LICENSE (長渕剛のアルバム)

長渕剛10作目のオリジナルアルバム『LICENSE』：故郷と家族への想いを綴った、普遍的な魅力を持つ名盤

1987年 8月5日、日本の音楽シーンに新たな金字塔が打ち立てられました。長渕剛の10枚目のオリジナルアルバム『LICENSE』のリリースです。前作『STAY DREAM』から約9ヶ月という短いスパンでの発表となり、作詞・作曲、そしてプロデュースは全て長渕剛自身の手によるもの。本作は、単なる音楽作品という枠を超え、長渕剛の音楽人生、そして彼を取り巻く環境、そして内面を深く反映した、一つの到達点と言える作品となりました。

制作背景：故郷と家族、そして30歳の決意

『STAY DREAM』発表後、長渕剛は全国ツアーを敢行。その中で、彼は自身の原点である故郷鹿児島、そして家族への深い愛情を見つめ直します。その経験が、本作『LICENSE』の制作に大きな影響を与えました。アルバムタイトル曲『LICENSE』は、30歳にして取得したばかりの運転免許証を手に、羽田空港へ両親を迎えに行く彼の姿を淡々と描いた、感動的な1曲です。この曲は、長渕剛の故郷への深い愛情、そして両親への感謝の気持ちがストレートに表現されており、多くのリスナーの共感を呼びました。

音楽活動以外にも、長渕剛は1986年にテレビドラマ『親子ゲーム』に出演、同作で共演した志穂美悦子と再び共演した映画『男はつらいよ幸福の青い鳥』にも出演するなど、多方面で活躍を見せていました。そして、前作『STAY DREAM』をさらにスケールアップさせたテレビドラマ『親子ジグザグ』の主題歌として書き下ろされた「ろくなもんじゃねえ」は、本作にも収録され、シングルとしてリリースされるやいなや大きなヒットを記録しました。

録音：わずか2週間のレコーディングと、世界的エンジニアとの出会い

全楽曲は、瀬尾一三との共同アレンジで製作されました。ドラマ撮影の合間を縫って行われたレコーディングは、わずか2週間で完了。そのスピード感も、このアルバムが持つ独特のエネルギーを感じさせる一因と言えるでしょう。本作から、笛吹利明と矢島賢という二人のギタリストが本格的に長渕剛のレコーディングに参加するようになり、楽曲に新たな深みと広がりを与えました。さらに、ニューヨークのマスターディスクにて、ビースティ・ボーイズやニルヴァーナといった世界的アーティストの作品も手掛けたハウィー・ウェインバーグによるマスタリングが行われたことも、このアルバムのクオリティの高さを示す証となっています。

音楽性：シンプルなフォークロックと、多様な音楽的要素

前作の弾き語り中心のアコースティックサウンドから一転、バンドサウンドを主体としながらも、楽器数を抑えたシンプルなフォークロックに仕上がっています。しかしながら、中にはドラムスを加えたロックナンバーやレゲエ調の曲なども含まれており、その音楽性の幅広さも魅力の一つ。複数の音楽誌では、このアルバムについて「バブル景気絶頂期の反戦歌」や「ドキュメンタリーフィルムのような作品」といった、非常に高い評価が与えられています。特に、R&Bを思わせるボーカルが印象的な「He・la・He・la」や、長渕剛の幼少期の記憶と現在が交錯する「LICENSE」は、リスナーに強い印象を与え、長らく愛され続ける名曲となっています。

リリースとプロモーション：大ヒットと栄誉

1987年 8月5日、レコード、カセットテープ、CDの3形態でリリースされた『LICENSE』は、オリコンチャートで1位を獲得し、日本レコード大賞アルバム大賞を受賞するなど、商業的にも大きな成功を収めました。シングル「ろくなもんじゃねえ」のヒットも後押しし、『ザ・ベストテン』や『輝く!日本レコード大賞』への出演など、精力的なプロモーション活動も行われました。また、2006年には24ビット・デジタルリマスター版がリリースされ、現在でも高い人気を誇っています。

アートワークとツアー：細部へのこだわりと新たなステージへ

アルバムのアートワークにも、長渕剛のこだわりが見られます。ライナーノーツが復活し、脚本家の黒土三男氏が執筆を担当。このアルバムを機に始まったコンサートツアー「LIVE'87 LICENSE」では、バックバンドを伴った演奏が披露され、後の長渕剛のライブ活動に大きな影響を与えました。ツアーの様子はライブビデオとしてリリースされ、ギタリストの笛吹利明氏は、このツアー以降、長渕剛のツアーに深く関わることになります。

批評：時代を超えて高く評価される作品

音楽誌や文芸誌では、『LICENSE』について、長渕剛のギターテクニックや表現力、そして歌詞の深さなどについて、多くの肯定的な評価が与えられています。「時代や時勢に流されることなく、自身の歌を貫いた」という点も高く評価されており、多くの批評家やリスナーから絶賛されています。

収録曲：多様な楽曲群

『LICENSE』には、東京での生活、故郷への想いや家族への愛情、人間関係の葛藤など、長渕剛の幅広い感情が反映された楽曲が収録されています。各曲は、それぞれの持つテーマやメッセージ性により、聴く者を深い感動へと誘います。これらの楽曲は、長渕剛の音楽における重要な作品であり、彼のキャリアを語る上で欠かせないものとなっています。

まとめ：時代を超えて愛される名盤

『LICENSE』は、単なるアルバムという枠を超え、長渕剛というアーティストの軌跡、そして彼の故郷や家族、そして時代に対する深い愛情と葛藤が凝縮された、まさに時代を超えて愛され続ける名作です。その音楽性、歌詞、そして収録されている楽曲一つ一つは、長渕剛というアーティストの真髄を伝えるものとなっています。

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