M50 155mm自走榴弾砲

M50 155mm自走榴弾砲

M50 155mm自走榴弾砲は、1960年代にイスラエルで開発された自走榴弾砲です。スーパーシャーマンの車体にフランス製のM50 155mm榴弾砲を搭載した車両で、1967年の第三次中東戦争や1973年の第四次中東戦争で運用されました。

開発経緯

イスラエル国防軍は1950年代にフランスからAMX-13軽戦車の自走砲型であるMk 61 105mm自走榴弾砲を輸入し、第二次中東戦争で運用しました。1960年代には、同じく105mm砲を搭載したM7プリースト自走砲を輸入し、実戦配備していました。

しかし、105mm砲では射程距離が十分でないという課題がありました。そこで、当時牽引式野砲として導入していたフランス製M50 155mm榴弾砲を自走砲化することになりました。車体には、主力戦車として豊富な運用経験があり、センチュリオンやM48パットンの導入開始により余剰化が予想されたスーパーシャーマンが選ばれました。

構造

砲の搭載にあたっては、アメリカ製のM12 155mm自走カノン砲やM40 155mm自走カノン砲と同様に、エンジンを車体前方に移動させ、車体後部をオープントップの戦闘室としました。戦闘室はシンプルな形状で、155mm砲弾を47発搭載可能でした。副武装として、12.7mm M2重機関銃またはM1919 7.62mm機関銃を装備できました。また、M50自走砲の車体には、他のタイプに比べて車体の長いM4A4車体が転用されました。

最初に製造されたM50 155mm自走榴弾砲は、初期型スーパーシャーマンと同じく、VVSSサスペンション、T54E1型全金属製履帯、コンチネンタル製ガソリンエンジンを搭載していました。コンチネンタルガソリンエンジン搭載型M4やM4A1の車体下部リアパネルに装着されているエアクリーナーは、M50自走砲では戦闘室前面に装着されています。

第三次中東戦争後の1968年以降、これらのM50に対して、戦車型のスーパーシャーマンと同様に、カミンズ製ディーゼルエンジンへの換装、HVSSサスペンションおよび幅広のT80型全金属製履帯への換装が行われました。エンジン換装型では、車体前面装甲部に大型のグリルが増設されるなど、車体周りには大幅な改造が施されました。カミンズディーゼルエンジン型のM50は1973年の第四次中東戦争で実戦投入されました。

運用とその後

その後、密閉戦闘室を持つソルタムL33 155mm自走榴弾砲が量産配備されたことや、アメリカから新型のM109 155mm自走榴弾砲やM107 175mm自走カノン砲が導入されたことにより、M50自走砲は第一線装備から外れ、1990年代には退役しました。

余剰化したM50自走砲の車体の一部は、後部戦闘室を救護室に改造したシャーマン装甲救急車に改造され、使用されました。

現在、イスラエル国内のラトルン戦車博物館およびイスラエル砲兵隊博物館に実車が展示されています。

関連項目

M4中戦車
スーパーシャーマン
M50 155mm榴弾砲
M7 プリースト 105mm自走砲
* ソルタムL33 155mm自走榴弾砲

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