MISSING BOY

MISSING BOY (尾崎豊のライブアルバム)

『MISSING BOY』（ミッシング・ボーイ）は、日本のシンガーソングライター、尾崎豊が生前に残した音源を基に編纂された4作目のライブ・アルバムです。彼の没後、1997年11月15日にソニー・ミュージックレコーズよりリリースされました。この作品は、1993年に発表された『約束の日 Vol.1』および『約束の日 Vol.2』以来、およそ4年半ぶりに世に出たライブ音源集となります。プロデュースは、尾崎のキャリアを深く支えた音楽プロデューサー、須藤晃が担当しました。

このアルバムは、1985年8月25日の大阪球場での公演から、尾崎にとって最後の全国ツアーとなった「BIRTH TOUR」における1991年8月27日の郡山市民文化センターでの公演まで、約6年間にわたる様々なライブ会場でのパフォーマンス音源から選曲されています。単なるベストライブ集ではなく、リリース時点で未発表だった音源を中心に据えることで、多感な10代後半から晩年に至るまでの尾崎豊の音楽的な変遷や、ライブにおける生々しい表現の軌跡を辿るコンピレーション作品としての性格が強いのが特徴です。制作の意図として、「歌」を聴かせることに加えて、ライブパフォーマンスを通じて尾崎豊という「存在」そのものが生きた過程を表現することが掲げられています。

収録曲は、尾崎が19歳だった頃の音源が6曲、21歳の時のものが2曲、22歳の時のものが2曲、そして25歳の時のものが2曲と、年代別にバランス良く配置されています。

最古の音源として収録されているのは、1985年に行われた「TROPIC OF GRADUATION TOUR」より、8月25日の大阪球場公演から「Freeze Moon」「Bow!」「Scrambling Rock'n'Roll」の3曲です。特に「Freeze Moon」は、実際のライブではメンバー紹介や観客へのメッセージを含め30分を超える長尺な演奏でしたが、本作ではアルバムの構成に合わせて約5分に編集・短縮されています。

同年開催された「LAST TEENAGE APPEARANCE TOUR」からは、11月14日の代々木オリンピックプール公演より「十七歳の地図」と「卒業」が、翌11月15日の同会場での公演より「Teenage Blue」が選ばれています。「卒業」の演奏前のMCは、既発のフィルムコンサート映像で使用された音源ですが、演奏部分は本作で初めて公開されました。

1987年の「TREES LINING A STREET TOUR」からは、8月30日の有明コロシアム公演より「I Love You」と「Forget-me-not」が収録されています。この時期のツアーは、尾崎が体調不良からステージ上で横になったり、倦怠感を示すような動きが見られたりと、後のツアー中断へと繋がる予兆が垣間見える時期でした。

1988年9月12日に行われた東京ドーム公演「LIVE CORE」からは、「街路樹」と「僕が僕であるために」が収録されています。この公演は、覚醒剤取締法違反での逮捕、入退院を経て約1年ぶりに実現したもので、多くのファンが待ち望んだライブでした。アンコールで披露された「僕が僕であるために」は、アコースティックギター一本での弾き語りという、よりパーソナルな響きを持つ演奏で聴衆を魅了しました。この音源も本作で初めて公開されました。

最も新しい音源は、1991年の「BIRTH TOUR」から選ばれています。5月20日の横浜アリーナ公演より「Driving All Night」が、そして8月27日の郡山市民文化センター公演より「FIRE」が収録されており、尾崎のキャリア後期のパワフルな一面を伝えています。

収録曲に関する特筆事項

本作に収録された多くの楽曲のライブ音源が、このアルバムで初めて一般に公開されました。

Freeze Moon: アルバム『壊れた扉から』リリース前の音源であり、一部歌詞やサビの演奏に違いが見られます。長尺だったオリジナルから短縮編集されていますが、後に完全版が別のライブアルバムに収録されました。
十七歳の地図: 『LAST TEENAGE APPEARANCE』として既発のライブアルバムに収録された公演の前日（11月14日）の音源であり、この日の単独リリースはなく、本作にのみ収録されています。
Driving All Night: 初音源化であり、ライブ映像は後に完全版としてビデオ化されました。
Bow!: 初音源化で、後に大阪球場公演のライブアルバムに収録されました。
Teenage Blue: 初音源化。既発のライブアルバム『LAST TEENAGE APPEARANCE』には含まれていませんでしたが、本作と同日にリリースされた同名ライブビデオに収録されました。
I LOVE YOU: 初音源化。ライブ映像は後にテレビ番組やライブビデオで公開されました。
FIRE: 初音源化。このライブ映像も後にテレビ放送され、ライブビデオに収録されています。
Scrambling Rock'n'Roll: 初音源化で、後に大阪球場公演のライブアルバムに収録されました。
卒業: 演奏部分の音源は本作で初めて公開されましたが、演奏前のMCは既に1986年のフィルムコンサートで使われた大阪球場公演のものが流用されています。
Forget-me-not: 初公開音源。ライブ映像は後にテレビ放送やライブビデオで完全版が公開されました。
街路樹: 曲の最後が尾崎のアカペラ歌唱で終わるよう編集されています。ライブ映像は既発のライブビデオに収録されています。
僕が僕であるために: 初公開音源。東京ドーム公演でのアコースティック弾き語りバージョンで、後にテレビ放送やライブビデオ完全版に収録されました。

初回限定盤には、特典としてDisc 2が付属し、「米軍キャンプ」と「シェリー」の初音源化ライブバージョンが収録されました。これらの音源は、現在のところ本作のみで聴くことができます。

商業成績

『MISSING BOY』はオリコンアルバムチャートで最高位13位を記録し、6週にわたってチャートインしました。累計売上枚数は10.3万枚となり、尾崎豊のオリジナルアルバムやライブアルバムを含む全作品の中で、アルバム売上ランキング第15位に位置する商業的な成功を収めました。

アルバム制作には、プロデューサーの須藤晃氏をはじめ、田中邦明氏（ミキシング）、スコット・ハル氏（マスタリング）など、多くのスタッフが関わっています。

このアルバムは、尾崎豊というアーティストが、多様な時代、多様なステージでどのようなメッセージを発し、どのようなパフォーマンスを見せたのかを、貴重な未発表音源を通じて知ることができる、ファンにとって非常に価値の高い作品と言えます。彼の生きた軌跡を、力強いライブサウンドで追体験できる重要なアーカイブの一つです。

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