KDE Software Compilation 4

KDE Software Compilation 4 (KDE SC 4)とは

KDE Software Compilation 4（KDE SC 4）は、KDE Software Compilation（KDE SC）という名称で知られる唯一のシリーズです。2008年1月に最初のリリースが行われ、2014年11月に4.14.3が最終リリースとなりました。このシリーズは、K Desktop Environment 3の後継として登場しました。

KDE SC 4の後、KDE SCを構成していたソフトウェアは、基本的なフレームワークライブラリであるKDE Frameworks、デスクトップ環境であるKDE Plasma 5、そしてアプリケーションであるKDE Applicationsへと分割されました。

メジャーリリース（4.x）は半年ごと、マイナーバグ修正リリース（4.x.y）は毎月という頻度でリリースされていました。

KDE SC 4の主な特徴

このシリーズでは、KDE Platformのコアコンポーネントが大幅に更新され、特にQt 4への移行が重要な変更点でした。新しいマルチメディアAPIであるPhonon、デバイス統合フレームワークであるSolid、そして新しいスタイルガイドとデフォルトアイコンセットであるOxygenが採用されました。また、デスクトップウィジェットに対応した新しい統合デスクトップとパネルユーザーインターフェースであるPlasmaにより、K Desktop Environment 3で別々だったコンポーネントが統合されました。

KDEプラットフォーム4の重要な目標の一つは、KDEアプリケーションの異なるOS間でのポータビリティを向上させることでした。これは、Qt 4への移行によって、Microsoft WindowsやMac OS Xといった非X11ベースのプラットフォームへの対応が容易になったことで実現されました。

KDE Software Compilationのバージョン4.0から4.3は、単に「KDE 4」として知られていました。この改称は、KDEの開発範囲が拡大したことを反映するためのKDEプロジェクトのリブランディングの一環でした。

大幅な変更点

以下に、KDE Software Compilation 4における大幅な変更点をまとめました。

全般

Qt 4系への移行により、KDE 4はKDE 3と比較してメモリ使用量が削減され、高速化が期待されました。KDEライブラリ自体も効率化されました。しかし、テストの結果、KDE 4.4はデフォルト状態のUbuntuシステムにおいて、他のデスクトップ環境と比較してメモリ使用量が最も多いことが明らかになりました。

Qt 4はMac OS XとWindows向けにLGPLで利用可能であり、これらのプラットフォーム上でKDE 4を実行することが可能です。両プラットフォームへの移植は初期段階にありましたが、2010年8月現在、Mac OS X上のKDE Software Compilation 4はベータ段階、Windows版は最終段階ではなかったため、日常使用には適していませんでした。

アプリケーションの動作を全プラットフォームでほぼ同一にするため、移植では機種依存コードの利用を可能な限り少なくする努力が払われました。Summer of Code 2007の期間中には、アプリケーションの起動時間を短縮するため、KDE 4で使用するアイコンキャッシュが作成され、特にKfindなどのアプリケーションの起動時間が大幅に短縮されました。

ExtragearのアプリケーションやKOfficeモジュールも、KDE 4とQt 4の新機能により大幅な改善がなされました。ただし、それぞれのリリーススケジュールが異なるため、最初のKDE 4のリリース時にすべてが同時に入手できたわけではありません。Amarok、K3b、digiKam、KWord、Kritaなどがその例です。

外観

ユーザーにとって最も顕著な変更点は、Oxygenプロジェクトが提供した新しいアイコン、テーマ、サウンドです。これらは、以前のKDEのカートゥーン風なデザインからの大きな転換を示し、よりリアルなスタイルが採用されました。

Oxygenプロジェクトは、freedesktop.org上でアイコン命名仕様書とアイコンテーマ仕様書を作成し、アプリケーション間の一貫性を保つことを目指しました。コミュニティの協力を得て、KDE 4の外観が改善され、代替のアイコンセットや壁紙コンテストの入賞作品が取り込まれました。また、より標準化されたレイアウトのための新しいヒューマンインターフェースガイドラインも導入されました。

Plasmaは主要なデスクトップユーザーインターフェースを提供し、デスクトップ描画やウィジェットエンジンなど、KDEのコアアプリケーションを大幅に書き直しました。Plasmaにより、より細かくカスタマイズできるデスクトップと汎用的なウィジェットが実現しました。

KDEのウィンドウマネージャーであるKWinは、Compizのような合成効果を提供するようになりました。

開発

PhononはKDE 4におけるマルチメディアAPIの名称です。これは、UnixライクOSで利用可能な様々なマルチメディアフレームワークを抽象化し、単一のAPIを通じてアクセスできるようにするラッパーとして機能します。これにより、KDE 4に安定したAPIを提供し、単一のマルチメディアフレームワークに依存しないようにしました。Phonon APIを使用するアプリケーションは、システム設定で使用するバックエンドを変更するだけで、マルチメディアフレームワークをシームレスに切り替えることができます。

SolidはKDE 4のハードウェアAPIです。Solid自体はハードウェアを管理せず、既存のソリューションへのアクセスを単一のAPIを通じて可能にする点で、Phononと同様の機能を持っています。Solidは現在、HAL、NetworkManager、そしてBlueZを使用していますが、一部または全部を置き換えることができ、Solidを利用するアプリケーションが柔軟でポータブルになるように設計されています。

ThreadWeaverは、アプリケーションがマルチコアプロセッサーを活用できるようになるプログラミングライブラリで、kdelibsに収録されています。

KrossはKDE 4用の新しいスクリプティングフレームワークです。Kross自体はスクリプト言語ではありませんが、開発者が他のスクリプト言語への対応を簡単に追加できるように設計されています。新しいスクリプト言語はKross用プラグインを作成することで追加でき、Krossを使用するすべてのアプリケーションでその恩恵を受けることができます。

DecibelはTelepathyベースのコミュニケーションフレームワークで、KDE 4.2のKopeteで完全に使用される予定でしたが、延期されました。StrigiはKDE 4用のデフォルトの検索ツールで、速度と依存性の少なさから選定されました。StrigiとSoprano、RDFストレージフレームワーク、そしてNEPOMUK仕様といった他のソフトウェアとの連携によって、KDE 4におけるセマンティックデスクトップの始まりが提供される予定です。ユーザーはDolphinを通じてファイルにタグ付けすることができ、これによりStrigiはより正確な検索インデックスを作成することができます。

KDE 4は、ビルドシステムにCMakeを採用しました。KDEの以前のバージョンはUnixシステム専用であったためautotoolsを採用していましたが、WindowsなどのOS上でビルドするために新しいビルドシステムが必要になりました。CMakeの採用により、ビルドプロセスが大幅に簡略化され、以前のautotoolsシステムよりも高速にコンパイルできるようになりました。

DXSは、アプリケーションがインターネットからデータをダウンロードし、ワンクリックでインストールできるようにするウェブサービスです。以前はGHNS（Get Hot New Stuff）と呼ばれていましたが、現在はfreedesktop.orgに取り込まれています。DXSはKDE 3系で使用されていましたが、KDE 4での使用のために拡張されました。

Akonadiは、KDE 4用の新しいPIMフレームワークです。以前は別々だったKDEのPIMコンポーネント群を統合したもので、データと検索機能を提供するサーバーとして機能します。連絡先の状況を更新することもできます。これにより、1つのアプリケーションが連絡先情報を変更すると、他のすべてのアプリケーションに即座に変更が通知されます。

参考文献

The KDE website
KDE Documentation
KDE Localization
KDE Bug Tracking System
KDE-Apps, KDE and Qt software repository
KDE-Look
KDE on Windows Initiative
KDE on Mac OS X

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