M10ブッカー戦闘車

M10 ブッカー戦闘車

M10 ブッカー戦闘車は、アメリカ陸軍が歩兵旅団戦闘団（IBCT）への火力支援を目的に開発した装軌式装甲戦闘車両です。ジェネラル・ダイナミクス・ランド・システムズ（GDLS）によって開発が進められ、2023年6月に正式名称が与えられました。

ブッカーという名称は、過去に戦死した2名の兵士、スティーボン・A・ブッカー軍曹とロバート・D・ブッカー軍曹に敬意を表して命名されました。

開発経緯

M10 ブッカーの開発は、Mobile Protected Firepower (MPF, 機動防護火力)プログラムとして具体化しました。その背景には、過去の火力支援車両開発の頓挫と、新たな脅威への対応がありました。

ベトナム戦争時のM551シェリダンの後継として、1992年にM8 AGSが採用されましたが、予算削減により量産は中止されました。2000年代には、装輪式のM1128 ストライカーMGSが火力支援車両として採用されましたが、装輪式ゆえの防御力不足や、高価な自動装填装置が課題となり、MPFプログラムでは装軌式の軽戦車タイプの車両に、低反動化された105mm砲を搭載する方針となりました。

特徴

M10 ブッカーは、M35 105mm戦車砲を搭載しています。この砲は、M8 AGSに採用された低反動砲の改良型で、M60A1パットンやM1エイブラムスの初期型に搭載されていたM68 105mm戦車砲よりも軽量です。

MPFプログラムの要求仕様では、空挺輸送能力は必須ではありませんでした。

2018年時点では、BAEシステムズのM8 AGS改良型と、GDLSのグリフィンIIが候補として残りました。2021年初頭から評価試験が行われ、2022年6月にGDLSのグリフィンIIがMPFプログラムの採用車種に決定し、M10 ブッカーの形式名が与えられました。

最初の契約では96両が低率初期生産され、2023年末までに納入が開始される予定です。

役割

M10 ブッカーは、一部メディアで「軽戦車」と表現されることがありますが、アメリカ陸軍はこれを否定しています。M10 ブッカーの主な目的は、IBCT（歩兵旅団戦闘団）への火力支援と、敵火力からの防御です。戦車というよりも、突撃砲に近い概念の車両と言えるでしょう。

関連項目

MPF
グリフィンII - M10ブッカーの元となった車種。
M8 AGS - MPFプログラムにおける対抗車種。
ASCOD歩兵戦闘車 -グリフィンIIの開発元となった歩兵戦闘車。
エイジャックス装甲戦闘車 - ASCOD歩兵戦闘車を元にイギリス軍向けに開発されている装甲戦闘車両。
サブラ軽戦車 - ASCOD歩兵戦闘車を元にフィリピン軍向けに開発されている軽戦車。
* 15式軽戦車 -中国陸軍が運用している軽戦車。車体の規模や搭載火器がM10ブッカーと類似しています。

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