M102 105mm榴弾砲

M102 105mm榴弾砲

M102 105mm榴弾砲は、アメリカ合衆国で開発された榴弾砲です。第二次世界大戦や朝鮮戦争で広く使われたM101榴弾砲の後継として、1964年にアメリカ陸軍に制式採用されました。

概要

M102榴弾砲の最大の特徴は、その軽量さにあります。砲架にアルミニウム合金を使用することで、砲全体の重量を約1.3tに抑えることに成功しました。これは、前任のM101榴弾砲（約2.2t）や後任のM119榴弾砲（2.0t）と比較して大幅な軽量化であり、同時期にイギリス連邦各国が採用したM56 パックハウザー（約1.2t）にも匹敵する軽さです。ただし、M56は山岳部隊での運用を考慮して分解・輸送が可能であるのに対し、M102は分解できません。

M102榴弾砲は、射撃態勢に入る際に、まず車輪を持ち上げてターンテーブルを接地させ、そのターンテーブルの穴に合わせて地面に杭を打ち込むことで固定します。砲架には、横向きのギア型補助輪が取り付けられており、水平射撃角調整ハンドルと連動して回転することで、360°全周囲への射撃を容易にしています。

実戦での運用

ベトナム戦争では、その軽量さとヘリコプターによる輸送の容易さから、前線に迅速に展開できる火力支援として、アメリカ軍のヘリボーン部隊にとって不可欠な存在でした。また、M35トラックやハンヴィーなどの軽車両での牽引も容易であったため、陸上での移動も迅速に行えました。さらに、パラシュートによる空中投下も可能であったため、空挺部隊や軽歩兵部隊でも重宝されました。

ベトナム戦争後も、グレナダ侵攻やパナマ侵攻、湾岸戦争など、さまざまな作戦に投入されました。しかし、射程が標準榴弾で11km程度と、M101榴弾砲からほとんど進歩していなかったため、1987年からはM119 105mm榴弾砲への更新が決定し、1989年から更新が始まりました。

近年の運用状況

米陸軍の第一線部隊からはほぼ姿を消しましたが、各州の陸軍州兵に移管され、2001年からのアフガニスタンや2003年からのイラク戦争では、装備更新が遅れていた州兵部隊がM102榴弾砲を持ち込む事例も見られました。例えば、2004年にイラクに派遣されたアーカンソー陸軍州兵の部隊は、17門のM102榴弾砲をイラクに持ち込みました。

しかし、近年では陸軍州兵でもM119榴弾砲への更新が進められています。また、アメリカ空軍では、AC-130ガンシップの火力強化のため、機体に搭載されています。AC-130Uの近代化改修計画では、後装式の120mm迫撃砲への換装案が出ましたが、計画がキャンセルされたため、当面はM102榴弾砲の運用が続行されると推定されます。

諸元

種別: 榴弾砲
口径: 105mm
重量: 1,326kg
全長: 5.2m
全幅: 2m
砲員数: 8名
砲尾: 垂直鎖栓式閉鎖機
反動: 液気圧式駐退復座装置
砲架: 箱型式脚
俯仰角: -5°~+75°
旋回角: 360°
有効射程: 11,500m
最大射程: 15,100m（RAP弾使用時）
発射速度: 10発/分（最大）、3発/分（連続射撃時）
弾薬: 半完全弾薬筒（105x372mmR）

採用国

アメリカ陸軍（陸軍州兵のみ）
アメリカ空軍（AC-130の搭載武装）
ブラジル陸軍
フィリピン陸軍
サウジアラビア陸軍
タイ王国陸軍
レバノン陸軍
ホンジュラス陸軍
ウルグアイ陸軍

関連項目

榴弾砲
M101 105mm榴弾砲
M119 105mm榴弾砲
M56 パックハウザー
D-30 122mm榴弾砲
AC-130

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