JPEG XL

JPEG XL：次世代画像フォーマット

JPEG XLは、非可逆圧縮と可逆圧縮の両方をサポートする、画期的なロイヤリティフリーのラスター画像ファイルフォーマットです。既存のフォーマットを上回る圧縮効率と多様な機能を備え、JPEGの後継フォーマットとして期待されています。

名称の由来

JPEG XLという名称は、Joint Photographic Experts Group（JPEG）、X（JPEG XT、JPEG XR、JPEG XSなど、2000年以降のJPEG標準の名称に含まれる）、そしてL（Long-term、長期）を組み合わせたものです。「L」は、このフォーマットがJPEGの後継として長期にわたって使用されることを意図していることを示しています。

開発の歴史

JPEG XLの開発は2017年に開始されました。ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 1（JPEG）が技術公募を行い、GoogleのPIKとCloudinaryのFUIFという2つの提案を統合する形で、JPEG XLの仕様が策定されました。2020年末にはビットストリームが非公式に確定し、2021年と2022年にはファイルフォーマットとコア符号化システムがそれぞれ正式に標準化されました。

JPEG XLの特長

JPEG XLは、従来のJPEGをはるかに凌駕する多くの利点を備えています。

高圧縮率: 従来のJPEGと比べて最大60%の圧縮率向上を実現。HEIC、AVIF、WebP、JPEG 2000などの既存フォーマットを上回る圧縮性能を誇ります。
高解像度対応: 最大1テラピクセルの超高解像度画像に対応。
広色域とHDR対応: 広色域の色空間やハイダイナミックレンジ（HDR）画像をサポート。Rec. 2100などの色空間もシームレスに処理できます。
多様なチャンネルサポート: 最大4099チャンネルに対応。RGB、CMYKに加え、アルファチャンネル、深度、熱データなどを保存できます。
アニメーション対応: アニメーション画像にも対応しています。
可逆圧縮と非可逆圧縮の両方に対応: 可逆圧縮により、画像データのロスレス圧縮が可能です。また、従来のJPEG画像を効率的に可逆再圧縮することもできます。
プログレッシブデコード: 画像の読み込み速度を向上させます。
オープンソース: オープンソースのリファレンス実装(libjxl)が提供されており、誰でも利用できます。
ロイヤリティフリー: 使用にライセンス料は必要ありません。

エンコード方式

JPEG XLは、主に2つのエンコードモードを使用します。

VarDCTモード: 従来のJPEGと同じDCTアルゴリズムをベースとしますが、ブロックサイズは可変で、より柔軟な圧縮を実現します。主に非可逆圧縮に使用されます。
* Modularモード: 可逆圧縮を主に担当し、非可逆圧縮やニアロスレス圧縮にも使用されます。様々な追加チャンネルのエンコードにも対応します。

これらのモードを組み合わせることで、様々な画像データに対して最適な圧縮を行うことができます。また、JPEG XLは画像の特徴を分析し、最適な圧縮方法を選択する高度なアルゴリズムも備えています。

産業界のサポートと採用

JPEG XLは、Cloudinary、Facebook、Adobe、Intel、VESAなどの多くの企業から支持を得ており、様々なアプリケーションでの採用が進んでいます。一方で、Google Chromeなど主要ブラウザでのサポートは遅れていますが、サードパーティ製の拡張機能などにより、利用できる環境は着実に広がっています。

ソフトウェアとライブラリ

JPEG XLのエンコード/デコードを行うための様々なソフトウェアやライブラリが開発されています。代表的なものとしては、リファレンス実装であるlibjxlや、J40、libjxl-tinyなどがあります。これらのライブラリは、様々なプログラミング言語で利用可能です。

標準化状況と競合規格

JPEG XLは、AVIF、HEIC、WebPなど、他の画像フォーマットと競合していますが、その圧縮性能や多様な機能により、今後ますます普及していくことが期待されます。

まとめ

JPEG XLは、高い圧縮率、広色域対応、高解像度対応、可逆圧縮対応など、多くの利点を備えた次世代の画像ファイルフォーマットです。オープンソースでロイヤリティフリーであることも大きなメリットです。今後、Webブラウザや様々なアプリケーションでのサポートが拡大し、画像フォーマットの主流となる可能性を秘めています。

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