Hs 117 (ミサイル)

Hs 117：第二次世界大戦末期にドイツが開発した幻の地対空ミサイル

Hs 117は、第二次世界大戦中にドイツが開発した地対空ミサイルです。当初は航空省に拒否されたものの、ドイツ本土への空爆激化を受けて開発が始まりましたが、終戦により実戦投入されることはありませんでした。

開発の経緯

1941年、ヘルベルト A. ワーグナー博士は、Hs 293対艦ミサイルの開発経験を活かし、対空ミサイル「シュメッターリング（Schmetterling、蝶の意）」をドイツ航空省に提案しました。しかし、当時は対空兵器の必要性が低いと判断され、この提案は却下されます。ところが1943年になると、連合国軍によるドイツ本土への空爆が激化し、状況は一変。ドイツ航空省は考えを改め、ヘンシェル社と契約してミサイルの開発・製造を開始しました。

設計と構造

Hs 117は、有翼の液体燃料ロケットを基本構造としています。機体中央には後退角の付いた主翼、尾部には十字型の尾翼が備えられています。機体の上下には、固体燃料ロケットブースターが2基装着されており、これによって初期加速を得る仕組みです。ブースターのノズルは外側（上下）に偏向しており、発射時には簡易な発射台から斜め上に向けて打ち上げられました。

開発の遅延と計画中止

Hs 117の開発は難航し、59回の実験のうち34回が失敗に終わりました。ようやく1944年6月に実験が成功したものの、量産体制への移行は遅れ、1945年11月には月産3,000基を予定していたものの、1945年1月に量産型プロトタイプが完成した段階で、2月6日に親衛隊大将ハンス・カムラーによってプロジェクトは中止されました。

報復兵器3号？

ドイツ大使館在武官であったギュンター・ホーゼルは、報復兵器3号（V3）こと15センチ高圧ポンプ砲ではなくHs117Dであるという説を唱えています。

派生型

Hs 117Hは、空対空ミサイル型として開発されました。Do 217、Ju 188、Ju 388などの航空機から発射され、発射母機から5,000m上空の敵機を攻撃するように設計されています。Hs 117Hにはブースターは装備されていません。

スペック

種類：地対空ミサイル
製造企業：ヘンシェル
初期加速ロケット：固体燃料ロケット
主ロケット：BMW 109-558 液体燃料ロケット
噴射剤：SV-Stoff（硝酸）、Tonka
全長：4.2m
直径：0.35m
翼幅：2m
発射重量：420kg（ブースター170kgを除く）
速度：658～1008km/h
弾頭：25kg爆薬
射程：32,000m
射高：10,700m
信管：近接信管
誘導システム：手動指令照準線一致誘導方式（目視誘導、無線誘導）
運用国：ドイツ、ソビエト連邦（戦後の防空システム開発のためR-105のテストで使用）

関連項目

エンツィアン
ライントホター
ヴァッサーファル
V2ロケット
アグリガット (ロケット)
奮龍
* ロケット・ミサイル技術の年表

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