M6 (天体)

M6 (NGC 6405)

概要

さそり座に位置する散開星団、M6（NGC 6405）は、その特徴的な形状から「バタフライ星団」という愛称で親しまれています。この星団は、比較的明るい星々がまばらに散らばって構成されており、その姿がまるで羽を広げた蝶のように見えることに由来します。星団を構成する明るい星々の多くは、白や黄色がかった色をしています。しかし、この星団の中には一つ、鮮やかな橙色に輝く特異な星が存在します。これが半規則型変光星であるさそり座BM星です。この星は約850日という周期で明るさを変化させ、その変光範囲は5.5等から7等に及びます。最も明るくなる極大時には、理想的な観測条件下であれば、肉眼でもM6の中からこの星を個別に識別できることがあります。

観測

M6は、比較的容易に観測できる天体です。特に南の空が開けた暗い場所であれば、たとえ満月が出ているような状況でも、肉眼で煙のような淡い光として捉えることが可能です。さらに注意深く観察すれば、肉眼でも数個の星に分離して見えることもあります。

観測には、あまり高い倍率を使用しない方が星団全体を把握しやすいため、より良い眺めが得られます。口径5cm程度の小望遠鏡や双眼鏡でも十分に楽しむことができ、これらの光学機器を使えば、星団を構成する個々の星々をはっきりと捉えることができます。M6は同じくさそり座の有名な散開星団M7の近くに位置しており、双眼鏡であればM7と同じ視野内に収めることも可能です。口径10cmクラスの望遠鏡を用い、広視野型の接眼レンズで低倍率観察を行うと、M6全体を一つの視野に収めた素晴らしい眺めを楽しむことができます。さらに大口径となる口径20cmクラスの望遠鏡を使用すると、星団の背後に広がるより淡い微星まで見えてくるようになります。

M6の形状は、見る人によって様々に表現されます。「蝶」のほかにも「大の字」や「あかとんぼ」にたとえられることがあります。「蝶」にたとえる場合、星団の一角にある3～4個の星の並びを蝶の2本の触角に見立てることがあります。この「蝶」の形状は、アゲハチョウのようなスマートな形ではなく、むしろ蛾に近いずんぐりとした姿を想定しているようです。写真などでは、右上が頭、そこから左下へと胴体が続き、左右に羽が広がっているように見ることができます。

観測の歴史

M6の観測記録は古くから存在します。イタリアの天文学者ジョヴァンニ・バッティスタ・オディエルナは、1654年よりも前にこの星団を記録していたとされていますが、その事実が広く知られるようになったのは1980年代になってからのことです。その後、1745年から1746年にかけて、ジャン＝フィリップ・ロワ・ド・シェゾーが独自にM6を再発見し、「ここに非常にきれいな星団がある」とその美しさを記録に残しています。また、ニコラ・ルイ・ド・ラカーユはM6を「小さな星が3条の帯状に連なり、そして菱形をつくっている」と描写しました。ジョン・ハーシェルは、星団の中心的な存在である7等星を「美しく大きい」と評し、星団全体を「10～11等の星の集合」としつつ、「一つが7等、もう一方は7～8等」の明るい星があることを記しています。

フランスの天文学者シャルル・メシエは、1764年にM6を観測しました。彼は、肉眼では星として分離できない星雲状に見えるものの、小口径の望遠鏡を使えば星団であることが分かると記し、自身の有名なカタログであるメシエカタログに6番目の天体として登録しました。なお、天文学者のロバート・バーナム・ジュニアは、古代ギリシャの天文学者クラウディオス・プトレマイオスが、隣接するM7を観測した際にM6も同時に見ていた可能性を示唆していますが、これは確証が得られていません。

関連項目

* メシエカタログ

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