LIVING LEGEND

聖飢魔IIの最終教典『LIVING LEGEND』：ヘヴィメタルのレジェンド、その幕切れ

1999年、日本のヘヴィメタルシーンに衝撃が走った。聖飢魔II、その活動に終止符が打たれることとなったのだ。1985年の地球デビュー時に1999年の地球征服完了と同時に活動を終了すると宣言していた聖飢魔II。しかし、活動期間の延長は、メンバー間、そしてスタッフ間での協議を経て決定された。1997年のアルバム『NEWS』発表後のツアーを経て、1999年12月31日の活動終了という結論に至ったのである。

解散発表後、2枚のベストアルバムがリリースされた後、聖飢魔IIの最終オリジナルアルバムとして世に送り出されたのが『LIVING LEGEND』である。このアルバムは、10ヶ月にも及ぶ制作期間を経て、魔暦元年（1999年）10月21日にリリースされた。作詞はデーモン小暮閣下とルーク篁III世、作曲は小暮閣下、篁III世、エース清水、そしてプロデュースは聖飢魔IIと怪人マツザキ様の共同作業という、まさに聖飢魔IIの総力を結集した作品と言えるだろう。

レコーディングは、メンバーの満足度が高かった『NEWS』と同じ体制で行われ、エンジニアには内田孝弘氏が参加。ヘヴィメタルをベースとしながらも、楽曲によってはラップやプログレッシブ・ロックといった新たな要素も取り入れられている。この挑戦的な姿勢は、聖飢魔IIの音楽性をさらに多角的に見せている。オリコンアルバムチャートでは最高位14位を記録した。

アルバムからのシングルカットとして、『極楽とんぼのとび蹴りゴッデス』のオープニングテーマ「20世紀狂詩曲」がリリースされた他、「死の協奏曲（コンチェルト）」は文部省の麻薬覚せい剤乱用防止キャンペーンのCMソングとして使用された。

アルバム制作の背景：世紀末計画と最後のツアー

1998年には、前作『MOVE』がリリース。同年に開始された「ふるさと総・世紀末計画」では、47都道府県を回るツアーと、CM出演という異色の企画が展開された。富士フイルム「写ルンです」のCMに稲垣吾郎氏と共に全員出演するなど、話題を集めた。

この計画によって聖飢魔IIは、新たなファン層を獲得するとともに、かつてのファンにも改めてその存在を印象付けることに成功した。この活動は、バンドの解散へのカウントダウンを進める中で、精力的な活動の証しと言えるだろう。

レコーディング期間中は、ベストアルバムへのリメイク楽曲制作や、小教典「蠟人形の館 '99」のビデオ撮影なども行われた。このビデオのリメイクについては、スタッフ側の提案にデーモン小暮閣下が賛同したという。

信者（ファン）の集いでは、これまで1人1会場のみの参加だったのが、解散を前に複数会場への参加が許可されるなど、異例な措置が取られた。それでもすべての会場は満員となり、聖飢魔IIへの変わらぬ熱狂を示した。

録音と制作：ヘヴィメタルへのこだわりとタイトル選定の苦悩

アルバム制作は1998年11月から始まり、約10ヶ月に及んだ。メンバーからの「ヘヴィメタルの教典を作ろう」という強い意志が、作品の方向性を決定づけた。

タイトル選定においては、「ミレニアム」や「コーダ」といった候補もあったが、他のミュージシャンとの重複などを考慮し、最終的に「LIVING LEGEND」に決定した。清水氏はこのタイトルを気に入り、「だって、リヴィング・ルームにホンダのレジェンドが置いてあるんだよ（笑）」とコメントしている。

音楽性：ヘヴィメタルを軸としたバラエティ豊かな楽曲たち

当初は、様々なジャンルの楽曲を収録する案もあったが、最終的にはヘヴィメタル中心の作品となった。「最後だから聖飢魔IIの使命をまっとうしよう」という意見が、制作の方向性を決定づけたと語られている。しかし、そのヘヴィメタルも、聖飢魔IIらしい独特の解釈とアレンジが施されている。

各メンバーはそれぞれの個性を発揮し、ヘヴィメタルを土台としながらも、多様な音楽性を融合させている。例えば、「SILENCE OR VIOLENCE?」はルーク篁III世による確信犯的なヘヴィメタル、「GLORIA GLORIA」はサザンロックを思わせるゆったりとしたビートなど、楽曲によって様々な表情を見せている。

アルバムには、小暮閣下の英語詞への長年の希望が込められた「ROCK'N RENAISSANCE」や、複雑なギターソロが聴ける「LOVE ≒defence of your complex」など、バラエティに富んだ楽曲が収録されている。

楽曲解説：個々の楽曲の魅力

アルバム収録の楽曲は、メンバーのこだわりと、聖飢魔IIの集大成としての意気込みが感じられるものばかりである。

「HEAVY METAL IS DEAD」:サビの部分は何度も書き直され、篁III世のアイデアによるシャウトや清水氏のギターソロが光る。

「SILENCE OR VIOLENCE?」:篁III世が確信犯的に作ったヘヴィメタル。小暮閣下は「ねちっこさ」を強調しない歌い方を意識した。

「GLORIA GLORIA」:サザンロック風のゆったりとしたビートが特徴。篁III世のギターソロは当初アルヴィン・リー風だったが、演奏の負担を考慮しボトルネック奏法に変更された。

「戦慄のドナドナ」:松元浩一侍従によるタイトル案が採用された。Bメロの掛け合いが重要なポイントとなっている。

「20世紀狂詩曲（大教典編）」:小教典バージョンとは異なり、小暮閣下と篁III世、小暮閣下と清水氏によるボーカルが聴ける。

「THIS WORLD IS HELL」:小暮閣下による重厚でオドロオドロとした雰囲気の楽曲。途中には早口の語りパートが挿入されている。

「LOVE ≒defence of your complex」:清水氏によるギターリフが基調。聖飢魔IIでは初となる清水氏のタッピング奏法が聴ける。

「死の協奏曲（コンチェルト）」:冒頭のピアノ演奏は、タイトル決定後に追加された。小暮閣下は、本作で最初に歌入れを行った楽曲としている。

「FROM HERE TO ETERNITY」:清水氏による泣きの入った楽曲。ドラムスは途中でドラムンベースのような状態になる。

「CENTURY OF THE RAISING ARMS」:比較的早い段階で制作された楽曲。小暮閣下は前作の影響が強いと述べている。

「ROCK'N RENAISSANCE」:小暮閣下と篁III世の共作。小暮閣下はかねてからの希望であった英語詞で歌っている。

「REVOLUTION HAS COME」:ヘヴィメタルをテーマとした楽曲。篁III世のこだわりが感じられる。

「GO AHEAD!」:篁III世による大作。間奏部分は一晩で制作された。小暮閣下は聖飢魔IIの真面目な部分を表す楽曲としている。

リリースと評価：最後の教典への反響

『LIVING LEGEND』は、魔暦元年（1999年）10月21日にリリースされた。帯には「最終、大教典。」というキャッチコピーが記され、ブックレットの最後には「地獄で逢おう」という言葉が添えられている。

音楽情報サイト『CDジャーナル』では、サウンド面や小暮閣下の歌唱力を高く評価している。

2015年には、Blu-spec CD2仕様でデジタル・リマスター盤が再リリースされている。

LIVING LEGEND TOUR：最後のミサ

『LIVING LEGEND』を携えた聖飢魔II最後のツアー「LIVING LEGEND TOUR」は、当初10公演の予定だったが、予想を上回るチケット販売状況を受け、25公演に拡大された。

ツアーファイナルの「FINAL 3DAYS」では、ゲスト出演やTHE SATAN ALL STARSとしての演奏など、様々な企画が行われた。最終日の12月31日23時59分59秒、聖飢魔IIは煙の中に消えていった。

まとめ：永遠のレジェンド

『LIVING LEGEND』は、単なるアルバムではなく、聖飢魔IIというバンドの歴史、そしてメンバーの想いが凝縮された、まさにレジェンドの名に相応しい作品であると言えるだろう。彼らの音楽は、これからも多くのファンに受け継がれていくことだろう。

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