M50 (天体)

M50（NGC 2323）とは

いっかくじゅう座の領域に輝く美しい天体、それが散開星団M50（エヌジーシー2323）です。メシエカタログの50番目に登録されているこの星団は、肉眼でもその存在を感じられる、比較的観測しやすい対象の一つと言えるでしょう。

位置と見つけ方

M50は、冬の夜空を彩るおおいぬ座との境界に近い位置にあります。特に、夜空で最も明るい星であるシリウスから、おおいぬ座のθ星（シータ星）の方向へ視線をたどっていくと、この星団を見つけやすいとされています。この付近は冬の天の川の一部にあたり、他にも多くの散開星団が散りばめられています。

観測による見え方

観測条件が非常に良い場所であれば、M50は肉眼でも星が集まった「ぼんやりとした光のシミ」のように見えます。双眼鏡を使うと、星団全体の光の中に、点々と微かな星が確認できるようになります。

口径5cm程度の小型望遠鏡で倍率を上げて観察すると、ぼんやりとした光が個々の星に分解されて見え始めます。さらに口径8cmクラスの望遠鏡を用いると、およそ20個ほどの星々が数えられるようになります。M50は、散開星団としてはそれほど極端に密集しているわけではないため、比較的低口径の望遠鏡でも星を分離して見やすいと言えます。

口径が10cmに増すと、見える星の数は格段に増え、50個程度の星が確認できるようになります。そして、口径30cmもの大型望遠鏡で観察すると、星団全体がおびただしい数の星で構成されていることが実感できます。全体の星の数は約150個と推定されますが、興味深いことに、これだけ大きな望遠鏡を使っても、星団の全ての星を個々に分離して見ることが難しい部分が残ります。全ての星を完全に分離するためには、さらに口径の大きな、40cmクラスの望遠鏡が必要とされています。

星団全体の形については、観測者によって見解が異なります。例えば、歴史的な観測者であるマラスはM50の形をハート型と表現し、また別の観測者であるジョーンズはY型に見えるとしています。また、マラスは、他の観測者（ウェッブなど）が記述した星団中の「赤い星」について、特に他の星と異なった色には見えなかったと記しています。

観測史

M50は、公式には1772年4月5日にフランスの天文学者シャルル・メシエによって発見され、彼の作成したカタログの50番目の天体として登録されました。しかし、メシエ以前にもこの星団が観測されていた可能性が指摘されています。

ジャック・カッシーニの残した記録によると、彼の父である高名な天文学者ジョヴァンニ・カッシーニが、メシエの発見よりはるか前の1711年以前に、すでにこの星団を発見していた可能性があるとされています。

1774年には、ドイツの天文学者ヨハン・ボーデが、カッシーニによるM50の発見について記述を残しています。ボーデは、「カッシーニがおおいぬ座とこいぬ座の間にある星団を熱心に探した結果、最終的にいっかくじゅう座の腹の下で見つけた」と記しています。また、ボーデはM50の見え方についても触れており、「星雲状の光の上に小さな星が散らばる星団で、西側には特に目立つ4つの小さな星がある」と表現しています。

その後、19世紀イギリスの天文学者ジョン・ハーシェルもM50を観測し、その記録を残しています。ハーシェルはM50を「顕著な星団」と評し、「非常に大きく、星の数が大変多い」と述べています。さらに、星団を構成する個々の星の明るさについても言及しており、その等級は12等から16等の範囲であると記しています。

これらの記録から、M50が古くから天文学者の注目を集め、様々な観測を通じてその姿が詳細に捉えられてきたことがわかります。美しい姿を見せるM50は、今もなおアマチュア天文家の人気観測対象の一つです。

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