I-153 (航空機)

I-153「チャイカ」

I-153（ロシア語: И-153 «Чайка»）は、ソ連時代に開発された複葉戦闘機で、特にその優れた設計から「究極の複葉戦闘機」と称されています。ポリカールポフ設計局によって設計され、多くの戦闘機において「戦闘機の王様」と呼ばれるほどの名声を誇りました。I-153は長い間、ソ連労農赤軍航空隊の主力機として、ノモンハン事件やフィンランドとの冬戦争、さらに第二次世界大戦初期まで使用されました。

機体の概要

I-153は、スペイン内戦におけるI-15の戦訓を基にした改良型機であるI-15bisを更に発展させたものです。1938年秋には、1000馬力の空冷式M-25Vエンジンを搭載し初飛行を成功させ、その後さらに改良を加えたM-62エンジン（一部は1100馬力のM-63エンジン搭載）に置き換えられました。

機体デザインでは、空気抵抗を減少させるために引き込み式主脚が採用され、当時としては相当な性能を持ったエンジンが搭載されています。特に、排気はカウリングに開けた穴から行われ、デザイン面でも注目されました。上翼は改良型のI-15bisで見られたスタイルから、初期のモデルに戻る形で「ガルウィング」と呼ばれる独特の形状が採用されています。

武装面では、4丁のShKAS機関銃が機首に搭載されており、下部2丁はエンジンのシリンダー間を通す形で発砲が可能です。ノモンハン事件においてはI-15bisが使用された後、1939年7月にはI-153が参戦し、日本の九七式戦闘機との交戦に臨みました。

戦歴と運用

1939年に勃発したフィンランドとの冬戦争においては、I-16と共にソ連の主力戦闘機として活躍しました。後には独ソ戦の際に捕獲された機体がフィンランド軍に移され、彼らの戦闘機として使われました。I-153は、并行して開発されていたI-16とともに長期間第一線で運用されましたが、戦況において多くのI-153が地上で失われました。

また、I-153は戦闘機としてだけでなく、爆弾やロケット弾を搭載して対地攻撃機としても運用され、撃墜王と呼ばれるパイロットも複数誕生しました。しかし、1941年には既に古くなり、戦闘機部隊ではYak-1やLaGG-3への移行が進み、シュトゥルモヴィーク部隊でもIl-2などの新しい機体が使用されるようになりました。

生産と特徴

I-153はモスクワの第1工場で最終的に3437機が生産されました。この機体はその名に恥じない性能を持っていましたが、複葉機の時代は終わりを迎えていました。そのため、I-153は格闘戦能力には優れていたものの、速度面では新しい単葉機Bf 109などに対抗することが難しかったのです。 機体の発展型となるI-180では、M-85エンジンを搭載し、高度5000mで速度486km/hを達成、さらに強力なエンジンを搭載したI-180Sでは585km/hを記録しましたが、これらは試作に留まってしまいました。

要目

• - 全幅: 10.00 m
• - 全長: 6.17 m
• - 全高: 2.80 m
• - 翼面積: 22.14 m²
• - 空虚重量: 1375 kg
• - 離陸重量: 1765 kg
• - 最大離陸重量: 2009 kg
• - エンジン: 空冷9気筒 M-62（出力: 800 hp / 597 kW、離昇出力: 1000 hp / 746 kW）
• - 最大速度: 高度5000mで425 km/h、海面高度で366 km/h
• - 上昇率: 5000 mまでの時間は5.5分
• - 実用上昇限度: 11000 m
• - 航続距離: 560 km
• - 武装: 7.62mm ShKAS機銃×4、82mmロケット弾×6または100kg爆弾
• - 自動防漏タンクや操縦手背面の防弾板を標準装備

I-153は複葉戦闘機としての特異な性能を持ちながら、時代の変化によりその運用が制限される運命にありました。

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