GRB 991216

GRB 991216：ベートーヴェンバーストの詳細

1999年12月16日、宇宙の彼方で発生したガンマ線バースト、GRB 991216は、その特異な性質と、天文学における重要な発見のきっかけとなったことで知られています。この現象は、協定世界時16時7分1秒に、NASAのコンプトンガンマ線観測衛星に搭載されたBATSE（Burst and Transient Source Experiment）によって初めて捉えられました。その後、イタリアとオランダが共同運用するベッポサックス衛星もガンマ線を検出し、その存在が確認されました。

観測の経緯

GRB 991216の主なガンマ線放出は20秒間続き、その後数時間から数日の間に、チャンドラX線観測衛星、ハッブル宇宙望遠鏡、MDM天文台によって、BATSEでは特定が難しかった位置が正確に特定されました。この詳細な観測体制は、NASAが1996年に開始したガンマ線バーストの位置特定計画の最初の大きな成果となりました。当時、ガンマ線バーストの観測精度を向上させるための次世代衛星、スウィフトの打ち上げが計画されており、既に稼働していたHETE-2との連携によって、より正確な研究が可能になると期待されていました。GRB 991216の観測成果は、このような観測体制の構築が実現可能であることを実証しました。

ベートーヴェンバーストの愛称

このGRB 991216は、発見日である12月16日が、作曲家ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの誕生日（1770年）と同日であることから、「ベートーヴェンバースト」という愛称で呼ばれるようになりました。当時はガンマ線バーストの発生原理が謎に包まれており、NASAはブラックホールへの連星中性子星の飲み込み、あるいは太陽質量の100倍以上もある大質量星の超新星爆発といった説に加え、「熱狂的なベートーヴェンファン」説も冗談交じりに唱えたほどでした。しかし、その後のチャンドラによる観測で、X線領域の強度グラフから、ガンマ線バーストが大質量星の超新星爆発によって引き起こされる可能性が高いことが示唆されました。

GRB 991216の特徴

GRB 991216の赤方偏移の値は1.022であり、地球から約112億光年という遠方で発生した爆発現象であることが判明しました。それほどの遠距離にもかかわらず、観測された視等級は18.7と非常に明るく、これは1996年9月24日にBATSEが捉えたGRB 960924の2倍の明るさに匹敵します。さらに、スーパーボールバースト（GRB 930131）に次ぐ明るさで、これほどの明るさのガンマ線バーストは4年に一度程度しか観測されないと言われています。その強烈なガンマ線は、BATSEに搭載された8つの検出器全てで捉えられたほどです。

GRB 991216のもう一つの特徴として、メインとなるガンマ線放出のピークが発生する約15秒前に、約3秒間続く弱いパルスの放出が観測されました。この現象の原因は、現在も解明されていません。この前駆現象は、ガンマ線バーストのメカニズムを解明する上で重要な鍵を握ると考えられています。

その他の関連情報

音楽家のAnkit Loveは、ベートーヴェンの交響曲第5番をサンプリングし、『ベートーヴェンバースト』という曲を作曲しました。これは、天文学的な現象が芸術にインスピレーションを与える興味深い例です。

関連項目

* ベートーヴェンバースト (曲)

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