H&K G28

H&K G28：精密射撃を追求したドイツ生まれの狙撃銃

H&K G28は、ドイツの銃器メーカー、ヘッケラー&コッホ（H&K）社が開発した半自動式の狙撃銃です。21世紀に入り、ドイツ連邦軍が使用していたH&K G3自動小銃の狙撃銃型を更新するために開発されました。遠距離射撃能力と高い精度、そして実戦での運用を考慮した設計が特徴です。

開発の背景

ドイツ連邦軍は、長年使用してきたH&K G3の狙撃銃型（G3A3ZF及びG3SG/1）の後継となる選抜射手ライフル（マークスマンライフル）を模索していました。2010年3月、選定と実射試験が開始され、当初はH&K HK417に狙撃照準眼鏡を搭載した「G27」が候補に挙がりました。G27は携行性や操作性に優れていたものの、アフガニスタン戦争での交戦距離が想定よりも遠く、HK417では遠距離射撃時の精度が不足していると判断されました。

そこで、HK417の民間向けモデルであるMR308に、精度の高い競技用銃身を使用したものが評価され、これをベースにH&K社が改良を加えたものが、アメリカ向け民生モデル「DMR762」として開発されました。DMR762は、連邦軍の要求を満たす性能を示しましたが、本体重量が5.8kgと重く、狙撃照準装置などを装着すると9kgを超えるため、歩兵小隊の装備としては重すぎるという問題がありました。

そこで、H&K社は、より狙撃に特化した「Standard」と、軽量化を重視した「Patrol/Scout」の2タイプを製造し、前線でのパーツ交換を可能にするという解決策を打ち出しました。この改修を経て、DMR762は2011年8月に「G28」として制式採用され、同年12月よりドイツ連邦軍によって実戦投入されました。

G28の特徴

G28は、ベースとなったHK416/417の耐久性と堅牢さを継承しつつ、1.5MOAという高い精度を誇ります。アッパーレシーバーにはスチールを採用し、約75%の部品がHK417と互換性があります。銃身はフリーフローティング構造で、2段階可変式のガスレギュレーターを備え、銃口部には大型の消炎器が装着されています。また、ライフリング周期は1:12inchに変更されています。

ハンドガードはフリーフローティング式で、上下左右4面とアッパーレシーバー上面にレールシステムを搭載し、光学照準器以外にも折畳式の照星と照門を装備。ハンドガードはロングタイプとショートタイプの2種類があり、工具で交換可能です。

作動方式はショートストロークピストン式で、セミオートのみです。セレクターは両用式で、ボルトキャッチは大型化され、トリガーガードは湾曲した形状になっています。銃床は伸縮式で、細かく調整可能です。弾倉は半透明プラスチック製で、10発または20発のものが使用できます。

標準装備として光学照準器が搭載され、シュミット＆ベンダー社製のPMII3-20x50またはPMII1-8x24が選択可能です。その他、レーザーポインターやドットサイト、暗視装置などのオプションも装備できます。

各型と派生型

G28

ベースモデル

G28E2

ドイツ連邦軍制式型の基本型。PMII3-20x50スコープを搭載し、可変型の銃床を採用

G28E3

ドイツ連邦軍制式型の軽量型。PMII1-8x24スコープのみを搭載し、ハンドガードがショートタイプに。銃床はHK417と同じものを使用

G28E

アメリカ陸軍のCSASS計画参加のために開発された輸出向け軽量型。ハンドガードはKeyMod式で、サプレッサーが装着されています。ロアレシーバーはHK417A2／MR308A3に準じたものに変更されています。

M110A1 CSASS

G28の軽量バージョンで、米陸軍のコンパクト半自動狙撃システムとして採用されました。アルミニウム製のアッパーレシーバーを使用し、M-LOKレールハンドガードやサプレッサー、調整可能な折りたたみ式銃床などを備えます。

M110A1 SDMR

分隊指定射手ライフル（SDMR）として歩兵分隊に配備されるモデル。よりシンプルな望遠鏡サイトを装備し、サプレッサーが標準装備です。

MR308/MR762

H&K HK417の民間向けモデル。MR308はヨーロッパ市場向け、MR762はアメリカ市場向け。MR762A1は仕様変更後のモデルです。

DMR762

MR308から派生した法執行機関向けモデル。PMII3-20x50スコープを搭載。

使用国

ドイツ連邦軍のほか、フランス軍やドイツ連邦警察などの法執行機関、そしてアメリカ軍が採用しています。

登場作品

ゲームや映画にも登場しており、その性能の高さから人気を集めています。

ゲーム

『ゴーストリコン ワイルドランズ』：「G28」の名称で登場
『Escape From Tarkov』：「HK G28」の名称で登場
『コール オブ デューティ ゴースト』：「MR-28」の名称で登場（G28E3がモデル）
『ドールズフロントライン』：「Gr G28」の名称で登場

映画

* 『トゥモロー・ウォー』：「HK G28」の名称で登場

まとめ

H&K G28は、高い精度と信頼性、そして実戦での運用を考慮した設計が特徴の狙撃銃です。ドイツ連邦軍での採用を皮切りに、各国の軍や法執行機関に導入が進められており、今後もその活躍が期待されます。

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