JR九州キハ183系気動車

キハ183系1000番台：変遷を辿る観光列車の軌跡

キハ183系1000番台は、1988年にJR九州が製造した特急用気動車です。国鉄時代のキハ183系500番台をベースに設計されましたが、車体構造が大きく異なるため、別区分として扱われています。当初は、長崎オランダ村へのアクセス列車「オランダ村特急」として運行を開始し、その後、様々な路線や用途に合わせて改造を重ね、現在は豊肥本線の観光列車「あそぼーい!」として活躍しています。

開発の背景と特徴

「オランダ村特急」は、電化区間・非電化区間を問わず運行できる気動車として計画されました。しかし、運行区間の一部が電車特急と並走するため、485系電車との協調運転が可能な設計となっています。先頭車には双頭連結器が装備され、電車との連結に対応していました。

車体

外観は、展望室を設けた特徴的なデザインです。これは、国鉄165系「パノラマエクスプレスアルプス」の影響を受けています。車体各部の基本構造は、ベースとなったN183系と共通です。オランダ国旗をモチーフにした赤・白・青のトリコロールカラーが特徴的でした。

走行装置

駆動系は、JR北海道のN183系を踏襲しています。機関の種類によって、一軸駆動のDT53Qまたは二軸駆動のDT54Q台車を装備し、付随台車はTR239Qです。ダイナミックブレーキも標準装備されています。

形式

当初は3両編成で、後に中間車が増備され4両編成となりました。

キハ183形1000番台: 先頭車。電源装置は搭載されていません。
キハ182形1000番台: 中間車。1両は電源装置を搭載し、カフェ室と区分室を備えています。もう1両は電源装置を持たず、代わりに大出力エンジンを搭載し、子供向けのプレイランドを設置していました。

改造の歴史

キハ183系1000番台は、その生涯で数多くの改造を受けています。

1. 「ゆふいんの森II世」: 「オランダ村特急」廃止後、久大本線の特急「ゆふいんの森」に転用される際、内外装を大幅に改造。メタリックグリーンに金帯の塗装に変更され、内装もリニューアルされました。
2. 「シーボルト」: 大村線の特急「シーボルト」への転用では、「オランダ村特急」時代の塗装に戻され、側面にロゴとエンブレムが追加されました。
3. 「ゆふDX」: 久大本線の特急「ゆふDX」への転用では、展望室にパノラマシートが設置され、内装も一新されました。また、走行機関の換装も行われています。
4. 「あそぼーい!」: 豊肥本線の特急「あそぼーい!」への転用では、黒と白のツートンカラーに塗装され、マスコットキャラクター「くろちゃん」のイラストが内外装に散りばめられました。子供向けの設備が充実した「ファミリー車両」も登場しています。

「あそぼーい！」への改造詳細

「あそぼーい!」への改造では、「みんなが鉄道の旅を楽しめる特急列車」をコンセプトに、徹底的なリニューアルが施されました。

外観: 黒と白のツートンカラーに、黄色の帯を配した塗装。101匹の「くろちゃん」が描かれています。
内装: 全車両フローリング仕上げ。各車両ごとに異なる色の座席や、フリースペースが設けられています。2号車にはセミコンパートメント席も設置。
3号車（ファミリー車両）: 子供向けに特化した内装。
窓側に子供用座席を設けた「白いくろちゃんシート」。
子供向けのビュッフェ「くろカフェ」。
木のプールや和室、図書室を備えた「くろクラブ」。

運用の変遷

竹下気動車区に配置後、「オランダ村特急」としてデビュー。その後、「ゆふいんの森II世」、「シーボルト」、「ゆふDX」と転用を重ね、2011年からは「あそぼーい!」として運行されています。

現在

現在は熊本車両センターに所属し、豊肥本線の観光列車「あそぼーい!」として、熊本 - 別府間を結んでいます。数々の改造を経て、その姿を変えながらも、九州の観光輸送に貢献しています。

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