M110 (天体)

M110 銀河

M110は、アンドロメダ座の方向、遠く宇宙に浮かぶ美しい天体です。正式名称の一つにNGC 205もあり、これは新総カタログと呼ばれる別の天体リストにおける名称です。この銀河は、その形から楕円銀河に分類されます。アンドロメダ銀河（M31）のすぐ近くに位置しており、アンドロメダ銀河の「伴銀河」、つまり重力的に結びついてその周囲を回る小銀河の一つと考えられています。

概要と特徴

M110は、アンドロメダ銀河の伴銀河の中でも、M32銀河に続いて二番目に大きな存在です。私たち自身が属する天の川銀河や、その伴銀河である大小マゼラン雲など、いくつかの銀河が集まって構成される「局所銀河群」と呼ばれる集団の一員でもあります。

地球からの距離はおよそ290万光年と推定されており、これはアンドロメダ銀河とほぼ同じ距離に位置することを意味します。その質量については、私たちの天の川銀河と比較すると小さいだろうと考えられています。楕円銀河特有の滑らかな、構造の少ない姿をしていますが、伴銀河としては比較的大きいことから、アマチュア天文家の観測対象としても親しまれています。

観測のヒント

M110銀河は、巨大なアンドロメダ銀河に非常に近い位置にあります。アンドロメダ銀河の中心部から見ると、北西の方向におよそ45分角ほど離れた場所に見つけることができます。これは満月の見かけの大きさの1.5倍弱に相当する角度で、比較的近接していることがわかります。

観測には望遠鏡が必要ですが、大口径でなくともその姿を捉えることが可能です。例えば、口径が5cm程度の小型望遠鏡でも、空の条件が良く、注意深く観察すれば淡い光として視認できるかもしれません。口径10cmクラスの望遠鏡を使用すれば、よりはっきりとした姿として見えてくるでしょう。意外なことに、さらに大きな口径20cmクラスの望遠鏡で見ても、口径10cmで見たときと比べて劇的に見え方が変わるわけではないと言われています。これは、M110が diffuse（拡散した）な光を放つ天体であることに起因するのかもしれません。

発見の歴史

M110銀河は、フランスの著名な天文学者シャルル・メシエによって、1773年8月10日に初めて観測され、記録に残されました。しかし、彼の作成した有名な「メシエカタログ」には、何らかの理由でこの銀河はリストアップされませんでした。メシエとは別に、ウィリアム・ハーシェルの妹であるイギリスの天文学者カロライン・ハーシェルも、1783年8月27日に独立してこの銀河を発見しています。

「M110」という名前について

先述のように、メシエ自身はM110をメシエカタログに載せませんでした。しかし、彼は1807年に出版したアンドロメダ銀河のスケッチの中に、M32銀河とともにM110を描き込んでいたことが確認されています。これは彼がこの天体を認識していた明確な証拠と言えるでしょう。

長らく正式なメシエ天体としては扱われない時期が続きましたが、20世紀も後半に入った1966年、イギリスの天文学者ケネス・グリン・ジョーンズ氏が、メシエのスケッチに基づき、この銀河を110番目のメシエ天体として「M110」と呼ぶことを提唱しました。彼の提案は広く受け入れられ、今日ではこの名称が一般的に用いられています。このように、M110という名称は、メシエ自身が付けたものではなく、後世の研究者によって追加された特別なケースと言えます。

もう一度検索