JR貨物EH800形電気機関車

EH800形電気機関車：新幹線と在来線を繋ぐ力

EH800形電気機関車は、JR貨物が2012年から導入した、日本初の交流複電圧式電気機関車です。この機関車は、北海道[[新幹線]]開業に伴い、新幹線と在来線が共用する区間での貨物輸送を円滑に行うために開発されました。従来のEH500形をベースに、新幹線区間での走行に必要な機器を搭載しており、その技術力とデザインは鉄道ファンから高い注目を集めています。

開発の背景

北海道[[新幹線]]の開業により、海峡線の一部区間が新幹線との共用区間となりました。この区間では、架線電圧が交流20kVから25kVへ、保安装置がATC-LからDS-ATCへと変更されたため、従来のEH500形やED79形電気機関車は運行できなくなりました。そこで、JR貨物は新たに複電圧仕様のEH800形を開発し、この課題を克服しました。EH800形は、交流20kVと25kVの両方に対応できるため、新幹線区間と在来線区間の両方で活躍できるのが特徴です。

車両の特徴

EH800形は、2車体永久連結方式のH形機関車で、EH500形を基に設計されています。車体寸法はEH500形に準じており、全長約25mの箱型デザインです。車体塗装は赤色を基調とし、側面に銀と白のラインが配され、スピード感と本州と北海道を結ぶイメージを表現しています。また、青函トンネル内の高湿度による結露対策として、主[[電動機]]と主変換装置は個別の送風機で冷却され、床下機器は防雪カバーで覆われています。

運転室には液晶式表示装置が設置され、速度計は電子式に変更されています。これにより、運転士はより正確かつ効率的に機関車の状態を把握できます。

主要機器

EH800形は、交流20kVまたは25kVの電源を主変圧器を通して主変換装置に送り、交流誘導電動機を駆動します。主変圧器は外鉄形送油風冷式で、各車に1基ずつ計2基搭載されています。この変圧器は交流20kVと25kVの両方に対応するために新規開発されたもので、三次巻線には山形[[新幹線]]や秋田新幹線で採用されている三次電源タップ切替方式が用いられています。これにより、デッドセクション通過時の電圧変動を抑えることが可能です。

主変換装置はEH500形のものをベースに25kVに対応したもので、1C2M構成で電動機を制御しています。主[[電動機]]はかご形三相誘導[[電動機]]で、強制風冷方式で冷却されます。集電装置はシングルアーム型パンタグラフで、走行中は2エンド側からの集電を基本としています。制動方式は回生ブレーキ併用電気指令式自動空気ブレーキを採用しており、回生ブレーキは停止と抑速に使用されます。

保安装置と無線

EH800形は、在来線用のATS-SF・Ps・PFと新幹線用のDS-ATCの両方を搭載しています。DS-ATC用のトランスポンダ車上子は車間の中間引張装置下部に取り付けられています。また、運転台には列車番号入力機能が追加され、共用区間と在来線用の2つのTE装置の押しボタンが設置されています。無線装置は在来線用のCタイプ無線と津軽海峡線用の青函Bタイプ無線を搭載しています。

リモートモニタリングサービス

2019年からは、EH800形にリモートモニタリングサービスが導入されています。このシステムは、機関車の状態を常時遠隔で監視し、データを蓄積・分析することで、事故原因の解析や機器の故障予測を可能にします。このサービスは、東芝インフラシステムズが開発したもので、EH800形に初めて本格導入されました。これにより、安全運行と安定輸送の向上に貢献しています。

運用状況と歴史

EH800形は、2011年から東芝とJR貨物による共同開発が始まり、2012年に試作機が完成しました。2014年から量産が開始され、全車が五稜郭機関区に配置されています。当初は、海峡線での設備検査に供され、その後、ED79形の運用を代走する形で営業運転を開始しました。

2016年には、全廃されたED79形に代わって団体臨時列車の牽引も行いましたが、わずかな期間で旅客列車の牽引は終了しました。また、2015年には、青函トンネル通過時に故障が発生し、その原因がボルトの締め付け不足であったことが判明しました。大規模検査は大宮車両所で行われるため、入出場の際はEH500形に牽引される形で回送されます。

2018年には、京都鉄道博物館で特別展示が行われ、関西地区で初めてEH800形が展示されました。この展示では、トワイライトエクスプレスのヘッドマークが掲げられ、多くの鉄道ファンを魅了しました。

EH800形は、新幹線と在来線の両方で活躍できる複電圧式電気機関車として、日本の貨物輸送に貢献しています。その技術力とデザインは、鉄道技術の進歩を象徴する存在として、今後も多くの注目を集めることでしょう。

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