J/K/N級駆逐艦

J/K/N級駆逐艦：イギリス海軍の革新的な駆逐艦

J/K/N級駆逐艦は、イギリス海軍が第二次世界大戦前に建造した駆逐艦の艦級です。これらの艦は、従来の駆逐艦の系譜を受け継ぎつつも、設計に大幅な刷新が加えられました。1936年度計画のJ級、1937年度計画のK級、そして1939年度計画のN級として、順次改正されながら計24隻が建造されました。

開発の背景

イギリス海軍は、1924年から駆逐艦の建造を再開し、第一次世界大戦の戦訓と新たな技術を取り入れ、アマゾンとアンバスケイドを試作艦として建造しました。その後、A級からI級まで79隻が量産されました。1935年度には、トライバル級も建造されましたが、これは軽巡洋艦の役割を担う大型駆逐艦であり、通常の駆逐艦とは区別されていました。1936年の構想では、攻撃部隊（在来型駆逐艦）と防御部隊（トライバル級）が並行して配備されることになり、その結果として本級が建造されることになりました。

設計の特徴

本級の設計は、1933年に海軍本部が発出した書簡に大きな影響を受けています。この書簡では、従来の駆逐艦の前甲板への波の打ち上げと、後甲板の艤装品の密集が作業効率の低下を招いていると指摘されました。これを踏まえ、本級では主ボイラーの容量を拡張し、缶数を1基減らして単煙突の艦型としました。これにより、後甲板の有効面積が増大し、敵潜水艦に対する誤認効果も期待されました。しかし、缶室が重なった配置は、被弾時に両方が浸水するリスクも生みました。また、艦首のフレアが強くなったことで、荒天時の波を被る欠点も抱えることになりました。

船体構造も改正され、従来の横肋骨方式から、艦首尾部分のみ横肋骨、他は縦肋骨構造とされました。これにより、船体強度が増し、鋼材重量が減少しました。設計上の自由度も高まりましたが、構造が複雑化し、建造費の高騰を招きました。溶接も導入されています。ボイラーの容量拡張や出力強化がなされたものの、形式は従来通りで、アドミラルティ式3胴型水管ボイラーとパーソンズ式オール・ギヤード・タービンが搭載されました。また、機力操縦方式の砲塔のために、停泊用ディーゼル発電機が2基搭載され、主発電機も強化されました。

J級で導入された設計・建造手法は、以後の艦級でも踏襲されました。また、第二次世界大戦勃発に伴う戦時急造艦であるO級からCr級までの駆逐艦では、本級の基本設計が採用されています。

装備

艦砲としては、トライバル級と同じく45口径12cm連装砲が搭載されました。これは対空射撃にも対応可能な平射砲で、2門が1つの砲鞍に取り付けられ、電動油圧式の機力操縦方式を採用しました。当初、艦首砲塔を1基に減らす案がありましたが、夜戦時の星弾発射を考慮し、2基が装備されました。また、初期には艦尾方向に死角がありましたが、後に改修されました。近距離対空兵器としては、39口径40mm4連装機銃と62口径12.7mm4連装機銃が搭載されました。

水雷兵器も重視され、21インチ5連装魚雷発射管が2基装備されました。トライバル級が砲装重視だったのに対し、J・K級は水雷戦も重視する設計でした。

戦時改修

開戦当初、45口径12cm砲の最大仰角40度では急降下爆撃に対応できないことが判明し、対空兵器としては不十分とされました。そのため、後部魚雷発射管と引き換えに、45口径10.2cm単装高角砲が搭載されました。しかし、この高角砲は射撃指揮を受けておらず、有効性は限定的でした。39口径40mm機銃も近接防空火力としては不十分とされ、70口径20mm機銃が増備されました。また、レーダーの装備も進められ、早期警戒用、目標捕捉用の各種レーダーが搭載されました。大戦末期まで残存したジャーヴィスとジャベリンは、ラティスマストに改修されました。N級では、これらの改修を初期段階から適用し、爆雷搭載数も増加しました。

各級の特徴

• - J級駆逐艦: 戦争初期から投入され、多くの艦が戦没しました。
• - K級駆逐艦: J級と同様に多くの作戦に参加し、多数が戦没しました。
• - N級駆逐艦: 全艦が就役前に外国海軍に貸与され、オーストラリア海軍、オランダ海軍、ポーランド海軍で運用されました。戦没艦はネスター1隻のみでしたが、貸与された艦は返還後に解体されたり、外国海軍に譲渡されたりしました。

まとめ

J/K/N級駆逐艦は、イギリス海軍の駆逐艦設計において、重要な転換点となった艦級です。設計の刷新、戦時改修、そして実戦での経験を通じて、イギリス海軍の駆逐艦の発展に大きく貢献しました。これらの艦は、第二次世界大戦において重要な役割を果たし、その設計思想は後の艦艇にも受け継がれています。

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