Higher Self

氷室京介『Higher Self』

『Higher Self』は、氷室京介が1991年4月6日にリリースした3枚目のオリジナル・アルバムです。前作『NEO FASCIO』から約1年7ヶ月ぶりとなる本作は、作詞に松井五郎、作曲に氷室京介、編曲に氷室と西平彰、SP≒EEDが共同で担当し、プロデュースは西平彰が手掛けました。

背景

前作リリース後、氷室は「NEO FASCIO TOUR」を開催。BOØWYのライブアルバム再リリースも重なり、ソロ活動は更なる盛り上がりを見せました。その後、追加公演や東京ドーム公演も成功させ、5万6000人を動員。また、ドラマ主題歌やラジオ番組への出演など、多岐にわたる活動を展開しました。

制作

本作のレコーディングは、都内の複数のスタジオで行われました。前年のツアーに帯同したSP≒EEDとの共同制作となり、氷室は「バンドならではの楽しさ、共同作業の楽しさ」を再認識したと語っています。メンバーとのコミュニケーションを密に取りながら、バンド的なアプローチで試行錯誤を重ねたそうです。

アルバム制作は、難航した楽曲を後回しにし、完成形が見えそうな楽曲から進めるという手法が取られました。当初はシングル曲を中心に制作する予定でしたが、バンドサウンドを軸としたアルバム制作へと方向転換。氷室がギター1本で制作したデモテープを元に、西平彰がアレンジを担当しました。

音楽性と歌詞

アルバムタイトルの「Higher Self」は、「大いなる自己、自分の精神性の高み」を意味します。氷室は収録曲「CRIME OF LOVE」について、自身のメロディセンスと永井利光のドラミングを絶賛していますが、ライブでの反応やインターネット上の意見は賛否両論あるようです。

歌詞に関しては、BOØWY時代の作風に回帰しつつ、より等身大の氷室京介を表現することを意識。松井五郎との間で、「高みにいる氷室京介」ではなく、「同視線上にいるオレを表現していこうか」という話し合いが行われました。その結果、本作は全体的にラブソングが多い構成となっています。

楽曲について

アルバムには、「CRIME OF LOVE」や「BLACK-LIST」、「VELVET ROSE」など、様々な楽曲が収録されています。氷室は、それぞれの楽曲について、SP≒EEDとの共同作業によって生まれた新たな解釈や、自身のボーカリストとしての側面が強く出た作品であると語っています。

特に「STORMY NIGHT」では、歌詞が自身の精神状態と重なる部分が多く、何度も歌入れを行ったそうです。また、「MOON」は「月から見た地球」をテーマにした楽曲であり、氷室は「肌の色や宗教の違い、性別や貧富でいがみ合っているのは月からでは見えない。とても美しい星に見えるだろう」と語っています。

リリースと評価

『Higher Self』は、オリコンアルバムチャートで1位を獲得し、売り上げ枚数は40万枚を超え、日本レコード協会からプラチナ認定を受けました。

音楽情報サイト『CDジャーナル』では、バックバンドの演奏を評価する一方で、歌詞やサウンドを「人工的で寒い」と酷評しています。しかし、本作は氷室京介の音楽キャリアにおいて重要な作品の一つであり、多くのファンに愛されています。

ツアー

本作を受けてのコンサートツアー「OVER SOUL MATRIX TOUR 1991」は、39都市全45公演を実施し、約15万人を動員しました。ツアーファイナルは、有明コロシアムでの4日間連続公演でした。

まとめ

『Higher Self』は、氷室京介がSP≒EEDとの共同作業を通じて、バンドサウンドへの原点回帰を果たした作品です。歌詞や音楽性には賛否両論ありますが、氷室京介の新たな一面を垣間見ることができるアルバムと言えるでしょう。

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