FOREVER MINE/MIDAS TOUCH

山下達郎40作目のシングル「FOREVER MINE ⁄ MIDAS TOUCH」：デジタルレコーディングと楽曲制作の挑戦

2005年1月19日、山下達郎の40枚目のシングル「FOREVER MINE ⁄ MIDAS TOUCH」がリリースされました。このシングルは、映画『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』の主題歌「FOREVER MINE」と、フジテレビ系『金曜エンタテイメント』のオープニングテーマ「MIDAS TOUCH」を両A面として収録した作品です。両楽曲は後に、山下達郎のアルバム『SONORITE』にも収録され、さらに「FOREVER MINE」はオールタイム・ベストアルバム『OPUS 〜ALL TIME BEST 1975-2012〜』にも収録されるなど、彼の代表曲として広く親しまれています。

「FOREVER MINE」：映画『東京タワー』とデジタルレコーディングへの挑戦

「FOREVER MINE」は、映画『東京タワー』の結末を山下達郎が独自の解釈で表現した楽曲です。この曲は、彼にとってすべてのレコーディングをDigidesign Pro Toolsで行った最初の作品という点で大きな意義を持ちます。しかし、Pro Toolsの高い解像度が、音の立体感の表現を難しくする課題をもたらしました。従来のアナログ・レコーダーやSONY PCM-3348では、リバーブやミキシング卓での音量調整によって音が自然に混ざり合うのに対し、Pro Toolsでは、音量を下げても音がにじまず、音同士がぶつかり合うような状態になってしまったのです。そのため、ベースの音を歌声と混ざり合うことを防ぐため最終的に省かれ、リズムマシンとピアノの弾き語り、そして40人のストリングスの演奏という構成になりました。後に山下達郎は、『OPUS』のライナーノーツでこの曲を「不倫の男女が心の中に常に抱えている、死の暗喩についての歌」と説明しています。

「MIDAS TOUCH」：アレンジ変更と新たな才能との出会い

「MIDAS TOUCH」は、当初シャウトで歌うことを想定して制作されましたが、Pro Toolsではイメージ通りのサウンドが得られなかったため、アレンジを全面的に変更。SONYのマイクC-800Gを使用して、カーティス・メイフィールドのような歌い方で再レコーディングされました。この曲には、テナーサックス奏者として山本拓夫が参加しています。山本氏は土岐英史氏の弟子であり、山下達郎は以前から彼の演奏を高く評価していましたが、今回が初めてのレコーディング参加となりました。山下達郎は、山本氏起用の理由について「こういうメロウな曲だと彼のトーンが合うかなって」と語っています。“MIDAS TOUCH”とは、ギリシャ神話に登場するミダース王が持つ、触れたものを黄金に変える能力を指しています。

オリコンチャートでの成功と楽曲情報

「FOREVER MINE ⁄ MIDAS TOUCH」は、山下達郎にとって久々のオリコンシングルチャートTOP10入りを果たしました。このシングルのリリースは、彼の音楽におけるデジタル技術への挑戦と、新たなサウンドの探求を象徴する出来事となりました。楽曲制作における様々な試行錯誤や、新たなミュージシャンとの出会い、そして商業的な成功という側面からも、このシングルは山下達郎のキャリアにおける重要な作品と言えるでしょう。

まとめ

「FOREVER MINE ⁄ MIDAS TOUCH」は、デジタルレコーディング技術への挑戦と、音楽制作における緻密なこだわりが凝縮されたシングルです。映画主題歌と番組テーマ曲という異なる文脈で生まれた2曲が、一つの作品として高い完成度を誇っている点は特筆に値します。この作品を通して、山下達郎の音楽に対する探求心と高い表現力が改めて示されたと言えるでしょう。

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