JLG/自画像

映画『JLG／自画像』：ゴダール自身の映画へのまなざし

ジャン＝リュック・ゴダール監督による1995年公開作品『JLG／自画像』（フランス語題：JLG/JLG - autoportrait de décembre）は、ドキュメンタリーとドラマの要素を融合させた、独特の自己探求映画です。晩年のゴダールが自身の創作活動や映画史への想いを、レマン湖畔のアトリエを拠点に、独特の語り口で表現しています。

映画の舞台と登場人物

本作は、ゴダールがアトリエを構えるスイスのレマン湖畔の町、ロールで撮影されました。湖の対岸を指さしながら「フランスの王国」と語るシーンは、彼の映画人生、そしてフランス映画の歴史への複雑な想いを象徴的に示しています。

主要人物としてゴダール自身が登場し、彼を取り巻く人々との交流が描かれています。編集助手志望の盲目の女性、家政婦、森の老女など、個性的な登場人物たちが、ゴダールの周囲の現実世界を映し出しています。さらに、アンドレ・S・ラバルト、ルイ・セガン、ベルナール・エイゼンシッツという3人の映画批評家が、映画局査察官役として出演。彼らとの対話は、ゴダールの映画に対する考え方や、批評家との複雑な関係性を示唆しています。

映画史へのオマージュと自己言及

映画の中でゴダールは、「ロベルト・ロッセリーニ、ジャック・ロジエ、ボリス・バルネット、ニコラス・レイ」という、彼に影響を与えた巨匠たちの名前を挙げ、「自ら映画となる」と語ります。彼らの作品からの音声引用は、ゴダールの映画史への深い理解と敬意、そして自身の作品との関連性を示しています。これは、ゴダールが自身の映画制作を、単なる作品制作ではなく、映画史という大きな流れの中で位置づけていることを示す重要なポイントです。

配給と公開

フランスでの配給は、老舗映画会社ゴーモンが行いましたが、クレジットには「レオン・ゴーモンの継承者たち」という表記が用いられました。これは、映画史への敬意と、同時に既存の映画産業への距離感を示す、ゴダールらしい演出といえます。

日本での公開は2002年で、『フレディ・ビュアシュへの手紙』との同時上映という形で実現しました。これは、ゴダールの作品群を理解する上で、貴重な機会となりました。

まとめ

『JLG／自画像』は、単なる自伝映画ではなく、映画作家ゴダール自身の複雑な内面世界と、彼を取り巻く環境、そして映画史への深い考察が凝縮された作品です。ドキュメンタリーとドラマの要素が巧みに融合し、観る者に強い印象を与えます。レマン湖畔の美しい風景と、ゴダールの独特の語り口が織りなす、独特の雰囲気は、多くの映画ファンを魅了し続けています。晩年のゴダール作品に興味のある方、そして映画史に興味のある方にとって、必見の作品と言えるでしょう。

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