M15 (天体)

球状星団 M15

ペガスス座の中に位置する球状星団M15は、NGC 7078としても知られています。この星団は、夜空で比較的手軽に見つけられる天体の一つです。ペガスス座を形作る四辺形のうち、特にθ（シータ）星とε（イプシロン）星を結んだ線を、ε星の方向へ辿っていくと見つかります。双眼鏡で観察すると、隣にある6等星のすぐ近くに、ぼんやりとした丸い光として認識できるでしょう。

特徴的な性質

M15は、いくつかの点で特異な性質を持つ球状星団として、天文学者の関心を集めてきました。まず、この星団は非常に多くの変光星を含んでいます。ケンタウルス座のω（オメガ）星団、そしてりょうけん座のM3に続いて、変光星の発見数が特に多い天体です。また、長期間の観測から、M15の視直径が年々わずかに増大していることも示唆されています。

さらに注目すべきは、球状星団内部で発見された最初の惑星状星雲、Pease 1を内包している点です。これは1928年に発見された天体で、球状星団内部に惑星状星雲が見つかっている稀な例として、M22とともに挙げられます。ただし、M22に見られる惑星状星雲が比較的大きく見えるのに対し、Pease 1は非常に小さく、見かけのサイズは約1秒角程度しかありません。

構造と進化

M15は、2013年時点で知られている球状星団の中で、最も中心部の星の密集度が高いと考えられています。その年齢は約120億年と推定されており、これは宇宙の歴史の中でも非常に初期に形成されたことを意味します。

多くの恒星系、例えば球状星団や銀河は、中心に向かうにつれて星の密度が高くなる傾向がありますが、最も中心のごく近くでは密度が一定になる「コア」と呼ばれる領域を持つのが典型的です。しかし、M15はこのようなコア構造を持たず、中心に行くほど密度が際限なく高まるような「尖った」密度分布を示しています。このような構造を持つ星団は、「ポスト・コア・コラプス星団（post core-collapsed cluster）」と呼ばれ、これは重力的な自己相互作用によって星団の中心部が収縮し続ける「重力熱力学的カタストロフィー」と呼ばれる過程が実際に進行している証拠と考えられています。M15は、この理論的な物理過程を観測的に捉えることができる貴重な実例の一つです。

中心部の極めて高い密度に加え、1974年には中心部からX線が放出されていることが観測されました。これらの観測結果から、M15の中心には、銀河の中心に存在するような大質量ブラックホールが潜んでいる可能性が指摘されています。このため、M15の中心核は、ハッブル宇宙望遠鏡のような高性能な望遠鏡を用いた詳細な観測の重要なターゲットとなっています。

外観と観測

M13と同様に、M15にも多くの赤色巨星が含まれています。星団全体の形状は非対称な楕円形をしており、その周辺部には、星団から流れ出したような「クモの脚」とも形容される星の細い流れが見られます。また、星団の内部には、斑点のように見える二つの暗い領域が存在します。

観測の難易度は、用いる機材と観測条件に左右されます。双眼鏡では、前述の通りぼんやりとした星雲状に見えることが多いでしょう。口径8cm程度の望遠鏡を使用すると、星団の周辺部に個々の星がわずかに分離して見え始めます。さらに口径10cmクラスの望遠鏡を使うと、次第に周辺の星がはっきりと見分けられるようになります。ただし、空の状態によっては10cm望遠鏡でも個々の星を分離するのは難しいという熟練した観測者の記録もあり、シーイング（大気の揺らぎ）や空の明るさといった条件が大きく影響します。

観測史

M15は、1746年にフランスの天文学者ジャン・ドミニク・マラルディによって発見されました。彼はド・シェゾー彗星を追尾している最中に偶然この天体を見つけ、それを「星雲状でかなり明るく大きな星がある」と記録に残しています。興味深いことに、メシエカタログの編纂者であるシャルル・メシエも1764年にこの星団を観測し、自身のカタログに15番目の天体として収録しましたが、彼の記録では「星のない星雲。まるく中心部が輝く」とされており、これは当時のメシエが使用していた望遠鏡が、マラルディのものと比較して分解能が劣っていた可能性を示唆しています。

出典・外部リンク

Globular Cluster Photometry With the Hubble Space Telescope. V. WFPC Study of M15's Central density Cusp
各天文機関の公開データ（例: Hubble Space Telescope archive）

※この記述は、2013年頃までの天文学的な知見に基づいています。最新の研究成果は、各天文台や専門誌の情報を参照してください。

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