M1074統合突撃橋

M1074 統合突撃橋 (Joint Assault Bridge, JAB)

M1074統合突撃橋は、アメリカ合衆国で開発された架橋戦車であり、M1エイブラムス主力戦車の車体をベースにしています。本車両は、戦場において迅速かつ安全に橋を架けることで、部隊の機動力を支援することを目的としています。

開発の経緯

1990年代にM1エイブラムスの車体を利用して開発されたM104ウルヴァリン重突撃橋は、その高性能さゆえに高価であり、アメリカ陸軍の工兵部隊が運用していた既存のM60 AVLBを完全に更新するには至りませんでした。そこで、M104ウルヴァリンとM60 AVLBの中間的な存在として計画されたのが、Joint Assault Bridge (JAB) でした。

開発は2012年に開始され、アメリカ陸軍はジェネラル・ダイナミクス・ランド・システムズ、レオナルドDRSとの間でそれぞれ契約を締結し、各社が試作車を1両ずつ製作しました。2014年に試作車が完成し、アニストン陸軍工廠で評価試験が行われた結果、2016年8月にレオナルドDRSの試作車がM1074として正式に採用されました。

初期発注として、アメリカ陸軍は168両、海兵隊は29両を発注し、2016年から2018年にかけて51両が低率初期生産されました。これらの車両はアバディーン性能試験場での耐久性試験（爆風、砲火など）を受け、乗員保護に関する設計変更が加えられた後、全規模量産が承認されました。2019年4月には、第1機甲師団第2機甲旅団戦闘団第40旅団工兵大隊で運用評価試験が開始され、2024年にかけて量産が進められる予定です。量産されるM1074は、陸軍・海兵隊・州兵部隊で運用されているM60 AVLB、そして将来的にはM104ウルヴァリンを更新することが計画されています。

オーストラリア陸軍は18両のM1074統合突撃橋の導入を計画しており、2021年にアメリカ政府によって承認されました。また、ポーランドは2022年4月に、250両のM1A2 SEP V3エイブラムス主力戦車、26両のM88A2ハーキュリーズ装甲回収車とともに、17両のM1074統合突撃橋の導入契約をアメリカ政府との間で締結しました。

性能

M1074統合突撃橋は、M1A1相当の車体をベースとしてM1A2のサスペンションを組み込み、エンジンも戦車型の最新モデルと同等のものにアップグレードされています。これにより、戦車型との部品共通化が図られ、メンテナンス費用を抑えつつ、性能向上が実現されています。また、戦車型で導入された車体側面の爆発反応装甲パッケージ（TUSK）や、車体底面の増加装甲の装着も可能です。

橋梁の展開機構はレオナルドDRSとイスラエル・ミリタリー・インダストリーズの共同開発によるもので、MLC95シザーズ式ブリッジを搭載しています。この橋は耐荷重95t、長さ18.3mの間隙を踏破可能であり、3分で展開することができます。これにより、M1エイブラムスのような重車両も迅速に渡河できるようになり、作戦行動における柔軟性が大幅に向上します。

M1074統合突撃橋の導入は、アメリカ軍だけでなく、同盟国の軍事能力強化にも貢献しています。その高い機動性と迅速な橋梁展開能力は、現代戦における重要な要素となっています。

関連項目

架橋戦車
M60 AVLB
* M104ウルヴァリン重突撃橋

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