M4 (天体)

M4（NGC 6121）

さそり座の方向、私たちの太陽系からおよそ7,200光年の距離にある球状星団がM4（NGC 6121）です。その構造はおよそ直径70光年に広がっており、多数の恒星が密接に集まっています。この星団は、2007年に別の球状星団2MASS-GC04が発見されるまで、太陽系から最も近い場所にある球状星団として知られていました。

特徴と観測

M4は、その位置から比較的観測しやすい天体の一つです。さそり座の最も明るい星である1等星アンタレスのすぐ西に位置しており、小型の望遠鏡でもその姿を捉えることができます。球状星団としては、星の集まりが比較的まばらであるという特徴を持ち、黄色みがかった色合いに見えると言われています。空の条件が良ければ、肉眼でも天の川の中に微かな光として確認できるほどの明るさを持っています。ただし、同じメシエカタログに載る球状星団M2やM3よりも実際には明るいにもかかわらず、隣接するアンタレスの強い光のため、これらの星団と比べて見えにくいと感じる観測者もいます。

M4の内部構造には、南北に縦断する独特な星の列が見られます。これは、およそ10等級から12等級の明るさを持つ1ダースほどの星々が連なってできたもので、全体として丸く対称的なM4の姿の中に、この顕著な「尾根」のような構造がアクセントとなっています。この「尾根」は、後の観測者によって「中心を走るまばゆい光」や、ある者には「猫の目」に例えられたこともあります。口径20cm程度の望遠鏡を用いれば、星団の中心部の星々も部分的に見え始めますが、星団の見え方は大気の状態に左右されるとも言われています。

観測史

M4は、1746年にフランスの天文学者ジャン＝フィリップ・ロワ・ド・シェゾーによって初めて発見されました。その後、1764年にシャルル・メシエが自身の有名な天体カタログの4番目の天体として記録しています。

初期の観測者たちは、M4を様々な言葉で表現しています。発見者のシェゾーは、アンタレスの近くに見える「白く丸く小さい」天体で、おそらく未発見だろうと記しています。1750年代に南アフリカのケープタウンで観測を行ったニコラ＝ルイ・ド・ラカイユは、「微かな彗星の小さな核のようだ」と表現しました。メシエ自身は、1764年の観測で「非常に小さな星から成る星団」であり、低性能の望遠鏡では「星雲状に見える」と述べています。

M4の姿が星の集まりであることが初めて明確に確認されたのは、1783年にウィリアム・ハーシェルが自身の強力な10フィート反射望遠鏡で観測したときです。彼は星団内に約200個の星を数え上げ、特に南北に連なる星の群れを「かなり明るい8ないし10個の星のなす尾根」と詳細に描写しています。この「尾根」は、後の天文学者たちも注目するところとなりました。

星団内の重要な発見

M4の特筆すべき点は、多くの変光星が観測されていること、そして特に興味深いコンパクト天体と系外惑星が発見されていることです。1987年には、周期3.0ミリ秒という高速で回転するパルサーが見つかりました。さらに、1995年にはハッブル宇宙望遠鏡を用いた観測により、このパルサーと連星系を形成している白色矮星の存在が確認されました。

そして2003年7月には、このパルサーと白色矮星の連星系を公転する系外惑星（パルサー惑星）が発見されました。この惑星は、質量が木星のおよそ2.5倍と推定されており、その年齢はおそらくM4という星団自体と同じくらい古く、約130億年前に形成されたものと考えられています。このような惑星が、恒星の生涯の終末期にあるパルサーの周囲で発見されたことは、惑星系の形成や進化について重要な情報を提供しています。

M4は、その手軽な観測性、特徴的な構造、そして星団内で見つかった稀有な天体群によって、アマチュア天文家からプロの研究者まで、多くの人々にとって魅力的な研究対象、観測対象となっています。

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