Gigabeat

東芝 gigabeat シリーズ：デジタルオーディオプレーヤーの歴史

東芝がかつて製造・販売していた携帯型デジタルオーディオプレーヤー「gigabeat」シリーズは、HDDモデルからフラッシュメモリモデルへと進化し、多機能化が進みました。映像分野に強みを持つ東芝らしく、動画再生やワンセグチューナーを内蔵したモデルも登場しましたが、2010年代に市場から撤退しました。ここでは、gigabeatの歴史と各シリーズの特徴を詳細に解説します。

gigabeat の概要

東芝は、小型HDDやフラッシュメモリの開発・製造で実績があり、その技術を活かしてMP3プレーヤー市場に参入しました。初期のHDD記録型モデルから、動画再生、ワンセグ対応モデルへと進化を遂げましたが、残念ながら2010年代には市場から撤退しました。製品のロゴマークは、当時の東芝製ノートパソコン「dynabook」のデザインを踏襲しており、親しみやすい印象を与えていました。型番の「ME」は、先代のSDオーディオプレイヤーから引き継がれたものです。

製品一覧

初代 GIGABEAT

2002年6月22日に発売された初代モデルは、商品名が大文字表記の「GIGABEAT」でした。PCカード型の1.8型HDD「モバイルディスク」を搭載し、バッテリー交換でライブラリを入れ替えられる画期的な仕様でした。18時間連続再生が可能でヘビーユーザーを意識した設計でしたが、本体重量は235gとやや重めでした。モノクロ液晶と青色バックライト、ホログラフィックシートが特徴的でした。対応ファイル形式はMP3、WMA、WAVで、専用アプリケーション「Toshiba Audio Application」で暗号化されたファイルのみ再生可能でした。Windows 98からXPまでをサポートしていましたが、本体OSにLinuxを採用していたため、ファイル名やID3タグの扱いには注意が必要でした。発売当初は注目を集めたものの、競合製品の登場により、次第に人気を失いました。

G シリーズ

2003年8月にG20が発売され、着脱式モバイルディスクから内蔵HDDへと変更されました。12.7mmの薄さをアピールするティザーキャンペーンを展開し、コンパクトさを追求しました。その後、8mm厚の40GB HDDを搭載したG40も追加されました。転送には「Toshiba Audio Application」、OSはLinux、CPUはARM7を引き続き採用しました。正方形に近い筐体とブルーLED照明が特徴で、モノクロ液晶のネガポジ反転表示も可能でした。小型軽量化によりユーザー層の拡大を図りましたが、デザインが地味であるとの声もありました。しかし、完成度の高さと音質の良さから、現在でも愛好家が多く存在します。ただし、長期間の使用による振動や衝撃でHDD認識不良などのトラブルが報告されています。

F シリーズ

2004年11月に発売されたFシリーズは、「プラスタッチ」と呼ばれる十字型タッチセンサーを採用しました。縦長の形状で、画面表示を切り替えることで横方向でも使用可能でした。2.2型QVGAカラー液晶を搭載し、JPEG画像の表示も可能でした。音楽再生アプリは「gigabeat room」に変更され、ジャケット画像転送などの機能が追加されました。Gシリーズ同様、HDDケーブルの接触不良やバッテリーコネクタの接触不良によるトラブルが報告されています。

X シリーズ

2005年9月に登場したXシリーズは、Fシリーズをさらに小型化し、液晶ディスプレイを拡大、表示色数を増やしました。2.4型QVGAカラー液晶を搭載し、JPEG画像の閲覧機能も向上しました。ファイル転送には「gigabeat room」を使用し、PC接続時に自動起動するようになりました。ボディカラーは高級感を打ち出した塗装が特徴的でした。

P シリーズ

2005年12月に発売されたPシリーズは、アクセサリー感覚のコンパクトなボディが特徴です。フラッシュメモリを内蔵し、1.1型カラー有機EL画面を搭載しました。FMラジオ録音、ボイスレコーディング、ラインイン録音にも対応しています。Sシリーズと同じくプラスボタンを採用しました。一部モデルを除き、生産を終了しています。

S シリーズ

2006年4月に登場したSシリーズは、動画再生に対応し、FMチューナー内蔵モデルも存在しました。OSにはWindows Mobile Portable Media Centerを採用し、WMA Lossless、WMVの再生も可能でした。操作は十字型の「プラスボタン」に変わり、ファイル転送はWindows Media Player 10のみに対応しました。旧シリーズで使用されていた「gigabeat room」は廃止されました。ユーザー有志により、非公式ながらWindows 2000やWindows 98でも使えるドライバが開発されました。パソコン接続時にHDDが初期化される不具合が報告されています。

V シリーズ

2006年6月に登場したVシリーズは、ポータブルオーディオプレーヤーとして初めてワンセグ視聴に対応しました。録画機能も備え、3.5型QVGA液晶、スピーカーを搭載しました。デザインも大きく変更され、縦長から横長になりました。バッテリーの持ちも特徴で、長時間再生が可能でした。ワンセグ機能の改善版であるV30E・V60E、アメリカ仕様のV30K、さらに大型液晶やステレオスピーカーを搭載したV401・V801、内蔵メモリとSDカードを搭載したV41・V81など、多岐にわたるモデルが発売されました。

U シリーズ

2007年3月に発売されたUシリーズは、フラッシュメモリを内蔵し、有機EL画面、ラインイン録音、FMトランスミッターを搭載しました。高音質化が図られ、対応OSもWindows 2000、Meまで拡大されました。アルミボディのU102、U202、日本の伝統色を揃えたU103など、デザイン面も強化されました。

T シリーズ

2007年9月に発売されたTシリーズは、フラッシュメモリを内蔵し、OSにPMCを採用しました。Sシリーズの後継機種にあたります。無線LAN機能を搭載したモデルもあり、ポッドキャストのダウンロードに対応しました。2008年12月31日に日付関連のバグが発生し、一時的に使用不能になるトラブルがありました。