パノラマエクスプレスアルプス

パノラマエクスプレスアルプス：山岳展望を追求したジョイフルトレイン

パノラマエクスプレスアルプスは、1986年から2001年まで日本国有[[鉄道]]（国鉄）および東日本旅客[[鉄道]]（JR東日本）が保有していたジョイフルトレインです。特徴は、なんといっても前面展望が可能な展望車を連結していたこと。雄大な山岳風景を車窓から満喫できる車両として、多くの鉄道ファンに愛されました。

開発の背景

当時、国鉄東京西鉄道管理局（西局）のメイン路線である中央本線や大糸線は、雄大な山岳風景を楽しめる路線として知られていました。そこで、この美しい景色を最大限に活かすため、「展望」をテーマとした車両の開発が計画されました。大井工場（現在の東京総合車両センター）との共同開発の結果、1987年3月にパノラマエクスプレスアルプスは運行を開始しました。改造費用は約3億4,000万円。

2001年には富士急行に売却され、特急用車両2000系「フジサン特急」として活躍。2016年2月7日まで運用された後、惜しまれつつも廃車となりました。

車両の特徴

パノラマエクスプレスアルプスは、全車両が165系電車からの改造車です。先頭車は、非貫通型のクロ165形と貫通型のクモロ165形、中間車はモロ164形800番台で構成されました。新宿寄りの3両は方向転換され、6両編成時には両端が展望車となるように工夫されています。また、全車両がグリーン車に格上げされました。

コンセプト

従来のジョイフルトレインは団体専用列車としての利用が主でしたが、パノラマエクスプレスアルプスは個人利用客向けの臨時列車としての運用も考慮されました。そのため、団体・個人双方のニーズに対応できる仕様となっています。また、和風・欧風といった特定のテーマに偏らず、あくまで「展望電車」としての魅力を追求し、幅広い年齢層に親しまれる車両を目指しました。

デザイン

外装は、雪をイメージした白（クリーム10号）をベースに、サンシャインイエローとサミットオレンジの帯を配し、アルプスの山々が朝日に照らされる光景（モルゲンロート）を表現しています。展望室直後の運転席側では帯の順序を反転させ、斜め上に上げることで躍動感を演出。これは東京西鉄道管理局の「西」の文字をイメージしたものです。車掌台側では帯の上下を反転させています。

改造内容

車内は、通路にダウンライトを設置し、間接照明を採用。各車両には40インチの大型テレビモニターとレーザーカラオケ機器が設置されました。走行機器は基本的に165系のものを流用していますが、183系との連結を考慮し、低圧制御回路用KE70形ジャンパ連結器の増設などの工事も行われました。クロ165形は、車体形状が他の車両と若干異なります。その他、積雪地帯での運行を考慮した耐雪ブレーキや、信越本線横川 - 軽井沢間の通過対策も施されました。

1998年には、展望室のサンルーフ閉鎖、補助電源のSIV化、トイレの汚物処理システムの変更などの小改造も実施されています。

展望室

パノラマエクスプレスアルプスの最大の特徴は、なんといっても前面展望が可能な展望室です。乗務員室よりも前方に客席を設けたのは、国鉄では初の試みでした。展望室の窓には曲面ガラスを使用し、ピラーを極力細くすることで、眺望を最大限に確保しています。大型ワイパーとデフロスタも備え、悪天候時でもクリアな視界を保ちます。座席は前向きに固定され、背もたれを低くすることで、後方からの視界も確保しました。

展望室後部には半室の乗務員室が設けられ、運転時間や機器設置の関係から完全な2階建て構造にはなっていません。助士席部分は通路となっており、乗務員扉と車掌用機器は通常カバーで覆われています。展望室最前部には、衝突事故を考慮した油圧式ダンパーが2基設置されています。

ラウンジ

展望車両の展望室後方には、側面からの風景を楽しめるラウンジが設けられました。幅1.7メートル、高さ1.05メートルという当時としては最大級の窓が2つ設置され、ソファーが窓に向けて配置されています。ソファーの反対側にはミニテーブルとスタッキングチェアが配され、フリースペースとしても利用可能でした。

客室

客室中央には500mm幅の通路が確保され、座席部分は床の高さを170mm高くすることで、眺望性を向上させています。リクライニングシートは1350mmのシートピッチで配置され、最大50度までリクライニング可能。座席は窓側に15度回転させることができ、通路側からも景色を楽しめるように配慮されていました。

個室

モロ164形のパンタグラフ下には、6人用の個室が設置されました。この個室は、添乗員室や多目的室として使用され、ヒーターと扇風機が設置されていましたが、冷房はありませんでした。

運用

改造後は三鷹電車区（現在の三鷹車両センター）に配置され、原宿駅宮廷ホームでの展示を経て、1987年3月から営業運転を開始。団体専用列車を中心に運用されました。1990年には「三鷹車掌区開設20周年記念号」として、武蔵野線経由で高崎まで運転されたこともあります。1993年には山梨県の観光キャンペーン「しんせん・やまなし号」として、167系「メルヘン車」と連結して運転されました。1997年には、廃止となる信越本線横川 - 軽井沢間を最後に通過したジョイフルトレインとなりました。

富士急行譲渡後

老朽化のため2001年9月にJR東日本での運用を終了した後、富士急行に譲渡され2000系に形式変更。「フジサン特急」として活躍しましたが、2016年2月7日にラストランを迎え、その歴史に幕を閉じました。

パノラマエクスプレスアルプスは、その革新的なデザインと、山岳展望へのこだわりで、鉄道史に名を残すジョイフルトレインと言えるでしょう。

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