GSG-9

GSG-9: ドイツ連邦警察の対テロ特殊部隊

GSG-9（ゲー・エス・ゲー・ノイン）は、ドイツ連邦警察の一部であり、特に対テロ作戦に特化した特殊部隊です。他のヨーロッパ諸国の類似部隊に比べ、GSG-9はその活動や影響力において特に幅広い認知を得ており、国際的にも評価されています。この部隊は、1972年のミュンヘンオリンピック事件をきっかけに設立されました。その事件は、過激派組織による選手村への襲撃と人質事件によって引き起こされ、当時のドイツ当局の対応の混乱が引き金となりました。

創設の経緯

1972年9月5日に発生したミュンヘンオリンピック事件は、パレスチナの過激派、黒い九月によるイスラエル選手団人質事件でした。この事件を受け、西ドイツは対テロ部隊の必要性を痛感し、BGS（連邦国境警備隊）の指導の下にGSG-9を設立しました。初代指揮官ウルリッヒ・ヴェーゲナー大佐は、イギリス陸軍のSASやイスラエル国防軍のサイェレット・マトカルからの専門的な支援を受けて部隊を整備しました。

その後、部隊名や基礎となる組織が変わっても、GSG-9は地域および国際的な事件に対応する優れた能力を保持し続け、現在でもドイツの安全保障の要となっています。

編成と組織

GSG-9は、州警察の特別出動コマンド（SEK）や刑事警察の機動出動コマンド（MEK）と密接に連携し、国家レベルでの対テロ作戦を実施しています。その編成は、主に3つの戦闘中隊に分かれており、それぞれ特化した任務を持っています。

• - 第一中隊（GSG-9/1）: 人質救出作戦が主な使命であり、狙撃手も配置されています。
• - 第二中隊（GSG-9/2）: 海洋におけるテロ作戦を行う能力を持ち、海軍の訓練を受けています。
• - 第三中隊（GSG-9/3）: 空中からの機動作戦を行うスキルを特化させています。

各隊員は、約10か月の基礎訓練を受け、その後戦闘中隊に配属されることになります。

装備

GSG-9は、設立当初から対テロ任務に特化した高性能武器を採用してきました。初期の装備には、S&W M19などの拳銃やH&K MP5短機関銃がありました。1977年のルフトハンザ航空181便ハイジャック事件では、作戦の成功を導くカギとなったのは、実績のあるMP5の威力でした。その後、装備は進化し、最新のH&K HK416カービンやDSR-1狙撃銃に至るまで、多様な武器を使い分けています。特に、狙撃能力の向上にも力を入れ、.338ラプア・マグナム弾を使用する狙撃銃も適用されています。

活動の歴史

GSG-9は、設立から今日に至るまで数々の重要な作戦を遂行しています。特に1977年の「モガディシュの奇蹟」と称されるルフトハンザ航空181便ハイジャック事件では、わずか5分で全人質を救出するという快挙を成し遂げました。創設以来、GSG-9は1,700件以上の作戦を実施していますが、実際に発砲が行われたのは7回に過ぎないという点が特徴的です。

近年では、2015年のパリ同時多発テロ後にGSG-9の強化が図られ、対テロ部隊の新組織「BFE+」が設立されました。

文化的影響

GSG-9は、ドイツのドラマや漫画に登場するなど、社会的にもその存在感を示しています。特に『GSG-9 対テロ特殊部隊』や、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』などが知られています。

このように、GSG-9は単なる特殊部隊に留まらず、ドイツ国内外における対テロ戦の象徴となっているのです。

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