GNewSense

gNewSenseは、フリーソフトウェア財団の支援を受けて開発されているDebianベースのオペレーティングシステムです。このOSの主な目的は、ユーザーフレンドリーな環境を維持しつつ、プロプライエタリソフトウェア（バイナリブロブなど）を一切排除することにあります。フリーソフトウェア財団は、gNewSenseを完全に自由なソフトウェアのみで構成されたOSとして公式に認めています。

プロプライエタリソフトウェアに対する姿勢

gNewSenseは、プロプライエタリソフトウェアに対して非常に厳格な姿勢を取っています。例えば、プロプライエタリソフトウェアのインストール方法を解説するような文書でさえ、システムから排除されています。

歴史

gNewSenseプロジェクトは、2006年にブライアン・ブラジルとポール・オマリーによって開始されました。当初はUbuntuをベースとしていましたが、バージョン1.0のリリース後、フリーソフトウェア財団からの支援を受けるようになりました。

2年間リリースが途絶えたため、2011年8月8日にDistroWatchはgNewSenseを「休眠中」と分類しました。しかし、2012年9月にはDistroWatchは再び「活動中」として状態を更新し、2013年8月6日にはDebianを直接ベースとした初のバージョンであるgNewSense 3「Parkes」がリリースされました。その後、2021年4月にgNewSenseはプロジェクトが終了しました。

技術的な側面

デフォルトでは、gNewSenseはGNOMEデスクトップ環境を使用しています。ユーザーは、Xディスプレイマネージャやウィンドウマネージャなど、リポジトリからインストール可能な他のデスクトップ環境を選択してカスタマイズすることも可能です。Ubiquityインストーラーを使用することで、Live CD環境からハードディスクへのインストールが可能であり、インストール前にコンピュータを再起動する必要はありません。

標準のシステムツールに加えて、以下のソフトウェアが付属しています。

OpenOffice.org製品一式：オフィススイート
GNOME Web：インターネットブラウザ
Empathy：インスタントメッセンジャー
GIMP：画像編集ツール
* GNUコンパイラコレクション：ソフトウェア開発ツール

インストールには、Live CDを使用できます。CDイメージはダウンロードで入手可能です。

バージョン

gNewSenseには、これまでに4つのメジャーリリースが存在します。

他のディストリビューションとの比較

gNewSenseプロジェクトは、フリーでないソフトウェアのリポジトリを提供せず、フリーでない文書や作品の多くを排除しています。かつてはUbuntuをベースにしていましたが、Ubuntuの「Universe」パッケージリポジトリは無効化されています。

商標問題のため、gNewSense 1.1ではFirefoxが「BurningDog」と名前を変更されました。また、Adobe Flashなどのプロプライエタリなプラグインは提供されていません。gNewSense 2.0ではBurningDogが廃止され、GNOMEのWebブラウザであるEpiphany（後のWeb）がデフォルトのブラウザとなりました。ただし、GNU IceCatをオプションとしてコンパイルし起動することを推奨しています。gNewSense 3.0ではWebがデフォルトのブラウザですが、DebianのIceweaselをプロプライエタリなアドオンへのアクセスを制限したバージョンも提供しています。

Debianもまた、自由ソフトウェアの原則を重視するLinuxディストリビューションです。DebianとgNewSenseはどちらもフリーでないソフトウェアやバイナリブロブを厳格に排除しますが、Debianは非公式リポジトリでプロプライエタリなソフトウェアやファームウェアのバイナリを保守しています。さらに、Debianは必要に応じてプロプライエタリソフトウェアのインストールを提案することがあります。

対照的に、gNewSenseはプロプライエタリソフトウェア、ファームウェア、拡張、プラグインへの依存や提案を一切行いません。gNewSenseのプロジェクトは、プロプライエタリソフトウェアへの便宜を図るようなアクセスを提供することは、自由ソフトウェアソリューションの開発義務を放棄することだと考えています。Debianと同様に、gNewSenseのポリシーでは、変更不可部分のあるGNU Free Documentation Licenseでライセンスされた文書を含むことはできません。GNUプロジェクトがリリースする多くのマニュアルや文書がこれに該当します。

gNewSenseは、当初Ubuntuのフォークでしたが、gNewSense 3.0ではDebianをベースとしています。これは、Debianプロジェクトが自由ソフトウェアと無料アクセスを提供するプロプライエタリソフトウェアを厳密に分離しているためです。gNewSenseに移植されたパッケージ（IceweaselやIcedoveなど）は、プロプライエタリなソフトウェアオプションへの無料アクセスを提供しないように修正されています。

制限

gNewSenseのリポジトリには自由ソフトウェアしか含まれていないため、フリーなファームウェアが存在しないハードウェア（無線ネットワークカードなど）はサポートされません。

2008年5月1日、Mesa 3Dのライセンス問題により、3Dグラフィックスのサポートも一時的に削除されましたが、2009年1月13日以降、問題が解決し、バージョン2.2で3Dグラフィックスのサポートが復活しました。

評価

DistroWatchのジェシー・スミスは、gNewSense 3.0をレビューした際、付属のアプリケーションの多く（OpenOffice.org 3、Debianカーネルからブロブを取り除いたLinuxカーネル、Iceweasel 3.5、GNOME 2.30）が古くなっていると指摘しました。しかし、このディストリビューションは安定性とパフォーマンスが高く、高速で不要なものが含まれていないと評価しています。その反面、インストーラーやパッケージ管理ツールは経験豊富なユーザー向けであり、Linux初心者には学習曲線が険しい可能性があると述べています。また、プロプライエタリソフトウェアがないという特徴は、システムの完全な検査、修正、再配布を可能にする一方、無線ネットワークカードのサポートに制限があるという側面もあると述べています。

フリーソフトウェア財団の創設者であるリチャード・ストールマンは、2010年1月にgNewSenseを使用し始め、2014年4月まで使用を継続していましたが、その後Trisquelに乗り換えています。

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