な位置を占めています。

もう一度検索