M4トラクター

M4トラクターの概要

M4トラクター（M4 High-Speed Tractor）は、アメリカ合衆国で開発された砲兵トラクターであり、陸上自衛隊では「18tけん引車 M4」として活用されました。この車両は、第一次世界大戦の戦訓から生まれたもので、アメリカ軍は陸上戦力の機動性を高めるため、砲兵の機動力向上が不可欠であると認識しました。戦間期には軍縮による予算削減が影響し、装備の開発が停滞したものの、第二次世界大戦の勃発をきっかけに急速に軍備の拡張が行われました。

その結果、大口径の野戦砲が増え、これに伴って砲の自走化（自走砲化）が進みました。牽引砲においても、馬から砲牽引車への移行が求められ、砲兵用の高速牽引車の開発が急務となりました。M4トラクターは、このような背景のもとに設計され、18トン以上の牽引能力を有し、口径6インチ（約152.4mm）以上の重砲を牽引することが可能になっています。

開発の歴史

M4トラクターは、当初「T9」という名称で、M2軽戦車の車台とサスペンションを基に開発が進められましたが、後にM3軽戦車の形式に変更され「T9E1」と改称されました。この車両は1942年に「18t HSP M4」として制式化され、合計約5,552両が1943年から1945年の間に製造されました。アリス・チャーマーズ社が製造を請け負い、最大の生産数を誇ります。

戦局が動く中、M4トラクターは1943年から部隊に配備され、第二次世界大戦だけでなく、朝鮮戦争でもその機能を発揮しました。しかし、戦後にはアメリカ軍が重砲の自走化を進めた結果、早々に運用が終了し、他国の軍へと供与されました。日本では陸上自衛隊がこのトラクターを採用し、特定の部隊において155mm加農砲や203mmりゅう弾砲の牽引に使用しました。

特徴と技術概要

M4トラクターは、主にM1/M2（M115）203mm榴弾砲やM1/M2（M59）155mmカノン砲、さらにはM1/M1A1/M2 90mm高射砲を牽引する能力を持っています。最大牽引力は17.4トンであり、火砲の牽引と併せて操作員や弾薬の輸送を行う設計です。

この車両は、固い材質の鋼板製で、半密閉式のキャビンを備えています。運転席や乗客席は設計されており、戦闘車両ではないものの、M2重機関銃を装備した自衛機能を持っています。具体的には、後部に異なる弾薬搭載機構を持ち、任務に応じて使い分けることも可能です。また、野砲用架台には取り外し可能なホイストクレーンを装備し、多様な任務に対応できます。

陸上自衛隊での使用

陸上自衛隊では、M4トラクターは先に述べた155mm加農砲や203mmりゅう弾砲の牽引に特化した部隊に配備されました。1953年には13tけん引車 M5と共に17両が導入され、60年代に入ると老朽化が進むものの、現役で活躍していました。最終的には、25tけん引車M8に置き換えられ、さらには73式けん引車の導入で退役しました。日本の他にも、オーストラリアやパキスタンなどでも使用され、一部は重量物を牽引する民間トラクターとして生き残っています。

各型の概要

M4トラクターは、基本型であるM4を始め、改良型のM4A1やM4A2、M4Cといった複数の型が存在します。各モデルには特定の改良が施され、異なる目的に応じて設計されています。このように、M4トラクターは戦時中における砲兵の機動力を支え、その歴史は国際的にも広がっています。特に、映画やゲームの中にも登場し、多くの人々に知られる存在となっています。

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