M87 (天体)

M87 (NGC 4486)の詳細

M87は、おとめ座の方向約5500万光年先に位置する巨大な楕円銀河であり、おとめ座銀河団の中心的なメンバーの一つです。その中心には、太陽質量の65億倍にも達する超大質量ブラックホールが存在することで知られています。この銀河は、アマチュア天文家にとっても観測の対象となり、小口径の望遠鏡でもその存在を確認することができます。

観測

小口径の望遠鏡では、M87は丸い光のにじみとして観測されます。口径10cmの望遠鏡では、丸い形状と周辺が徐々に暗くなる様子が確認でき、口径20cmの望遠鏡では、それほど大きな変化は見られませんが、南西方向にある他の銀河、NGC4478やNGC4479が視野に入ってきます。さらに南には、明るい銀河NGC4486Aが存在しますが、これはほとんど恒星のようにしか見えません。

特徴

M87は、天の川銀河と比較して直径はほぼ同じですが、球に近い形状をしているため、より多くの恒星を抱えています。また、天の川銀河の周囲には約200個の球状星団が存在するのに対し、M87の周囲には15,000個にも及ぶ球状星団が存在すると考えられています。1918年には、ヒーバー・ダウスト・カーチスによってこの銀河の中心から伸びる宇宙ジェットが発見されました。このジェットは、大口径の望遠鏡を使用すれば可視光でも確認することができ、その長さは7,000～8,000光年にも及ぶと推定されています。

M87の周辺には、M86やM49などの楕円銀河が多数集まっており、これらはおとめ座銀河団として知られています。M87は、これらの銀河の中で質量が突出しており、おとめ座銀河団自体も、我々の銀河系を含む少なくとも100個の銀河グループが属するおとめ座超銀河団の一部です。さらにこの超銀河団は、ラニアケア超銀河団と呼ばれる構造の一部を構成し、グレートアトラクターとともに宇宙の大規模構造の一翼を担っています。

超大質量ブラックホール

1947年、おとめ座の領域に強い電波源が発見され、「おとめ座A」と命名されました。この電波源はM87と同一であると考えられ、その電波の発生源は、M87の中心に位置する超大質量ブラックホールに由来する活動銀河核であると結論付けられました。

このブラックホールを直接観測するために、[超長基線電波干渉法]を用いた地球サイズの仮想的な電波望遠鏡を構成する国際プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」が進められました。そして2019年4月10日、EHTによってM87中心の超大質量ブラックホールの撮影に初めて成功し、その画像が公開されました。この画像からは、ブラックホールの事象の地平面の周囲にある光子球と、直径約1,000億kmのブラックホールシャドウが確認されました。また、ブラックホールの質量は太陽の65億倍、事象の地平面の直径は約400億kmと推定されています。

EHTによる成果発表後、このブラックホールにはハワイの創世神話に登場する「ポーヴェーヒー」という名前が提唱されましたが、これは正式なものではありません。その後、世界中の研究チームがEHTのデータを再解析し、リング状の画像を得ていますが、2022年には、国立天文台の三好真助教らのグループが「リング構造とする解析結果は誤りである」と発表しました。これに対し、EHTチームは誤った解釈であると否定し、現在も議論が続いています。

観測史

M87は、1781年3月18日にシャルル・メシエによって発見されました。メシエは、この夜に球状星団M92と8つの銀河を発見しており、M87を「星のない星雲。8等星に近い。M84、M86と同じくらいの明るさ」と記述しました。その後、1864年にジョン・ハーシェルは「非常に明るく、かなり大きく丸い。中心部は急に明るくなりそこに核がある」と記しており、ロス卿も同様の印象を述べています。

フィクションとの関連

（この部分は省略）

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