HD 108236

HD 108236

HD 108236は、地球からおよそ200光年という宇宙的なスケールでは比較的近い距離にある恒星です。この天体は、宇宙望遠鏡TESS（Transiting Exoplanet Survey Satellite）による観測プログラムにおいて重要なターゲットの一つとされ、TOI-1233という識別名でも呼ばれています。TOIという符号は「TESS Objects of Interest」の略であり、TESSのデータから惑星の存在が期待される、あるいは確認された天体に対して付けられます。

恒星そのものの特徴

恒星HD 108236は、スペクトル分類ではG5V型に位置づけられています。これは、私たちの太陽が属するG型主系列星の一種であり、太陽（G2V型）と多くの基本的な特性を共有していることを示します。ただし、物理的なサイズに関しては、太陽より一回り小さく、その半径はおよそ太陽の0.88倍と推定されています。また、この恒星の年齢は約58億年とされており、これは太陽の推定年齢である約46億年と比較して、やや進んだ進化段階にあることを示唆しています。

囲む惑星系

HD 108236の周囲には、現在までに5つの太陽系外惑星が存在することが確認されており、これがこの恒星が特に注目される理由の一つです。これらの惑星の発見には、主にトランジット法という観測手法が用いられました。トランジット法とは、惑星が恒星と観測者の間を通過する際に、恒星の明るさがわずかに低下する現象を捉えることで、惑星の存在とその軌道周期などを明らかにする方法です。

最初に惑星の存在が明らかになったのは2020年4月でした。NASAの系外惑星探査衛星TESSが取得した高精度な測光データを用いた分析により、HD 108236の周りを公転するb、c、d、eと名付けられた4つの惑星の存在が確認されました。

その後、追加の観測データやより詳細な分析が進められる中で、これら4つの惑星に加えて、5番目の惑星であるfの存在も発見されました。惑星fは、先行して見つかった他の惑星たちとは異なる軌道を持ち、およそ30日の公転周期で主星の周りを回っていることが判明しています。

惑星の性質

HD 108236系で確認された5つの惑星は、それぞれ異なる特徴を持っています。恒星から最も近い軌道にある惑星bは、いわゆる「スーパーアース」と呼ばれる種類の惑星であると考えられています。スーパーアースは、地球よりも質量や半径が大きいものの、ガス惑星ではなく主に岩石で構成されていると推測される地球型惑星に分類されます。

一方、惑星c、d、e、そして惑星fは、「ミニ・ネプチューン」と呼ばれるタイプの惑星とされています。ミニ・ネプチューンは、海王星のように水素やヘリウムなどの厚い大気層を持つガス惑星に似た構造を持つと考えられますが、サイズや質量は海王星よりも小さい天体です。

このように、HD 108236の惑星系は、スーパーアースとミニ・ネプチューンが混在して存在する多惑星系であり、多様なタイプの惑星がどのように形成され、進化していくのかを理解する上で、非常に興味深い研究対象を提供しています。これらの発見は、2020年の系外惑星研究における重要な成果の一つとして記録されています。

関連項目

• - 2020年に発見された太陽系外惑星の一覧

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