LSD (薬物)

LSD（リゼルグ酸ジエチルアミド）とは

リゼルグ酸ジエチルアミド（LSD）は、半合成の幻覚剤であり、極めて少量で強烈な精神作用を引き起こすことで知られています。LSDはドイツ語の「Lysergsäurediethylamid」の略称で、LSD-25としても知られています。

LSDの形状と特徴

純粋なLSDは無色、無臭、無味の結晶ですが、通常は液体として製造され、紙片（ペーパー・アシッド）、錠剤、カプセルなど様々な形状で使用されます。極めて微量で効果を発揮し、その効果は摂取量だけでなく、摂取者の精神状態や周囲の環境（セッティング）に大きく左右されます。

LSDの作用

LSDは、感覚、感情、記憶、時間の認識を変化させる体験を引き起こします。効果は通常6時間から14時間持続します。

LSDの構造と作用機序

LSDはインドール核を持ち、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンと類似した構造を有しています。セロトニン受容体に結合し、セロトニンの作用を阻害することで幻覚を引き起こすとされています。ただし、この説には異論もあります。

LSDの立体異性体と類似物質

LSDにはd-LSD、l-LSDなどの立体異性体が存在しますが、精神作用を持つのはd-LSDのみです。また、ALD-52など、LSDに似た作用を持つリゼルグ酸アミドも存在します。

LSDの不安定性

LSD分子は非常に脆弱で、微量の塩素や酸素、光によって分解されやすい性質を持ちます。ブラックライトに当てると発光するという俗説がありますが、実際にはLSD自体は発光せず、染み込ませた紙のインクに反応するものです。

LSDの歴史

宗教的儀式における使用

薬物が化学合成される以前から、麦角菌を含む植物が宗教的儀式で使用されてきました。古代ギリシアのエレウシスの秘儀で使用されたキュケオンには、麦角アルカロイドが含まれていたと考えられています。また、魔女裁判の原因の一つに、麦角中毒があったとする説も存在します。

民間療法における使用

麦角は、麦角アルカロイドを含み、麦角中毒を引き起こすことで知られています。一方で、血管収縮作用に着目し、陣痛促進剤や止[[血]]剤として利用されてきた歴史もあります。

化学の進歩とLSDの誕生

19世紀後半から麦角の研究が進み、1938年にアルバート・ホフマンによってLSDが合成されました。幻覚作用の発見は1943年で、ホフマン自身が誤ってLSDを摂取した際にその効果を体験しました。

LSDの研究と医療利用

1947年以降、LSDは精神医学の研究に利用され、統合失調症のモデルや精神療法の補助として研究されました。サイコリティック療法やサイケデリック療法といったLSDを用いた精神療法が開発されましたが、その倫理的な問題やリスクから、次第に衰退していきました。

軍事利用の研究

冷戦時代には、CIAがLSDを自白剤や精神操作の手段として研究しました（MKウルトラ作戦）。しかし、効果の予測が困難であることや倫理的な問題から、実用化には至りませんでした。

LSDの文化への影響

フラワー・ムーヴメント

1960年代には、LSDが一般大衆に広まり、ティモシー・リアリーらの影響もあり、フラワー・ムーヴメントやヒッピー文化と結びつきました。LSDは意識拡大の手段として捉えられ、若者たちの間で広く使用されました。

アート、音楽、文学への影響

LSDは、サイケデリック・アート、ロック音楽、文学など、様々な分野に影響を与えました。ミュージシャンやアーティストがLSD体験を創作の源泉とし、新たな表現を生み出しました。

LSDの終焉と現状

LSDの有害性が認識されるようになり、1960年代後半から規制が強化されました。1970年には日本でも麻薬に指定されました。ヒッピー文化の衰退とともにLSDの使用は減少しましたが、現在でもクラブシーンなどで使用されることがあります。近年では、再びLSDを治療薬として活用するための研究も行われています。

LSDの薬理効果とリスク

用量と毒性

LSDは非常に強力な薬物であり、微量で効果を発揮します。しかし、過量摂取は呼吸麻痺を引き起こす可能性があります。遺伝的影響については、科学的な証拠は得られていません。

身体的・精神的作用

LSDは、散瞳、心拍数上昇などの身体的症状や、知覚の変化、感情の変容、意識の変化を引き起こします。パニック反応やフラッシュバックなどのリスクも存在します。

LSDの法規制

LSDは、多くの国で規制薬物に指定されています。日本では麻薬及び向[[精神薬]]取締法により規制されており、所持や使用は犯罪となります。

もう一度検索