LT貿易

LT貿易の概説

LT貿易（エルティーぼうえき）は、日本と中華人民共和国との間で行われた半官半民的な貿易形態で、1962年11月に締結された「日中長期総合貿易に関する覚書」（通称：LT協定）に基づいています。当初、両国間には正式な国交は存在しなかったため、互いに設けた連絡事務所を通じての取引が行われていました。この覚書は、中華人民共和国側の廖承志（Liào Chéngzhì）と日本側の高碕達之助（たかさき たつのすけ）の両氏のイニシャルに由来し、LT協定、もしくはLT覚書と称されています。協定に基づく取引は1967年12月まで続き、その後は第二次協定の締結を経て「日中覚書貿易」（MT貿易）に改められ、1973年までの期間も引き続き行われました。

背景

二つの中国の成立

1949年、日本はGHQによる占領下にあり、新たに成立した中華人民共和国と台湾へ逃れた中華民国のどちらを正統な中国と認めるかという問題が浮上していました。1951年、サンフランシスコ講和会議においても、連合国内で意見が分かれ、日中の講和は独立後の判断に委ねられることとなりました。しかし、日米安全保障条約を結んだ日本にとって、共産主義国家との国交樹立は選択肢に含まれませんでした。

対中貿易の再開

1952年に日本は中華民国との日華平和条約を締結し、中共との公式な接触は困難になりましたが、民間交流は維持されました。この流れから、1960年代にかけて日本国内では対中貿易の必要性が再評価され始めました。政治と経済の関係を分ける「政経分離」の考え方の下、1962年に全権を与えられた高碕達之助は、周恩来首相との交渉を経てLT協定を成立させました。

LT協定の締結と実施

1962年11月9日、「日中総合貿易に関する覚書」が調印され、貿易再開への道が開かれました。この協定は、政府による保証のもとで行われ、主要な貿易品目も定められました。中国側からは石炭や鉄鉱石が、日本側からは鋼材や化学肥料などが取引されました。

LT貿易の影響と成果

LT貿易の開始により、日本と中国の貿易規模は急速に増大しました。1966年には2億ドルを超え、これは当初の計画を大きく上回るものでした。中国側にとって、この時期の貿易は食糧危機を始めとする多くの国内問題を克服する上で重要な役割を果たしました。一方、LT貿易の実施と平行して、民間での友好商社取引も増加し、結果としてLT取引比率が減少していきました。

MT貿易への移行

1967年にLT貿易は期限を迎え、その後はMT貿易へと改称されました。この新しい貿易体制は1973年まで続き、日本と中国間の経済的な交流を深める重要な基盤となりました。

日中関係のその後

1972年、日本と中華人民共和国は国交を正常化し、これによりLT貿易やMT貿易の枠組みが正式な外交関係の中で再編成されていきました。この流れは、1974年には北京で日中貿易協定が締結され、以後両国は新しい貿易体制の下で発展していくこととなります。1980年代からの改革開放政策を受けて、日本と中国の貿易関係は飛躍的に拡大し、2010年には日本の最大の貿易相手国となるまで成長しました。

このような歴史的背景において、LT貿易は日本と中国の経済的関係において重要な位置を占めるものであり、両国の貿易協力の礎を築く役割を果たしました。

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