OpenOffice.org

OpenOffice.orgとは

OpenOffice.org（オープンオフィス・オルグ、通称OpenOffice）は、2011年に開発が終了したオープンソースのオフィススイートとそのプロジェクト名です。元々は商用ソフトウェアであったStarOfficeがベースとなり、サン・マイクロシステムズによってオープンソース化されました。その後、Apache OpenOfficeとLibreOfficeという二つの派生プロジェクトに分かれました。

概要

OpenOffice.orgは、ワープロソフト「Writer」、表計算ソフト「Calc」、プレゼンテーションソフト「Impress」、ベクタードローツール「Draw」、数式エディタ「Math」、データベースソフト「Base」といった複数のアプリケーションで構成されています。標準のファイル形式には、国際標準規格であるオープンドキュメント形式（ODF）が採用されていました。

Microsoft Officeのファイル形式も変換を通じてある程度サポートしていましたが、互換性には注意が必要でした。利用可能なプラットフォームは主にLinux、Microsoft Windows、Solarisでしたが、後にmacOS向けにも開発されました。ライセンスは当初SISSLでしたが、後にLGPLに変更されました。

OpenOffice.orgは無償で配布されていましたが、サン・マイクロシステムズはテンプレートや商用サポートを付加したStarOffice（日本ではStarSuite）も販売していました。

プロジェクトの歴史

1999年、サン・マイクロシステムズは社内利用のためにドイツのStar Divisionを買収。2000年には、StarOfficeのソースコードをベースにOpenOfficeとしてオープンソース化を発表し、プロジェクトが開始されました。

このプロジェクトには、サン・マイクロシステムズのほか、ノベル、IBM、Google、インテル、レッドハットなどが参加しました。

2010年にオラクルがサン・マイクロシステムズを買収し、プロジェクトの管理がオラクルに移管されましたが、2011年にオラクルはOpenOffice.orgの商用サービスを中止し、Apacheソフトウェア財団にプロジェクトの資産を寄贈しました。これにより、ソフトウェアの名称はApache OpenOfficeに変更されました。

一方で、OpenOffice.orgの開発者の一部は、オラクルとの関係やプロジェクト運営に不満を持ち、LibreOfficeを立ち上げました。

OpenOffice.orgの終了とその後

2011年、オラクルはOpenOffice.orgプロジェクトを非営利団体が管理することを望ましいとし、Apacheソフトウェア財団にソースコードの著作権と商標を提供しました。Apacheソフトウェア財団はこれを受け入れ、OpenOffice.orgはApache OpenOfficeとして再出発しました。

しかし、IBMが開発支援から撤退したことで、Apache OpenOfficeの開発は停滞気味です。一方、LibreOfficeは活発な開発が続けられており、実質的なOpenOffice.orgの後継プロジェクトとなっています。

マーケットシェア

OpenOffice.orgは、特に官公庁や自治体など、プロプライエタリな文書形式に依存しないことを目指す組織で採用されました。日本国内の地方公共団体や、海外の中央政府機関での採用事例があります。

日本の採用事例

地方公共団体
兵庫県洲本市、栃木県二宮町、福島県会津若松市（LibreOfficeに移行済み）など
都道府県庁
山形県庁（一時的に全パソコンに導入）
企業
アシスト（LibreOfficeに移行済み）、住友電気工業株式会社（LibreOfficeに移行済み）など

海外の採用事例

シンガポール国防省、フランス経済・財政・産業省、ハンガリー国防省など。

特徴

ライセンス

OpenOffice.orgはオープンソースかつコピーレフトのGNU LGPLで公開されていました。当初はサン・マイクロシステムズ独自のSISSLとLGPLのデュアルライセンスでしたが、後にLGPLに一本化されました。

対応文書ファイル形式

標準ファイル形式はODFです。Microsoft Office形式も変換を通じて読み書き可能でしたが、完全に互換性があるわけではありませんでした。

オープンドキュメント形式（ODF）

OpenOffice.orgは、ISO/IEC 26300で規格化されたODFを標準の文書形式としていました。ODFはXMLで記述されたデータをZIP形式で圧縮したもので、異なるソフトウェア間での相互運用性を目指しています。各国の政府機関でODF形式のファイルが政府調達の条件に加えられる例が増えており、日本でもOpenDocument形式が政府調達の要件になる可能性がありました。

Microsoft Officeファイル形式の対応

Microsoft Office 2003以前のバイナリ形式ファイルはODFに変換することで読み書きが可能でした。Office 2007以降のOOXML形式は読み込みのみに対応していましたが、完全な互換性はなく、書式が欠落する場合がありました。

一太郎ファイル形式の対応

一太郎のjtd形式は、サンがリリースした拡張機能を利用することで読み込みが可能でした。ただし、この拡張機能はWindowsのみの対応でした。

クロスプラットフォーム

Windows、Linux、FreeBSD、Solaris、macOSなど、様々なOSで動作しました。macOSでは、X11環境が必要でしたが、後にネイティブ対応のバージョンもリリースされました。

多国語対応

国際化、地域化に力を入れており、多言語に対応していました。内部はUnicodeで処理されており、日本語環境でも他言語を扱うことができました。

各機能

OpenOffice.orgは統合オフィススイートであり、各機能は独立したソフトではなく、共通の機能も多く見られました。起動時にコマンドライン引数を指定することで、特定の機能を起動できました。

共通の機能

標準ファイル形式：OpenDocument
スタイル機能：文字、段落、箇条書き、ページスタイルなどを自由に設定可能
スペルチェック機能：英単語のスペルチェックと自動修正
数式エディタ「Math」：ワープロや表計算でも利用可能

ワープロ（Writer）

長文の編集に特化したワープロ機能。スタイル編集機能により容易な編集が可能。拡張機能による文法チェッカーも利用可能。原稿用紙印刷にも対応。

多言語対応のため、各言語に特化した機能があります。

欧米語：大文字/小文字変換
アジア諸言語：半角/全角変換、ひらがな/カタカナ変換
日本語：かな漢字変換ソフトでの再変換
中国語：簡体字/繁体字変換
朝鮮語：ハングル/ハンジャ変換

保存形式：ODT、TXT、RTF、HTML、DOC、XMLなど

HTMLエディタ

WYSIWYG HTMLエディタで、画面上でHTMLの作成ができます。ただし、CSSへの対応は低く、本格的なWebサイト制作には不向きです。

表計算（Calc）

表計算機能。行数、列数ともに制限がありましたが、バージョンアップにより拡張されています。関数ウィザードで様々な関数を利用可能。日付の書式は、グレゴリオ暦、タイ仏教暦、日本元号、ヒジュラ暦など、多様な紀年法に対応。Excelとの互換性は高いですが、セルの区切り文字やショートカットキーなどに違いがあります。

データベース（Base）

関係データベース機能。HSQLDBが標準ですが、Oracle Database、MySQL、Microsoft SQL Serverなどにも対応。他のデータベースソフトに比べて、他形式での入出力機能は不十分ですが、ワープロや表計算との連携は密です。

プレゼンテーション（Impress）

プレゼンテーション機能。ウィザードによる簡単作成、配布資料作成機能もあります。OpenOffice.org 3.0から、ImpressとDrawに独自の表機能が追加。

描画（Draw）

図形描画機能。レイアウトの複雑なパンフレット作成にも活用可能。ベクターベースの線画編集や3Dモデル作成にも対応。Adobe Flash形式の出力にも対応。

数式エディタ（Math）

数式エディタ機能。デザインサイエンスのMathTypeとのデータのインポート・エクスポートに対応。MathML 1.01形式での出力も可能。コマンド入力にも対応。数式を画像として挿入することで、動作が重くなるのを防ぐことができる。

チャート

グラフ作成機能。縦棒、横棒、円グラフ、折れ線グラフなど様々なグラフを作成可能。円グラフの表示順序は反時計回り（左回り）が標準です。

マクロ

BASIC、Python、JavaScriptなどを用いたマクロが利用可能。定型業務の自動化や、OpenOffice.orgのファイルに直接アクセス、外部データベースへのアクセスなども可能。APIはVBAとは異なるため、VBAのマクロをそのまま使うことはできない。

拡張機能

様々な拡張機能を利用可能。拡張機能の登録場所も提供。

プロジェクト

OpenOffice.orgには複数のプロジェクトがあり、各プロジェクトが共同で開発していました。

Native Language Confederation：各国語版のOpenOffice.org開発
OpenOffice.org日本語プロジェクト：OpenOffice.orgの日本語翻訳
User Experience：ユーザインターフェースの改善
Renaissance：次期ユーザインターフェースの開発
Extensions：拡張機能の管理
Website：Webサイトの作成

批判

開発者が少なく、閉鎖的なプロジェクトであることが批判されていました。日本語プロジェクトに対する批判もあり、日本語のオフィス文書作成で重要な機能が不足しているという指摘がありました。

派生ソフトウェア

LibreOffice

OpenOffice.orgの開発者コミュニティが立ち上げたプロジェクトで、事実上の後継ソフトウェアです。

Go-OO

OpenOffice.orgに取り込まれる可能性が低い機能拡張を搭載した派生ソフトウェアです。後にLibreOfficeに統合されました。

OpenOffice.org Portable

USBメモリなどに入れて持ち運べるようにしたOpenOffice.orgです。

White Label Office

OpenOffice.orgのバージョン3.3.0のメンテナンスを目的としたプロジェクトです。

その他の派生ソフトウェア

Oracle Open Office、OpenOffice.org Novell Edition、NeoOffice、Lotus Symphonyなど、複数の派生ソフトウェアがあります。

バージョンアップ履歴

（省略）

脚注

（省略）

関連項目

OpenDocument
OpenDocumentをサポートするアプリケーションの一覧
StarSuite
オープンフォーマット
オフィススイートの比較
Lotus Symphony
LibreOffice
Apache OpenOffice

外部リンク

OpenOffice.org（日本語）
OpenOffice.org（英語）

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